1.【長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。】
2. カバは、昼間はほとんど、水の中にいます。水の中で、
昼寝をしたり、のんびりしたりして、じっとしていることが多いのです。
3. それで、いつも水の中にいると思われるのですが、カバは、太陽がしずむころになると、水からでて、
陸にあがります。そして夜中に、えさの草を食べ、朝になって太陽がのぼると、また、川の水の中に、はいります。
4. カバの
皮膚は、ほかの動物よりも、うすくできているので、昼間、
陸にいると、からだの中の水分がでていってしまいます。そのままほうっておくと、からだがかわいてしまって、死んでしまいますから、なるべく水の中にいるようにしているのです。
5. また、カバは、体重が二千五百キロから四千キログラムもあるので、水の中のほうが、からだがかるくなり、らくなのです。
6. カバの目や耳、鼻は、顔の上のほうにあります。そのため、水の中にいても、目や、耳、鼻のあなだけを、水面からだすことができます。
7. ですから、水の中にいても鼻で
呼吸できますし、あやしいものが近づけば、そのけはいを感じることができます。きけんを感じると、カバは、さっともぐります。
8. 水の中にもぐるときは、鼻や耳のあなをとじます。
9.(
久道健三「科学なぜどうして」)∵
10. 【1】お茶わん一ぱいでお米は何
粒ありますか?
約三〇〇〇
粒(〇・五合)だそうです。
私が
子供のころ、そのなかにときどきすこし黒い小さな
斑点がついた
粒が
混じっていました。気がつくと気持ちが悪いので、はしでつまみ出したこともありましたが、たいていは気にしないで食べていました。【2】親が「とりのぞかないと、おなかが
痛くなるよ」と注意をしたことはなかったからです。いつのまにか、そんな黒い
斑点粒はなくなり、真っ白のごはんになりました。
11. 【3】
斑点粒が
混じっていると、見た目に悪いので、農薬を使って黒い
斑点粒がでないようにしているのです。お茶わんに四
粒(〇・一%
以上)あると、二等米に
格下げになり、
値が下がってしまうのです。農薬を使わざるをえません。
12. 【4】お米にいたずらして
斑点粒を作るのはカメムシです。ヘクサムシ、ヘコキムシとも
呼ばれ、
触れると
悪臭を出して身を守ろうとする、小さな平べったい五角形の虫です。
13. 【5】夏がすぎ
稲が
穂を出すころ、カメムシは一部の田に
飛んできて
穂の
乳を
吸うので、
被害にあった一部の田んぼの一部の
粒が
斑点粒になります。一〇アール(=一反)の田には
約二三〇〇万
粒のモミがあるので、この〇・一%は二万三〇〇〇
粒になります。【6】これ
以下にするには、計算上カメムシを六〇
匹未満にする
必要があるので農薬がまかれるのです。
14.
害虫と聞くと、
稲を病気にしたり、
収穫量を
減らしたりする「悪い虫」と思いがちです。しかしカメムシはそんなことはしません。
収穫量も
減らさず、人間の
健康をそこねない
程度のいたずらです。【7】それさえ人間は
許せなくなり、カメムシを
害虫の
仲間に入れてしまったのです。
15. いまから三〇年ほど前、都市
住民は、カメムシのいたずらをも
許せない自分になっていることに気づかぬまま、農薬のこわさに気づき、「反農薬」を
訴え、農薬を使う農業を
否定しました。【8】お∵
百姓さんも使いたくて使っているわけではないので、
無農薬で作ってくれる人が、ごく少数ながらあらわれました。すると農薬を使っている多くのお
百姓さんが、こんどは「悪い人」に見えてくるのです。【9】農薬を使わざるをえない
現実は知っていても、反農薬の
世論に
押された農業
関係者は、決められたとおりに農薬をまくことを
省略する「
省農薬」や、
濃度をうすくすることを意味する「
低農薬」にしているので
不安に思わなくてよいと
反論しました。【0】
16.(
中略)
17.
悪循環を
断ち切るため、
福岡県農業
改良普及所に
勤務していた
宇根豊さんは「「
虫見板」を使い、田のなかにいる虫に
改めて関心を持ってもらう
試みを開始しました。
株をたたき、虫見板の上に落ちてくる虫を、
害虫、
益虫、ただの虫に見分ける
能力をまずつけてもらいます。つぎに
害虫が
繁殖し、
被害をあたえようとするタイミングを学んでもらい、そのときに農薬をまくように
指導していったのです。それまでよりは時間はかかるけれど、田のなかの
自然に
関心を持ち、つきあえる
能力を
養っていくのは楽しいものです。そのうえこわい農薬の使用
量が
減り、
健康にもよいし、
経済的にも助かります。
防除暦にしたがうと一三回まくところが、二〜四回になった人もいます。これだけの
効果があると、運動は大きくなり、
福岡県から
佐賀県へも広がりました。
18.(森住
明弘『
環境とつきあう50話』)