長文集  12月3週  ★エジソンの父の時代には(感)  su2-12-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】エジソンの父の時代にはアメリカ独
立戦争があり、自身は南北戦争のさいちゅう
にそだち、戦争のしげきをうけることもおお
かったエジソンが、兵器の研究をしなかった
ということは、たいへんりっぱな信念をもっ
ていたことをしめすものといえるのです。
 【2】エジソンは、いろいろな発明につよ
いきょうみをもち、また、事業心もなかなか
さかんでしたが、じぶんの発明は、あくまで
「人類のためにある」、という精神をすてな
かったのです。【3】また、その信念があれ
ばこそ、むずかしい研究に、あれだけの努力
もはらえたのでしょう。
 エジソンはほんとうに平和を愛する人でし
た。そうして戦争をきらっていました。
 【4】エジソンは、いろいろなべんりな発
明で、世界の国々がゆたかになれば、戦争な
どはなくなるものだ、というかんがえをもっ
ていました。電灯・蓄音機・映画などといっ
た発明には、そのことがよくあらわれていま
す。
 【5】一九一四年の七月に、ヨーロッパで
第一次世界大戦がはじまりました。
 そのころ、科学や工業の研究では、世界で
ドイツがいちばんすすんでいました。ことに
化学製品は、ほかのどの国より、とくにすぐ
れていました。【6】ドイツの染料・医薬・
ガラス、マグネシウムなどの金属類、そうい
ったものを、アメリカの産業界では、ドイツ
からたくさん輸入していました。
 それが、戦争がはじまると同時に、ぴった
りはいってこなくなったのです。【7】アメ
リカはまだ、ドイツと戦争はしていなかった
のですが、イギリスの海軍がドイツを封鎖し
て、ドイツの商船のうごきをとめてしまった
からです。
 アメリカの工業界は、たいへんこまりまし
た。【8】ことにおりもの業やそめもの業は
、ドイツの染料がはいらなくなっては、どう
∵しようもありません。そこでなんとかして
、アメリカでその原料をつくろうと、大いそ
ぎで研究しはじめたのです。
 【9】しかし、おいそれと、すぐにはとて
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もまにあいません。ことに、エジソンの蓄音
機工場では、レコードの原料につかう石炭酸
が、ぜひ必要なのですが、ほうぼうの薬品会
社に注文してみましても、これから研究して
製造をはじめるのだから、すくなくとも一年
ぐらいたたなければできないというへんじで
す。
 【0】そこでエジソンは、
「よし、それなら、われわれの手でひとつつ
くってみることにしよう。」
というわけで、すぐ、蓄電池のニッケルをつ
くっていたシルバーレークの化学工場をひろ
げて、その研究にとりかかりました。研究所
の人たちは、はりきって、二十四時間三こう
たいで、ぶっつづけのしごとととりくみまし
た。その努力のけっか、それから二十日めに
は、はやくも石炭酸がとれるようになりまし
た。

(「エジソン」 崎川(さきかわ)範行著 
講談社 火の鳥伝記文庫より)