長文集  6月3週  ★怪我の功名(感)  ta-06-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
怪我の功名

 【1】「怪我」は傷のことなんだけど、こ
こでは、あやまちとか過失の意味をさすんだ
。「功名」はてがらとかよい結果のこと。つ
まり、失敗をしたのにそれがかえってよい結
果になった、ということ。また、なんの気も
なくやったことが、たまたまよい結果になっ
た、ことでもある。
 【2】――Oさんは、でかけようとして玄
関をでた。バス停の近くまでいったところで
、財布をわすれたことに気づいた。あわてて
家にもどり、財布をもってでてきたが、バス
はいったあとだった。つぎのバスは、十五分
たたないとこない。【3】「だいじな約束な
のに、これじゃ、おくれてしまう」
 Oさんは、わすれ物したことをぼやいてい
た。つぎのバスに乗って、交差点まできた時
だ。パトカーやら救急車がきて、大さわぎだ
った。窓から見たOさんはびっくりした。【
4】乗りおくれたバスがダンプカーと衝突し
ている。けが人もでたようだった。
 「いやあ、よかったあ。もしわすれ物をし
ていなければ、あのバスに乗って。いまごろ
……。」Oさんは、ほーっと大きな息をつい
た。
 【5】こんなできごとを「怪我の功名」と
いうんだ。
 ドライ・クリーニングの方法を世界ではじ
めて見つけたのも、さいしょは失敗からだっ
た。見つけた人は、フランス・パリの仕たて
屋、ジョリー・ベランさんだ。【6】ドライ
・クリーニングとは、水を使わないで、物質
をとかす液体を使ってせんたくする方法だ。
一八四八年のある日、ベランさんはテーブル
のランプをひっくり返してしまった。ランプ
のオイルがテーブルにこぼれ、奥さんがせん
たくしたばかりのテーブルクロスを、ひどく
よごしてしまった。
【7】「まいったなあ。うちのやつが帰って
くるまでに、きれいにしておこう。」
 べランさんは、よごれたテーブルクロスを
手にとった。見ると、オイルがこぼれた方が
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まっ白で、きれいになっている。これはどう
いうことか。【8】べランさんの頭に、ひら
めくものがあった。∵
「きっと、ランプオイルには、布をきれいに
する力があるのだ。」
 それからべランさんは、実験をくり返し、
クリーニングの方法をマスターしたのだ。【
9】そして仕たて屋をやりながら、ドライ・
クリーニングのしごともうけてやるようにな
った。
 テーブルクロスにオイルをこぼしたばかり
に、ベランさんはとっても大きな発見をした
のだ。【0】

 「常識のことわざ探偵団」(国松俊英著 
フォア文庫)より