長文集  12月1週  ○ここでもう一度(感)  tu2-12-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/08/17 14:42:14
 【1】ここでもう一度クレバー・ハンスの
誤りを思い出してください。クレバー・ハン
スが計算をするというのはまちがいでした。
それならば、動物たちはみんな数えることは
できないのでしょう か。【2】ハトは四粒
のとうもろこしを一まとめにして積み重ねた
山と五粒の山とを作って置くと、これを区別
して好んで五粒の山をつつき、さらに五粒と
六粒とにすると五粒よりも六粒を好んでつつ
くという報告があります。【3】この実験で
は六粒と七粒とにしたところ、それは区別で
きなかったということです。ハトはこのよう
に数の大小をある程度はみわけられることが
わかります。人間でも一度に目でみて数えら
れる数は七つ前後だということですから、ハ
トが六つと七つとの区別がつかないのもうな
ずけることかもしれません。
 【4】この場合には同時に数の多少が比べ
られるのですが、同時には比べられない場合
はもっとむずかしくなります。ツバメは巣に
七つか八つの卵を産んで温めますが、卵の一
つをそっととりのぞいてみると、すぐにさら
に一つを産んで加えます。【5】また一つを
とり除くとまた一つを産み、そういうことを
くり返すと五十も産み続けたという報告もあ
ります。しかし、これはツバメが数えながら
卵を産んでいるのかどうかは怪しいものだと
思います。【6】別の実験では鳥は巣の中の
四つの卵の中から二つの卵をとり出すと気づ
きますが、一つだけではまったく気づかない
という報告もありま す。
 オランダのレベッツ先生たちはニワトリに
一列に並べたコメ粒をついばませる実験をし
ましたが、一粒置きにコメ粒を糊ではりつけ
てとれないようにしました。【7】トリはす
ぐにそれがわかってまちがいなく一粒置きに
つつくことができました。この訓練のあと 
で、二粒置きにとれるようにしましたが、こ
れもできます。ニワトリがほんとうに数えて
いたのかどうかはこれだけではどちらともい
えないかもしれません。【8】いちいち、数
えなくてもはがれるコメ粒とはがれないコメ
粒とをなにかの手がかりで区別していたかも
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しれないからです。∵
 しかし、ハトの実験の結果ではハトは数え
ることができそうなのです。【9】ハトの前
に一度にいく粒もの穀粒を並べるのではなく
一粒ずつ出します。そして六粒までは自由に
ついばんで食べることができますが、七粒め
ごとにはりつけられた粒を出しそれは食べる
ことができないようにしました。【0】これ
をくり返しているとやがてハトは六粒つつい
ては七粒めはつつかないで見送るようになる
のです。しかし、この結果でもハトがほんと
うに数えていたのかはわからないのです。六
粒まで食べる時間がわかっていて、時間の経
過で判断していたかもしれないからです。そ
こで一粒一粒を出す間の時間をいろいろ変え
てみましたが、それでも七つめはつつかない
で次を待つのは変わりなかったのです。

(「動物とこころ」 小川隆著 大日本図書
より)