長文集  11月1週  ○朝六時におきて(感)  su2-11-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/08/06 19:37:50
 【1】朝六時におきて、列車にのりこみ、
夜は十時にかえってきます。そのあいだじゅ
うが、うり子のしごとと、図書館での勉強 
と、化学の実験です。
 このようにしてすごす一日一日は、つらい
ことのようですが、エジソンにとっては、か
けがえのないたのしみだったのです。
 【2】こういうと、エジソンには、少年ら
しいたのしみというものが、まるでなかった
ようですが、たった一つ、エジソンをむちゅ
うにさせたあそびがありました。
 電信あそびです。
 【3】そのころ、つまり、一八六〇年代の
アメリカでは、電信がようやく実用化されて
きていました。このあたらしい器具が、少年
たちをとりこにしたのは、あたりまえのこと
で、それをまねた電信あそびは、大流行でし
た。
 【4】もちろん、エジソンもその一人でし
た。
 かれは、ありあわせのものだけをつかって
、電信機をつくりました。電線の針金にぬの
ぎれをまき、それを鉄のしんにまきつけて電
磁石とし、キーには、しんちゅうのばねをり
ようしました。【5】あきびんを、絶縁用の
碍子にして立ち木にくぎでとめました。電池
は地下化学実験室でおぼえた方法でつくりま
した。
 これらができあがったところで、エジソン
はちかくの友だちの一人とのあいだに電線を
ひきました。
 【6】交信は、うまくいきました。信号で
、おもうことをつたえる、おもしろいあそび
です。だが、エジソンは、夜の十時でなけれ
ば、家へかえれません。
 【7】ところが、おとうさんのサムエルは
、エジソンの健康をしんぱいして、十一時半
よりおそくまでおきていることをゆるしませ
ん。なんとか、これをゆるめる作戦がひつよ
うです。
 【8】ところで、サムエルは、毎晩、エジ
ソンがもってかえる新聞をたのしみにしてい
ました。ある晩、エジソンは、その新聞をも
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たずにかえってきました。
「わすれた? そいつはがっかりだな。」∵
【9】「そうだ、友だちのところに新聞があ
るから、ニュースをきいてあげようか。」
「こんな時間にかい?」
「まあ、見ててごらん。」
 エジソンが電信機にスイッチをいれて、キ
ーをたたくと、それにこたえて、友だちが信
号をおくってきます。【0】エジソンは、そ
の電文を文章になおして、まちかまえている
おとうさんにわたしました。
「なるほど、すばらしいことをやるもんだな
あ。」
 夜おそくまで、ただ、いたずらあそびをし
ている、としかおもわなかったサムエルは、
ほとほとかんしんしてしまいました。もう、
「はやくねなさい。」といえなくなりました

 おかげでエジソンは、夜おそくまで電信を
たのしむことができるようになったのですが
、やがて、このあそびから、かれのあたらし
い道がひらけることになるのです。
 電信手というしごとです。

(「エジソン」 崎川(さきかわ)範行著 
講談社 火の鳥伝記文庫より)