長文集  12月2週  ○そこでエジソンは(感)  su2-12-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/08/06 19:40:46
 【1】そこでエジソンは、とうとうかるい
蓄電池の研究にとりかかることになりました

 さて、研究に手をつけてみると、いままで
だれも手をださなかったわけです。それは、
おそろしくむずかしいしごとでした。【2】
なまりいがいのあらゆる金属をつかい、あら
ゆる薬品をつかって、実験をこころみてみま
したが、どうしてもうまくいかないのです。
 ある日、友人のビーチという人がやってき
ました。【3】この人はのちに、ゼネラル電
気会社の電気鉄道課のしごとをした人です 
が、エジソンの蓄電池の研究のことをたずね
て、
「おもいのほかむずかしい問題らしいね。さ
すがのきみも、よわったろう。」
といいました。【4】すると、エジソンがこ
たえました。
「ビーチくん、わたしは、よい蓄電池のひみ
つをあかしてくれないほど、神さまはふしん
せつじゃないとおもうね。」
「じゃあ、このひみつのかぎは、どうしたら
見つかるというんだ ね。」
【5】「もうれつにかんがえたうえで、もう
れつに実験をやってみることさ。」
 だが、エジソンの研究も、しっぱいのれん
ぞくでした。月日はどんどんと、たっていき
ます。それでもエジソンは、気をおとしませ
ん。
【6】「きょうのしっぱいは、あすはとりか
えせる。あすだめならあさってとりかえす…
…。」
 いつも希望をすてません。朝から晩まで、
硫酸・硝酸・化成ソーダなどのつよい薬品を
いじるエジソンの手は、すっかりあれてしま
いました。
 【7】世界一の天才発明家が、かんがえに
かんがえぬき、たいへんな熱心さで、しかも
、だれもまねのできないほどのしんぼうづよ
さで研究をつづけ、それで一年たっても二年
たっても発明できな い、かるい蓄電池。【
8】そんな研究は、はたの人々の目には、ま
ったく不可能なことととりくんでいるとしか
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見えなかったのもむりはあり∵ません。
 エジソンといつもいっしょに研究をつづけ
ていた一人の所員などは、
「この研究は、エジソンがいままでやりとげ
たぜんぶの研究をいっしょにしたのより、も
っとたいへんだ。【9】しかもエジソンは、
一つの実験にしっぱいすると、『これで成功
に一歩ちかづいた。』というのだ。これほど
の努力には、いかなる自然も、根(こん)ま
けせずにはいられまい。
 【0】わたしは、エジソン蓄電池がうまく
いくかどうか知らないが、いずれにしても、
もうエジソンは、世界的発明家などというよ
りも、世界の偉人だという気がしてきた。」
と、しみじみいったものです。

(「エジソン」 崎川(さきかわ)範行著 
講談社 火の鳥伝記文庫より)