長文集  6月4週  ○お茶わん一ぱいで  ta-06-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2015/03/15 14:11:22
【長文が二つある場合、読解問題用の長文は
一番目の長文です。】
 カバは、昼間はほとんど、水の中にいます
。水の中で、昼寝をしたり、のんびりしたり
して、じっとしていることが多いのです。
 それで、いつも水の中にいると思われるの
ですが、カバは、太陽がしずむころになると
、水からでて、陸にあがります。そして夜中
に、えさの草を食べ、朝になって太陽がのぼ
ると、また、川の水の中に、はいります。
 カバの皮膚は、ほかの動物よりも、うすく
できているので、昼 間、陸にいると、から
だの中の水分がでていってしまいます。その
ままほうっておくと、からだがかわいてしま
って、死んでしまいますから、なるべく水の
中にいるようにしているのです。
 また、カバは、体重が二千五百キロから四
千キログラムもあるので、水の中のほうが、
からだがかるくなり、らくなのです。
 カバの目や耳、鼻は、顔の上のほうにあり
ます。そのため、水の中にいても、目や、耳
、鼻のあなだけを、水面からだすことができ
ます。
 ですから、水の中にいても鼻で呼吸できま
すし、あやしいものが近づけば、そのけはい
を感じることができます。きけんを感じる 
と、カバは、さっともぐります。
 水の中にもぐるときは、鼻や耳のあなをと
じます。

(久道健三「科学なぜどうして」)∵
 【1】お茶わん一ぱいでお米は何粒ありま
すか? 約三〇〇〇粒(〇・五合)だそうで
す。私が子供のころ、そのなかにときどきす
こし黒い小さな斑点がついた粒が混じってい
ました。気がつくと気持ちが悪いので、はし
でつまみ出したこともありましたが、たいて
いは気にしないで食べていました。【2】親
が「とりのぞかない と、おなかが痛くなる
よ」と注意をしたことはなかったからです。
いつのまにか、そんな黒い斑点粒(りゅう)
はなくなり、真っ白のごはんになりました。
 【3】斑点粒(りゅう)が混じっていると
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、見た目に悪いので、農薬を使って黒い斑点
粒(りゅう)がでないようにしているので 
す。お茶わんに四粒(〇・一%以上)あると
、二等米に格下げになり、値が下がってしま
うのです。農薬を使わざるをえません。
 【4】お米にいたずらして斑点粒(りゅう
)を作るのはカメムシです。ヘクサムシ、ヘ
コキムシとも呼ばれ、触れると悪臭を出して
身を守ろうとする、小さな平べったい五角形
の虫です。
 【5】夏がすぎ稲が穂を出すころ、カメム
シは一部の田に飛んできて穂の乳を吸うので
、被害にあった一部の田んぼの一部の粒が斑
点粒(りゅう)になります。一〇アール(=
一反)の田には約二三〇〇万粒のモミがある
ので、この〇・一%は二万三〇〇〇粒になり
ます。【6】これ以下にするには、計算上カ
メムシを六〇匹(ぴ き)未満にする必要が
あるので農薬がまかれるのです。
 害虫と聞くと、稲を病気にしたり、収穫量
を減らしたりする「悪い虫」と思いがちです
。しかしカメムシはそんなことはしません。
収穫量も減らさず、人間の健康をそこねない
程度のいたずらです。【7】それさえ人間は
許せなくなり、カメムシを害虫の仲間に入れ
てしまったのです。
 いまから三〇年ほど前、都市住民は、カメ
ムシのいたずらをも許せない自分になってい
ることに気づかぬまま、農薬のこわさに気づ
き、「反農薬」を訴え、農薬を使う農業を否
定しました。【8】お∵百姓さんも使いたく
て使っているわけではないので、無農薬で作
ってくれる人が、ごく少数ながらあらわれま
した。すると農薬を使っている多くのお百姓
さんが、こんどは「悪い人」に見えてくるの
です。【9】農薬を使わざるをえない現実は
知っていても、反農薬の世論に押された農業
関係者は、決められたとおりに農薬をまくこ
とを省略する「省農薬」や、濃度をうすくす
ることを意味する「低農薬」にしているので
不安に思わなくてよいと反論しました。【0

(中略)
 悪循環を断ち切るため、福岡県農業改良普
及所に勤務していた宇根豊さんは「虫見板(
むしみばん)」を使い、田のなかにいる虫に
改めて関心を持ってもらう試みを開始しまし
た。株をたたき、虫見板の上に落ちてくる虫
を、害虫、益虫、ただの虫に見分ける能力を
まずつけてもらいます。つぎに害虫が繁殖し
、被害をあたえようとするタイミングを学ん
でもらい、そのときに農薬をまくように指導
していったのです。それまでよりは時間はか
かるけれど、田のなかの自然に関心を持ち、
つきあえる能力を養っていくのは楽しいもの
です。そのうえこわい農薬の使用量が減り、
健康にもよいし、経済的にも助かります。防
除暦にしたがうと一三回まくところが、二〜
四回になった人もいます。これだけの効果が
あると、運動は大きくなり、福岡県から佐賀
県へも広がりました。

(森住明弘『環境とつきあう50話』)