長文集  6月2週  ○川の道(感)  ta2-06-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2011/01/31 18:28:17
 川の道
 【1】大むかしから山にすむ人たちは、山
おくにわけ入って山の木を切りだし、川の水
で下流へ送りました。小さな荷物ならば、ま
がりくねった山道でも、人がかついだり、ウ
シやウマをのせてはこぶこともできました。
【2】けれども重くて長い木材ばかりは、ど
うしても川の水にたよらねばなりませんでし
た。木を一本一本谷におとし、谷川を流しま
す。それをとちゅうのゆるやかなところにあ
つめて、いかだに組みなおし、いかだ流しで
下流に送るのです。
 【3】山の木を切りたおすのも、谷におと
すのも、いかだ流しをするのも、おおぜいで
おこなういのちがけのしごとでした。山村の
人たちには、そんなくらしがあったのです。
 「木曽のなかのりさあん」といううたがあ
りますね。【4】木曽川はむかしから、木曽
ヒノキでにぎわった川でした。
 「なかのりさん」とは、いかだ流しをする
おじさんたちのことです。「木曽のなかのり
さあん」といううたは、きけんないかだ流し
をするおじさんたちが、いせいよくうたう、
しごとのうたです。
 【5】では川の水は下流では、どんなふう
に使われたでしょう か。日本の川はあばれ
川です。大雨のたび、水はあふれて、平野を
水びたしにさせました。そしてすこし日照り
がつづけば、水はたちまちかれて水不足にな
りました。【6】大雨のたび、水は山から土
砂をはこんできて、川をあさくさせました。
川があさくなれば、つぎの雨では、水はあふ
れて流れをかえました。
 川があさかったり、水が少なかったり、流
れがあっちへいったりこっちへいったりして
うごきまわっているのでは、いかだ流しはで
きません。【7】船もとおれません。人間も
すめません。お米もつくれません。日本の平
野は、むかしはそんな不毛の土地だったので
す。
 むかしから日本人は、そのあばれ川をなだ
めすかして、川をきちんとしたものに、つく
りかえていきました。【8】ゆたかな水が、
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
いつもおなじ場所をゆるやかに流れるよう、
水の交通整理をしていったのです。
 あばれ川をおさめることを治水といいます
。さて水をおさめる と、人々はその川から
水をひいて、水田をひらいていきました。【
9】これが農業用水です。用水には船もうか
べられました。人々は川の水でイネをそだて
、そして、とれたお米を川の水で町へとはこ
んでいったのです。
 お米をはこんでいった船は、町からはなに
をつんで帰ってきたで∵しょうか。【0】町
で売られている着物や茶わんもありました。
おけや草かりがまやほうちょうもありました
。毎日使う紙もありました。なによりもたい
せつな肥料がありました。町の人たちのだす
トイレのごみは、むかしはごみではなく、農
地のかけがえのない養分になったのです。
 
 「道は生きている」(富山和子)講談社青
い鳥文庫より