長文集  11月1週  ○デンショバトは(感)  tu2-11-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2011/09/13 14:16:47
 【1】デンショバトは、巣から二千キロメ
ートルほども離れた場所で放されても、まち
がいなくもどって来ます。長距離といえば渡
り鳥が海を渡ってとぶのはもっとおどろくべ
きことかもしれませ ん。【2】例えばツバ
メは夏の終わるころ、ヨーロッパの国ぐにか
ら南アフリカ各地に渡って冬を過ごします。
しかも、翌年の春にはヨーロッパにまいもど
り、以前の巣があって、そこからとび立った
建物の軒下にふたたび巣をかけることもある
のです。【3】イギリスから南にとんで行っ
た十四羽のツバメの足に足環をはめ、印とし
ておいたところ、全部が南アフリカでみつけ
られたという報告もあります。この渡行(と
こう)距離はおよそ一万キロメートルもある
のです。【4】そして、ツバメたちは春には
またイギリスにもどってくるわけです。どう
してこんな長い距離を正確に往復することが
できるのでしょうか。親鳥から次つぎの世代
に渡りの道筋を伝えるのでしょうか。【5】
どうもそうではないらしいのです。親鳥は若
い鳥たちがとび立つまえに、さっさと先にと
んで行ってしまいま す。若鳥はその後を特
に追いかけるのでもないのです。
 【6】一度、通った道を帰ってくるときに
は、途中の地形や目立ったものが手がかりに
なります。ところが渡り鳥は洋上をとんで渡
行(とこう)するので、なにも目印はないし
、しかも夜間飛行もするのです。
 【7】アメリカ産のチドリは、初秋のころ
、カナダから南アメリカに三千キロメートル
の洋上をノンストップでとぶということで 
す。ペンギン鳥はとぶことはできませんが、
中には毎年、南極大陸と南アメリカとを泳い
で往復するものもいます。【8】鳥たちがま
ちがいなく巣にもどってくるのは、地形をお
ぼえたり、目立ったなにかを目印にしたりす
るのではないようです。
 虫たちもこれに似た大移動をします。【9
】イナゴの大群が、東アフリカでは、八時間
にわたって休みなく五〜六〇〇キロメートル
の∵距離を一定の方向にとんで行くというこ
とです。イナゴの幼虫は、羽をもっていませ
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んが、羽をもつようになると群(む)らがり
出し、とび立って行くのです。【0】乾燥し
た年には緑の草を求めて、風をたよりに群(
む)らがってとぶのです。ヨーロッパにいる
ヒメアカハタチョウは冬の季節にはそこでは
生き続けられないのですが、その季節に北ア
フリカで繁殖します。やがて春をむかえる 
と、チョウは地中海を渡って六月ころにはヨ
ーロッパに到着しま す。七月に卵を産みつ
け、新しい幼虫は八月には一人前になりま 
す。大部分のチョウはヨーロッパで冬を越す
ことはできませんが、その中からふたたび、
アフリカにとぶものもいるのです。チョウは
一定の方向にとび、風向きが変わっても方向
をとりちがえないで行きますので、渡り鳥と
同様、ふしぎな能力をもっているわけです。

(「動物とこころ」 小川隆著 大日本図書
より)