長文集  8月2週  ○むかし、からからにかわいた砂漠で、  ti-08-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/06/09 09:44:25
 むかし、からからにかわいた砂漠で、ある
男が、十頭のラクダを水飲み場につれていこ
うとしていました。
 しばらくあるいたところで、男は一頭のラ
クダの背にのり、あとなん頭いるか、かぞえ
てみました。ラクダは九頭しかいませんでし
た。男はあわててラクダの背からおりると、
いなくなった一頭をさがしに、いまきた道を
てくてくあるいてもどりました。
 けれども、どこにも姿が見えません。きっ
といなくなってしまったんだ。男は、そう思
ってさがすのをやめ、大急ぎでラクダたちの
ところへもどりました。
 がっかりして、もどってきてみると、これ
は、またどうしたことでしょう。ラクダはち
ゃんと十頭いるではありませんか。大よろこ
びで、男は、そのうちの一頭の背なかにのり
ました。
 ところが、しばらくすると、もういちど、
数をかぞえてみたくなりました。九頭しかい
ない!男は、とほうにくれて、ラクダの背か
らおりると、またいなくなった一頭をさがし
にいきました。どこにもいません。
 男は、群れのところにとんでかえって、数
をかぞえてみました。すると、おどろいたこ
とに、十頭ぜんぶそこにいて、ぶらぶらあた
りをあるきまわっています。
 男は、これは砂漠の暑さのせいだと、もん
くをいいながら、こんどは、いちばんうしろ
のラクダにのりました。そして、三度めの正
直とばかりに、もういちど、のこりのラクダ
をかぞえました。さっぱりわけがわからない
。また一頭たりなくなっている! 男は、悪
魔をののしりながら、ラクダからとびおりま
した。そして、のろのろと群れのあいだをあ
るきながら、一頭ずつかぞえていきました。
ちゃあんと十頭います。
「わかったよ、わかったよ、この根性まがり
の悪魔め。」
と、男は吐きすてるようにいいました。
「のって一頭をなくすくらいなら、十頭つれ
てあるくほうがまし さ!」

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(ユネスコ文化センター編「アジアの笑いば
なし」)

 国家試験を目前にひかえた三人の受験生が
、結果をうらなってもらいに、ある占師のと
ころへいきました。
 すると、占師は、なにもいわず、ただだま
って指を一本立ててみせました。
 結果が発表されてみると、三人のうちひと
りだけが合格してお り、おかげで、この占
師の評判はぐんとあがりました。
 占師のわかい弟子は、どうしてそれがわか
ったのか知りたがりました。
「成功の秘訣は、ものをいわぬことじゃ。」
と、占師はいいました。そして、それをきい
た弟子がぽかんとしているのを見て、こうつ
けくわえました。
「いいかね、おまえは、わしが指を一本だし
たのを見ておったろ う。それは、三人のう
ちひとりだけが合格するという意味にも取れ
る。事実、そうなった。だが、もし、ふたり
合格しておったとしても、わしの見立ては、
やっぱりただしい。指一本は、ひとりおちる
という意味にとれるからな。三人ともとおっ
ていたとしても、指一本は、三人そろってい
ちどに合格という意味にとれる。その反対も
おなじこと。どんなばあいも、わしはただし
いんじゃ。」

(ユネスコ文化センター編「アジアの笑いば
なし」)