長文集  10月3週  ★決心したとおり(感)  su2-10-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】決心したとおり、エジソンは、グラ
ンド=トランク鉄道の新聞うりになりました
。それは、新聞のほかに、雑誌・くだもの・
キャンデーなどを、列車内でうるのです。そ
のきょりは、ポートヒューロン――デトロイ
ト間百キロメートル、三時間です。【2】そ
こで、毎朝七時にポートヒューロンを発車し
て、十時にデトロイトにつきます。
 デトロイトにつくと、この汽車は夕がたま
でやすみ、そして、夜の九時半ごろ、ポート
ヒューロンにかえります。それは、エジソン
にとって、ながいひまな時間でした。
 【3】この列車は、三両編成で、手荷物車
と喫煙車と婦人用普通客車からなっていまし
た。手荷物車は、荷物室・郵便室・喫煙室の
三つにくぎってあり、この喫煙室はつかわれ
ていませんでした。エジソンは、このへやを
あてがわれたのです。【4】かれは、そこ 
へ、客にうる品物をもちこみました。
 こんな列車ですから、朝のりこんで、お客
に新聞やたべものをひととおりうると、もう
ひまです。十時から夕がたまでは、デトロイ
トの図書館で勉強します。【5】けれども、
列車内の往復六時間をぼんやりすごすなんて
、そんなことは、エジソンにはできません。
 そこでかんがえついたのが、車内実験です
。じぶんにあてがわれた車室を、化学実験室
にしようというわけです。
 【6】しかし、こんなことは、しゃしょう
にそうだんしたらおしまいです。そっとやら
なければだめです。かんがえついたあくる 
日、じぶんの家の地下室から、薬品や実験用
具をこっそりもちこみました。
 【7】じょうぶなからだをおじいさんから
、事業の才能をおとうさんから、そして、勉
強への熱情をおかあさんからうけついだの 
か、少年エジソンはつかれしらずに、しごと
と勉強をつづけるのでした。
 【8】朝はやくから列車うり子、化学実験
、図書館がよいをするだけでなく、ポートヒ
ューロンに、助手のオーツをつかって、やさ
いとくだものの店をひらきました。デトロイ
トの市場でやすい品物を見∵つけると、すか
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さず仕入れてきて、ポートヒューロンの店で
うるのです。【9】そうして、十二さいの少
年が、一日八ドルから十ドルの収入をあげる
のです。
 そのうちの一ドルを毎日おかあさんへ、そ
してのこりは、本・薬品・実験器具の費用に
しました。実験室は、みるみる道具がそろっ
てきました。
 【0】いったい、いまエジソンがうちこん
でいる化学実験と、かれの商売と、どんなつ
ながりがあるのでしょう。
 なんのつながりもないように見えますが、
じつは、エジソンという人物にとっては、き
りはなすことのできないかんけいがあるので
す。それは、その後のかれの発明をかんがえ
ればすぐわかるでしょう。
 電灯・電車・蓄音機・映画・ラジオ……そ
のほか、どれをとってみても、世の人々にち
ょくせつやくにたつものばかりです。みんな
社会と、ちょくせつむすびついています。そ
ういうものが発明できたのは、エジソンがす
ぐれた事業家の性質をもち、また、商売とい
うものをよく知っていたからです。

(「エジソン」 崎川(さきかわ)範行著 
講談社 火の鳥伝記文庫より)