長文集  8月3週  ★日本の国の歴史は(感)  ti2-08-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】日本の国の歴史は、そのまま日本民
族の発展の歴史だと言うことができます。そ
のことは、わたしたち日本人にとって、大き
な力となっているのですが、一方ではひろく
世界の国々の人たちと交わっていくためには
、かえってそれが損になっていると思われる
点もあるようです。
 【2】いったい日本人は、大むかしから日
本民族だけでこの島国に暮らしてきたために
、とかく日本のことだけを、おおげさに考え
すぎるくせがあります。【3】「日本はりっ
ぱな国だ」とか、「日本人はすぐれた民族だ
」とか、「日本の文化はすばらしい」とか、
日本人どうしでおたがいに自分の国をほめ合
い、それで満足しています。もちろんお国自
慢ということは、どこの国の国民だってあり
ます。【4】祖国のわる口を言われるのは、
だれだっていやなものです。しかし、外国の
ことやほかの民族のことはあまり知らない 
で、自分の国だけが特別すぐれていると思う
のは、あまり感心できないことです。【5】
「ぼくはそうは思わないな。日本のものなん
か、みんなだめだ。外国のほうが、すべての
面でずっとすぐれていると思う」あなたはそ
う言って反対するかもしれません。たしかに
そう考えている日本人だって少なくありませ
ん。【6】しかし、そのような見方は、せま
苦しいお国自慢を、ちょうど裏返しにしたも
のにすぎないのです。ただ+と−の両方の極
端の違いで、どちらもかたよった見方です。
もっと高い立場に立ってみれば、どの国だっ
て同じことなのです。【7】そのなりたちも
違えば、国のしくみも違うし、その国民の考
え方だって違っているのですから、その国々
でそれぞれすぐれた明るい面もあれば、同時
に、その国として困っている面、暗い面だっ
てあるのです。【8】日本人のものさしでそ
れをくらべてみようとするのが、だいいちむ
りなのです。見方がかたよってしまうからで
す。ですから、外国のことをよく勉強して深
く知ることは必要ですが、すぐれているとか
劣っているとか、ひどく気にすることはまっ
たくむだなことだと言えるでしょう。
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 【9】ところで、同じ学校にかよっている
友だちとはよく話が合うも∵のです。先生の
かげ口、仲間のうわさ、教室での出来事、休
み時間の楽しい遊び、クラブ活動、修学旅行
、運動会──共通した話題はいくらでもあり
ます。【0】ところが、あなたもきっと経験
があると思いますが、たとえばほかの学校へ
行っているいとこが遊びに来たとき、あなた
の学校の中で起こった、とてもゆかいな出来
事を話して聞かせようとすると、なかなかむ
ずかしいことに気がつきます。毎日顔を合わ
せている級友ならば、簡単に「タヌキがね」
といえばすむところを、「ぼくの学校にタヌ
キというあだ名の教師がいて、国語の担任な
んだ。どうしてタヌキってあだ名がついたか
っていうとね……」などと、いちいちくわし
く説明しなくては、相手に話が通じない。そ
の説明に骨が折れて、かんじんのゆかいな話
のほうは、すっかり気が抜けてしまう。そん
な経験をしたことがあるでしょう。
 同じ民族だけで作られているこの日本の国
にも、それに似たようなことがあるのです。

「日本人のこころ」(岡田章雄著 筑摩書房
)より