長文 6.4週
1.【長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。】
2. カバは、昼間はほとんど、水の中にいます。水の中で、昼寝ひるねをしたり、のんびりしたりして、じっとしていることが多いのです。
3. それで、いつも水の中にいると思われるのですが、カバは、太陽がしずむころになると、水からでて、りくにあがります。そして夜中に、えさの草を食べ、朝になって太陽がのぼると、また、川の水の中に、はいります。
4. カバの皮膚ひふは、ほかの動物よりも、うすくできているので、昼間、りくにいると、からだの中の水分がでていってしまいます。そのままほうっておくと、からだがかわいてしまって、死んでしまいますから、なるべく水の中にいるようにしているのです。
5. また、カバは、体重が二千五百キロから四千キログラムもあるので、水の中のほうが、からだがかるくなり、らくなのです。
6. カバの目や耳、鼻は、顔の上のほうにあります。そのため、水の中にいても、目や、耳、鼻のあなだけを、水面からだすことができます。
7. ですから、水の中にいても鼻で呼吸こきゅうできますし、あやしいものが近づけば、そのけはいを感じることができます。きけんを感じると、カバは、さっともぐります。
8. 水の中にもぐるときは、鼻や耳のあなをとじます。

9.(久道ひさみち健三けんぞう「科学なぜどうして」)∵
10. 【1】お茶わん一ぱいでお米は何つぶありますか? やく三〇〇〇つぶ(〇・五合)だそうです。わたし子供こどものころ、そのなかにときどきすこし黒い小さな斑点はんてんがついたつぶ混じっま  ていました。気がつくと気持ちが悪いので、はしでつまみ出したこともありましたが、たいていは気にしないで食べていました。【2】親が「とりのぞかないと、おなかが痛くいた なるよ」と注意をしたことはなかったからです。いつのまにか、そんな黒い斑点はんてんりゅうはなくなり、真っ白のごはんになりました。
11. 【3】斑点はんてんりゅう混じっま  ていると、見た目に悪いので、農薬を使って黒い斑点はんてんりゅうがでないようにしているのです。お茶わんに四つぶ(〇・一%以上いじょう)あると、二等米に格下げかくさ になり、が下がってしまうのです。農薬を使わざるをえません。
12. 【4】お米にいたずらして斑点はんてんりゅうを作るのはカメムシです。ヘクサムシ、ヘコキムシとも呼ばよ れ、触れるふ  悪臭あくしゅうを出して身を守ろうとする、小さな平べったい五角形の虫です。
13. 【5】夏がすぎいねを出すころ、カメムシは一部の田に飛んと できてちち吸うす ので、被害ひがいにあった一部の田んぼの一部のつぶ斑点はんてんりゅうになります。一〇アール(=一反)の田にはやく二三〇〇万つぶのモミがあるので、この〇・一%は二万三〇〇〇つぶになります。【6】これ以下いかにするには、計算上カメムシを六〇ぴき未満みまんにする必要ひつようがあるので農薬がまかれるのです。
14. 害虫がいちゅうと聞くと、いねを病気にしたり、収穫しゅうかくりょう減らしへ  たりする「悪い虫」と思いがちです。しかしカメムシはそんなことはしません。収穫しゅうかくりょう減らさへ  ず、人間の健康けんこうをそこねない程度ていどのいたずらです。【7】それさえ人間は許せゆる なくなり、カメムシを害虫がいちゅう仲間なかまに入れてしまったのです。
15. いまから三〇年ほど前、都市住民じゅうみんは、カメムシのいたずらをも許せゆる ない自分になっていることに気づかぬまま、農薬のこわさに気づき、「反農薬」を訴えうった 、農薬を使う農業を否定ひていしました。【8】お∵百姓ひゃくしょうさんも使いたくて使っているわけではないので、農薬で作ってくれる人が、ごく少数ながらあらわれました。すると農薬を使っている多くのお百姓ひゃくしょうさんが、こんどは「悪い人」に見えてくるのです。【9】農薬を使わざるをえない現実げんじつは知っていても、反農薬の世論せろん押さお れた農業関係かんけい者は、決められたとおりに農薬をまくことを省略しょうりゃくする「しょう農薬」や、濃度のうどをうすくすることを意味する「てい農薬」にしているので不安ふあんに思わなくてよいと反論はんろんしました。【0】
16.(中略ちゅうりゃく
17. 悪循環あくじゅんかん断ち切るた き ため、福岡ふくおか県農業改良かいりょう普及ふきゅう所に勤務きんむしていた宇根うねゆたかさんは「「虫見板むしみばん」を使い、田のなかにいる虫に改めてあらた  関心かんしんを持ってもらう試みこころ を開始しました。かぶをたたき、虫見板の上に落ちてくる虫を、害虫がいちゅう益虫えきちゅう、ただの虫に見分ける能力のうりょくをまずつけてもらいます。つぎに害虫がいちゅう繁殖はんしょくし、被害ひがいをあたえようとするタイミングを学んでもらい、そのときに農薬をまくように指導しどうしていったのです。それまでよりは時間はかかるけれど、田のなかの自然しぜん関心かんしんを持ち、つきあえる能力のうりょく養っやしな ていくのは楽しいものです。そのうえこわい農薬の使用りょう減りへ 健康けんこうにもよいし、経済けいざいてきにも助かります。防除ぼうじょれきにしたがうと一三回まくところが、二〜四回になった人もいます。これだけの効果こうかがあると、運動は大きくなり、福岡ふくおか県から佐賀さが県へも広がりました。

18.(森住明弘あきひろ環境かんきょうとつきあう50話』)