長文 7.1週
1.【1】「ほら、えさがなくなりかけているぞ」
2. 父の声が響きひび ます。ぼくは、おととしから、フェレットを飼っか ています。フェレットというのは、イタチの仲間なかまで、長い体をしています。ぼくのうちのは、タヌキのような顔をして、茶色とグレーの間のような毛の色です。【2】セーブルという種類しゅるいで、最ももっと 多く飼わか れているそうです。どうして飼いか 始めたかというと、前に、動物病院の近くで、だれかがジャンパーの中に入れて歩いているのを見て、ほしくてたまらなくなったからです。お年玉やお小遣いこづか を使わずに貯めた 、半分は父がお金を出してくれました。【3】父は、農家で育ったので、子どものころから動物に囲まかこ れていたそうで、ぼくが生き物を飼うか のは大賛成さんせいなのです。
3. 最近さいきん、サッカーの朝練で世話をさぼりがちなぼくに、父は言います。
4.【4】「お父さんは学校に上がる前から、ヤギの世話を任さまか れていたんだ。きちんと毎日、ちち搾りしぼ をしないとヤギの具合が悪くなる。絶対ぜったいに休めない仕事だったんだよ。牛小屋の掃除そうじ大変たいへんだった。夏なんかむんむんしてなあ。【5】ほかの友達ともだち誘いさそ に来ても、仕事が終わっていないと学校にも行けなかったんだよ。でも、飼わか れている動物は、人間が世話をしてやらないと生きていけないのだから、しんどくてもがんばったよ。」
5. 【6】ぼくより小さいころから、たくさんの仕事をしていた父はすごいなあと思いました。もしぼくだったら、寒い朝は起きられなかったかもしれません。父は、動物が好きす だからこそ毎日がんばったのだろうなあと思いました。
6.【7】「お父さん、いやになったことないの?」
7. 父は笑いわら ながら、
8.「まあ、いやになることもあったけど、動物は慣れな てくるとかわいいもんだからなあ」
9.と、フェレットのえさを継ぎ足しつ た ながら言いました。【8】そして、∵
10.「お前は自分が飼いか たいと言って飼いか 始めたんだから、どんなことがあっても、世話をさぼっちゃだめだな。」
11.と、ぼくの方を見ました。ぼくは、ちょっと反省はんせいしました。朝はきついから、今日から、夜寝るね 前に必ずかなら 世話をしようと心の中で誓いちか ました。
12. 【9】父は、フェレットに指を舐めな させながら、
13.「お父さんの田舎いなかでは、こういうのを『めんこいなあ』と言うんだ。このイタチはどういう生い立ちなんだろな、なあんて。」
14.と、目を細めました。
15. ぼくは、もっともっと父の子どものころの話を聞きたくなりました。

16.(言葉の森長文作成さくせい委員会 φ)