長文集  11月2週  二種類の生き物が  tu-11-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/04 17:02:43
 二種類の生き物が一緒に暮らすことを共生
といいます。その一例がイソギンチャクとク
マノミです。普通、魚がイソギンチャクの触
手に触れると、毒針(どくばり)によって麻
痺させられてしまいます。しかし、クマノミ
の体の表面には特殊な粘液が分泌されてい 
て、イソギンチャクの毒には反応しません。
クマノミが出す粘液の成分はイソギンチャク
の粘液の成分と似ているため、イソギンチャ
クはクマノミをえさと見なしません。このた
め、クマノミはイソギンチャクの周りをすみ
かにして、恐ろしい敵から身を守ることがで
きるのです。
 クマノミの体は、どの種類も赤、オレンジ
、黄色、黒、白などが組み合わさった鮮やか
な色をしています。歌舞伎役者の隈取りした
化粧に似ているのでクマノミという名前がつ
いたそうです。
 では、イソギンチャクにとって、クマノミ
が周囲にいることにどんな利点があるのでし
ょうか。クマノミは、イソギンチャクの周り
に縄張りを持っており、イソギンチャクの触
手などを食いちぎって食べる魚など、イソギ
ンチャクの敵を追い払います。また、イソギ
ンチャクの触手の間にえさを置いておくので
すが、その一部はイソギンチャクのえさにも
なるようです。つまり、クマノミとイソギン
チャクは、お互いに身を守ってもらったり、
えさの一部を分けてもらったりして、ギブア
ンドテイクの関係を保っているのです。
 イソギンチャクカクレエビも、その名のと
おり、イソギンチャクと一緒に暮らす仲間で
す。また、ヤドカリやカニの中には、自分の
はさみや貝殻にイソギンチャクをつけて、身
を守るものもいます。お互いにえさのやりと
りもしているようです。
 ハゼとエビも共生しています。ハゼは、エ
ビが苦労して掘った巣穴に同居します。視力
のよくないエビにとって、自分の代わりに見
張りをしてくれるハゼは歓迎すべき同居人で
す。また、エビが外出するときも、ハゼは忠
実なボディガードの役割を果たします。∵巣
穴の外にいるとき、エビは自分の触覚をハゼ
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の体に常にぴたりとくっつけています。敵が
近づいてくると、ハゼは、尾びれをふるわせ
てエビに合図をします。エビは、危険を察知
してすぐに巣穴に入ります。もちろん、ハゼ
も一緒に巣穴に戻ります。ハゼとエビは、同
じ巣穴の中で、ハーハー、ゼーゼーと息を切
らしながら、「危なかったね。」と話をして
いるのかもしれません。
 ホンソメワケベラとクエは掃除共生する組
み合わせとして知られています。クエは、本
来、小魚をえさとしています。ホンソメワケ
ベラは、クエに近寄ったら一口で食べられて
しまいそうな小さな魚です。しかし、不思議
なことに、ホンソメワケベラが近くに来るど
ころか、クエの口の中に入っても、クエは決
してホンソメワケベラを食べようとはしませ
ん。これは、ホンソメワケベラがクエの寄生
虫を掃除してあげているからです。クエは、
口やえらなどにについた寄生虫をきれいさっ
ぱりホンソメワケベラに取ってもらって上機
嫌というわけです。クエがホンソメワケベラ
を食えないわけはここにあるのです。ホンソ
メワケベラにとって、寄生虫はえさにもなる
し、大きな魚と一緒にいることで敵から身を
守ることもできて一石二鳥です。 
 共生関係にある生き物たちは、違う種類で
あるにも関わらず、調和を保って、平和な関
係を維持しているのです。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
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