1. 【1】朝六時におきて、
列車にのりこみ、夜は十時にかえってきます。そのあいだじゅうが、うり子のしごとと、
図書館での
勉強と、
化学の
実験です。
2. このようにしてすごす一日一日は、つらいことのようですが、エジソンにとっては、かけがえのないたのしみだったのです。
3. 【2】こういうと、エジソンには、少年らしいたのしみというものが、まるでなかったようですが、たった一つ、エジソンをむちゅうにさせたあそびがありました。
4.
電信あそびです。
5. 【3】そのころ、つまり、一八六〇
年代のアメリカでは、
電信がようやく
実用化されてきていました。このあたらしい
器具が、少年たちをとりこにしたのは、あたりまえのことで、それをまねた
電信あそびは、大
流行でした。
6. 【4】もちろん、エジソンもその一人でした。
7. かれは、ありあわせのものだけをつかって、
電信機をつくりました。電線の
針金にぬのぎれをまき、それを
鉄のしんにまきつけて
電磁石とし、キーには、しんちゅうのばねをりようしました。【5】あきびんを、
絶縁用の
碍子にして立ち木にくぎでとめました。電池は地下
化学実験室でおぼえた
方法でつくりました。
8. これらができあがったところで、エジソンはちかくの友だちの一人とのあいだに電線をひきました。
9. 【6】
交信は、うまくいきました。
信号で、おもうことをつたえる、おもしろいあそびです。だが、エジソンは、夜の十時でなければ、家へかえれません。
10. 【7】ところが、おとうさんのサムエルは、エジソンの
健康をしんぱいして、十一時半よりおそくまでおきていることをゆるしません。なんとか、これをゆるめる
作戦がひつようです。
11. 【8】ところで、サムエルは、
毎晩、エジソンがもってかえる新聞をたのしみにしていました。ある
晩、エジソンは、その新聞をもたずにかえってきました。
12.「わすれた? そいつはがっかりだな。」∵
13.【9】「そうだ、友だちのところに新聞があるから、ニュースをきいてあげようか。」
14.「こんな時間にかい?」
15.「まあ、見ててごらん。」
16. エジソンが
電信機にスイッチをいれて、キーをたたくと、それにこたえて、友だちが
信号をおくってきます。【0】エジソンは、その電文を
文章になおして、まちかまえているおとうさんにわたしました。
17.「なるほど、すばらしいことをやるもんだなあ。」
18. 夜おそくまで、ただ、いたずらあそびをしている、としかおもわなかったサムエルは、ほとほとかんしんしてしまいました。もう、「はやくねなさい。」といえなくなりました。
19. おかげでエジソンは、夜おそくまで
電信をたのしむことができるようになったのですが、やがて、このあそびから、かれのあたらしい道がひらけることになるのです。
20.
電信手というしごとです。
21.(「エジソン」
崎川範行著 講談社 火の鳥
伝記文庫より)