長文集  1月2週  ○カブトムシやクワガタの生活する(感)  te-01-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/09/28 15:51:51
 【1】カブトムシやクワガタの生活する雑
木林では、ミヤマカミキリ、ノコギリカミキ
リなどの大型の種(しゅ)から、サビカミキ
リの仲間の小さな種(しゅ)まで、さまざま
なカミキリムシが生活しています。【2】細
い枯れ枝の一部に小さな孔があいていたり、
木のかじりくずがもりあがってでていれば、
たいていは、カミキリムシがいるか、でたあ
とと見てよいでしょう。
 このような枯れ木は、樹皮があっても中は
完全に食いあらされ、かんたんに折れてしま
います。【3】カミキリムシの幼虫は、樹の
皮の部分だけのこして、中を食べてトンネル
状にしてしまいます。その一部に白いイモム
シが入っているので、ちょうど、鉄砲の中に
弾をこめたように見えるので、鉄砲虫ともよ
ばれます。
 【4】このような食べ方をしますから、ヒ
トがだいじに育てている樹木についたとなる
と、やはり害虫にされてしまいます。たとえ
ば、シロスジカミキリの幼虫はイチジクの樹
をよく食べます。子どもがイチジクの実をと
りに樹に登ると、枝の中が、がらんどうで折
れてしまうことがあり、やはり嫌われる資格
は、じゅうぶんにあります。
 【5】キボシカミキリ、クワカミキリ、ト
ラフカミキリなどは、クワにつくので養蚕家
は嫌います。クロカミキリ、マツノマダラカ
ミキリはマツにつきますから、一時、マツの
立ち枯れの原因として大さわぎされました。
【6】このような状態は、森林の害虫とよば
れてもしかたのない面もありますが、そうで
はない見方もできま す。
 前に枯れ木に多いといいました。枯れた木
が、そのまま林の中にごろごろしていると、
後から新しい木の芽がでるのをじゃまするこ
とになります。【7】枯れ木はなるべく早く
分解して、新しい木を生やしたほうが、森林
にとってはぐあいのよいことです。枯れ木を
食べる昆虫は、この枯れ木や倒木の分解を早
める働きをします。ようするに森林の中のそ
うじ屋になるのです。
 【8】この点では、けっしてわるい虫では
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ありません。林の樹木の∵若返り、つまり森
林の若さを保つ働きをしています。同時に、
この幼虫たち、あるいは成虫も、トリや小さ
なケモノの食べ物にもなりますから、森林の
自然の一部としてのぞくことはできません。
 【9】マツの害虫と考えられているマツノ
マダラカミキリについても、おもしろいこと
がわかっています。たしかに、このカミキリ
ムシの幼虫はマツの材部を食べあらします。
この点は害虫とよばれてもしかたのないこと
です。【0】ところが、生きている樹木につ
いた幼虫は、中心の材部を食べても、樹皮と
材部のあいだにある、水や養分の通る管のあ
るところは、あまり食べないものです。
 というのは、ここを早く食べてしまうと、
樹が弱るのも早くなって、自分の食べ物をだ
めにしてしまう危険性があるからです。よう
するに、なるべく樹自体は長生きさせながら
、あまり植物の成長に関係しない場所を食べ
ているのです。ですから、マツの中でカミキ
リが少しばかり食べても、それほど急に、樹
がだめになることはありません。

 (「いい虫わるい虫」奥井一満() 日本
少年文庫より)