1. 【1】バッタの
害で有名なのは、日本より外国です。イナゴより一まわり大きいトビバッタの
仲間、日本ではダイミョウバッタとよんでいる
大型のバッタが、時々大発生をします。
2. アフリカ、インド、アメリカ、中国など、
大陸で起きます。【2】『
聖書』の中にも、東風がバッタの
大群を運んできて、
豊かな土地の植物を食べあらしていくことが書かれています。この
大群は、日本では
想像のできないような大きなものです。
3. 【3】たとえば、東アフリカで発生した
群は、先頭の
群のはばが一・六キロ、
厚さが三〇メートルになり、時速一〇キロのスピードで、
群が
通り過ぎるのに九時間かかった、というような
記録があります。【4】また、南アルジェリアで発生した
群が、三〇〇〇キロ
以上、風に乗って
移動し、イギリスまで
到着したという
記録もあります。
4. たいへんな数字で、もしこんなことが日本で起きたら、日本の農作物は、数日のうちに
全滅してしまうでしょう。
5. 【5】どうしてこんなことが起きるのか、だんだんわかってきました。このような大発生と大
移動をするバッタは、ダイミョウバッタの
仲間の、サバクバッタや、ロッキートビバッタなど、七
種ほどのバッタですが、いずれも、一つの
種が、
移動したり、しなかったりをくり返しているのです。
6. 【6】
移動しない時のバッタを
単独相のバッタとよび、
性質はおとなしく、体は緑色が多くて、一
匹一
匹草を食べて生活しています。ところが
移動するバッタは、
群集相のバッタとよばれ、
性質があらく、なんにでもかみつくようになり、
群がって生活し、体は黒っぽい色になって
翅が長くなります。
7. 【7】どうして一つの
種で、こんなちがいがでてくるかというと、まず第一は、ある
地域で、よい
条件の下で生活しているバッタから出発すると考えられています。∵
8.
条件がよいというのは、
気候がよく、食べ物が
豊富にあることを意味します。【8】こんな土地では、生まれた
個体がよく育ち、
成長のとちゅうで死ぬ数が少ないので、だんだんと数がふえることになります。
9. 数がふえれば、その
地域にいるバッタが、
仲間と出会う
率が高くなり、とうぜん、オスとメスの出会う
率も高く、たくさん、
卵を
産むことになります。【9】そのうえ、おたがいが
接触することが
刺激になって、体の中でのホルモンの
働きが活発になり、
卵の発育が早く、
単独相のバッタより短い期間で、
産卵をはじめるようになります。
10.
気候がよいから、つぎつぎに
若いバッタが生まれ、数はどんどんふえることになります。【0】数がふえればだんだん食べ物が少なくなります。すると、
我先にと草を食べるようになり、
競争が
激しくなります。
性質があらくなるのは、
競争に負けないようにするためでしょう。
11. (「いい虫わるい虫」
奥井一満 日本少年文庫より)