1. 【1】エジソンの父の
時代にはアメリカ
独立戦争があり、
自身は
南北戦争のさいちゅうにそだち、
戦争のしげきをうけることもおおかったエジソンが、
兵器の
研究をしなかったということは、たいへんりっぱな
信念をもっていたことをしめすものといえるのです。
2. 【2】エジソンは、いろいろな
発明につよいきょうみをもち、また、
事業心もなかなかさかんでしたが、じぶんの
発明は、あくまで「
人類のためにある」、という
精神をすてなかったのです。【3】また、その
信念があればこそ、むずかしい
研究に、あれだけの
努力もはらえたのでしょう。
3. エジソンはほんとうに
平和を
愛する人でした。そうして
戦争をきらっていました。
4. 【4】エジソンは、いろいろなべんりな
発明で、
世界の国々がゆたかになれば、
戦争などはなくなるものだ、というかんがえをもっていました。
電灯・
蓄音機・
映画などといった
発明には、そのことがよくあらわれています。
5. 【5】一九一四年の七月に、ヨーロッパで
第一
次世界大戦がはじまりました。
6. そのころ、科学や
工業の
研究では、
世界でドイツがいちばんすすんでいました。ことに
化学製品は、ほかのどの国より、とくにすぐれていました。【6】ドイツの
染料・
医薬・ガラス、マグネシウムなどの
金属類、そういったものを、アメリカの
産業界では、ドイツからたくさん
輸入していました。
7. それが、
戦争がはじまると同時に、ぴったりはいってこなくなったのです。【7】アメリカはまだ、ドイツと
戦争はしていなかったのですが、イギリスの
海軍がドイツを
封鎖して、ドイツの
商船のうごきをとめてしまったからです。
8. アメリカの
工業界は、たいへんこまりました。【8】ことにおりもの
業やそめもの
業は、ドイツの
染料がはいらなくなっては、どう∵しようもありません。そこでなんとかして、アメリカでその
原料をつくろうと、大いそぎで
研究しはじめたのです。
9. 【9】しかし、おいそれと、すぐにはとてもまにあいません。ことに、エジソンの
蓄音機工場では、レコードの
原料につかう
石炭酸が、ぜひ
必要なのですが、ほうぼうの
薬品会社に
注文してみましても、これから
研究して
製造をはじめるのだから、すくなくとも一年ぐらいたたなければできないというへんじです。
10. 【0】そこでエジソンは、
11.「よし、それなら、われわれの手でひとつつくってみることにしよう。」
12.というわけで、すぐ、
蓄電池のニッケルをつくっていたシルバーレークの
化学工場をひろげて、その
研究にとりかかりました。
研究所の人たちは、はりきって、二十四時間三こうたいで、ぶっつづけのしごとととりくみました。その
努力のけっか、それから二十日めには、はやくも
石炭酸がとれるようになりました。
13.(「エジソン」
崎川範行著 講談社 火の鳥
伝記文庫より)