長文集  11月2週  ○ウナギは卵を生むために(感)  tu2-11-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2011/09/13 14:17:40
 【1】ウナギは卵を生むために育った土地
から五〜六〇〇〇キロメートルも離れたとこ
ろまで泳いで行くということですが、そこで
生まれた子どもがふたたび両親の育った土地
まで帰ってくるというのですから、これもふ
しぎな大旅行といえそうです。【2】ウナギ
はおよそ十歳になると川を下って海に出て行
きます。例えばヨーロッパ各地のウナギは川
をつたって大西洋に入ります。そこからは深
海にもぐって西インド諸島の付近まで行くら
しいのです。そこでウナギの両親は子どもを
産んで死ぬのです。【3】育った子ウナギ 
は、やがて海を渡ってヨーロッパにもどる大
旅行をすることになります。海からヨーロッ
パの河口に到達するころになると、ウナギの
身長は五センチ以上になりますが、群れをな
して上流にさかのぼって行きます。【4】そ
して、両親の育った場所にもどり、ふたた 
び、両親の役目をくり返すわけです。この大
旅行についても、渡り鳥やデンショバトのよ
うな太陽コンパスが考えられるかどうか、両
親の故郷の生活を一度もしたことのないウナ
ギの子が、そこに帰って行くことを考えると
なかなかむずかしいことです。
 【5】サケも卵を生むために大旅行をしま
すが、ウナギの場合とちょうど逆さまで、海
から泳いで河口に達し川をさかのぼって行き
ます。卵は上流の河床に産みつけられるので
す。生まれたサケの子は、約二年間、川の中
で過ごし、それから川を下って海に出て行き
ます。【6】そこで二年以上過ごし、十分に
成長したサケはふたたび、海から川に向かっ
てもどることになります。ふしぎなのは、サ
ケがもどる川が、はじめに育って出て行った
川だということです。同じサケがもどって来
たのかどうかを確かめるために、ひれのある
場所を切って印をつけておいてわかったので
す。
 【7】サケはおどろくべき記憶力をもって
いて、出て行った川をおぼえているのでしょ
うか。サケの卵を産卵地とちがう川の上流に
移しかえる実験がアメリカのカリフォルニア
で行われました。【8】サケは生まれた土地
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
にではなく、育った土地にもどって来まし 
た。∵サケは育った土地をおぼえていたので
す。サケはなにを目印に故郷の川をさがし出
すのでしょうか、海の中にも太陽コンパスは
働くかもしれません。しかし、魚の場合には
それ以外にも手がかりがあります。【9】そ
れは臭です。二つの別の川の水を水槽の中に
流し、一方の流れのときだけ餌を入れますと
、サケは流れのちがいを嗅ぎわけるらしいの
です。それですから、海から河口に近づくと
自分の育った川の流れをさぐり当てることも
できそうです。【0】

(「動物とこころ」 小川隆著 大日本図書
より)