1. 【1】ぼくは、学校では体も大きいほうだし、声も大きいからちょっといばっています。ドラえもんに出てくるジャイアンみたいだと悪口を言う子もいるくらいです。今はもう、四年生だから、
最近はあまりしないけれど、
低学年のころはしょっちゅうケンカをして、
友達を
泣かせていました。【2】それに大きい兄さんがニ人もいるので、みんなよりいろいろな遊びや
情報も知っていて、そういう点でもクラスの中ではちょっとリーダー
的な
存在かもしれません。
2. しかし、うちでは「
末っ子の
甘えん坊」と言われています。【3】兄さんニ人は年が近いのですが、ぼくは下の兄さんより八
歳も下なのです。だから、もう十
歳を
過ぎたのにときどき赤ちゃん
扱いされます。
特に、お母さんは、
3.「ひろちゃんはまだ小さいから。」
4.と、口ぐせのように言います。【4】もうとっくに
背はお母さんを
追い越しているのにです。
5. 先月の終わりごろ、真ん中の兄さんが、
6.「ひろさあ、母さん病院だし、今年は
節分やらなくてもいいよな。」
7.と、ぼそっと言いました。【5】お母さんは、
年末に具合が悪くなって、
緊急手術をし、今も入院しています。お医者さんから、病気の名前やどんな病気かを聞いたけれど、むずかしくてよくわかりませんでした。それより、病気になった理由が「
働きすぎ」だったのではないかと気になっています。【6】もともとあまり体がじょうぶではなかったのに、三人も男の子を生んで育てているので、とても
大変だったのだと思います。いつも、お母さん、もっと休めばいいのになあと思っていたのに、あまり休めないから、
無理がいったのだと思います。
8. 【7】ぼくは心の中で、
節分をやらないと幸せな一年が
過ごせないかもしれないと思い、少し心配になりましたが、
9.「うん、そうだね。おれは学校でも豆まきあるからいいし。」
10.と、強がって言いました。すると兄さんは、うなずいてバイクででかけてしまいました。∵
11. 【8】それなのに三日の夜になって、
突然バタバタと兄さんたちが帰ってきて、ぼくにマスに入った豆をもたせると、
12.「さあ、ひろ、かかってこい。」
13.と言うのです。マジックで
雑に
描いた
鬼のおめんをつけています。【9】ぼくは、大きな声で、
14.「
鬼は、外、福は、うち。」
15.と、兄さん
鬼に豆をぶつけました。
鬼は外、お母さん帰ってきて。心の中でそう
叫ぶと、
涙がぽろりとこぼれそうになり、ぼくはあわてて目をこすりました。【0】
16.(言葉の森
長文作成委員会 φ)