長文集  6月1週  ○蛙の子は蛙(感)  ta-06-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2017/03/14 09:54:36
【長文が二つある場合、音読の練習はどちら
か一つで可。】
【1】「エリ、バドミントンやるぞ。降りて
こい。」
 今週も父の声が響きます。毎週日曜日の朝
、私は父とバドミントン、テニス、キャッチ
ボールなどをします。【2】家の前の広場で
やるのですが、本当は少し恥ずかしい気もし
ます。父は、声が大きいので近所中に聞こえ
るし、隣のおばあちゃんが必ず窓から顔を出
してこう言うのです。
「親子で仲がいいねえ。」
 【3】父とのスポーツは、まるで特訓のよ
うです。父は、テニス漫画に出てくる鬼コー
チのように私をしごきます。だから、冬でも
汗だくになります。
 【4】「エリ、これおいしいぞ。もっと食
べろ。」
夕飯の時は、自分のお皿から私のお皿におか
ずを移します。自分の好物は、私も好きだろ
うと思い込んでいるのです。
 【5】父は出張に行くと、必ずおみやげを
買ってきます。それ は、私から見ると大体
変なものです。その地方の名産やお菓子では
なく、だいぶ前にはやった小物や、学校に持
っていけないような変わった文房具、もう遊
ばない小さい子用のおもちゃなどです。
 【6】父は、会社でとてもむずかしい仕事
をしている経理の専門家なのですが、うちに
いるときは、とてもそんなふうには見えませ
ん。【7】昨日も
「えっ、今夜はキムチ鍋。そりゃ、きむちい
い(気持ちいい)。」
などと受けないダジャレを言って、母にジロ
リとにらまれました。
 【8】テレビのドラマで見るような格好い
い父親とは違うけれ ど、私はそんな父が大
好きです。いろいろ好き勝手にやっているよ
うに見えますが、本当は日曜日の特訓も、体
育が苦手な私のためにやってくれているので
す。∵
 【9】私は、今度の父の日に、秘密のプレ
ゼントを用意しています。それは自然教室の
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陶芸コーナーで作った湯のみです。H・Eと
父のイニシャルを入れ、大きなハートで囲み
ました。父がどんな顔をするかとても楽しみ
です。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 
φ)∵
蛙の子は蛙

 【1】カエルの卵がふ化すると、オタマジ
ャクシになる。オタマジャクシの時は、尾が
あって、カエルの子どもとは思えない。ナマ
ズの子みたいだ。それが大きくなるにつれ、
尾がとれ足がはえて、けっきょくはカエルに
なる。【2】そこから、なにごとも子は親に
似るものだ、というんだ。体のことではなく
て、人間のなかみと か、心が似るという。
あまりいい意味のことわざではなくて、わる
い意味に使われるよ。
 たとえば、「あいつのお父さんはなまけ者
で、ぐうたらしていたが、蛙の子は蛙だ。【
3】あいつもやっぱりぐうたらな人間だ」と
いうように使われる。でもことわざの意味を
とりちがえて、ほめことばとして使う人もい
る。「息子さんは○○大学に入学されたんで
すか。さすがはあなたのお子さんだ。蛙の子
は蛙ですね」これは、けっしてほめたことに
はなっていない。まちがった使い方だ。
 【4】おなじような意味のことわざに、「
瓜のつるには茄子はならぬ」がある。平凡な
親からは、すぐれた子どもはうまれない、と
いう意味だよ。また、「蝮の子は蝮」という
のがある。【5】これは、親が悪人ならその
子はやっぱり悪人だ、ということになる。
 このことわざでは、カエルをすぐれたもの
としてはあつかっていない。けれどむかしの
日本人は、カエルを神様の使いとしてうやま
っていたんだ。【6】群馬県では「ヒキガエ
ルは神様のお使いである」といい、千葉県で
は「オオガマガエルは天神さまのお使いだか
ら、殺してはならない」といったんだ。また
福島県・東京都・福井県・和歌山県などでは
、「アマガエルは神様のお使い」なので、つ
かまえてはいけないとか、殺してはいけない
、とされていた。【7】熊本県玉名郡では、
「アマガエルは仏(ほとけ)様を背負ってい
るので、殺してはいけない」といわれ大切に
されていたんだよ。これは、カエルたちは田
んぼに多くすんでいるから、田の神の使いと
されていたからだ。
 【8】「蛙の面(つら)に水」ということ
わざは、どんなことをされても平気なようす
。また人からきつく忠告されても、知らん顔
して聞こ∵うとしないことをいうんだ。
 【9】「蛙も歌のなかま」というのもある
。カエルはあまりいい声ではないが、さかん
にカエルの歌をうたっている。鳥も虫も、歌
をうたう。そのように、カエルから人間まで
、生きものはみんな歌がすきである、という
意味だ。ほんとにそうだよ。【0】だから、
小さな生きものとも仲よくした方がいいんだ
。ことわざの中にも、こんなすばらしいもの
もあるんだ。

 「常識のことわざ探偵団」(国松俊英著 
フォア文庫)より