1. 【1】
十二月三日、
大事件が
起きました。ぼくの
下の
前歯が
抜けたのです。
友達はみんな
抜けていたのに、ぼくだけ、まだ一
本も
抜けていませんでした。
2. その
歯は、
前から
少しぐらぐらしていました。【2】
歯が
抜ける前の
日から、
走った
震動でぐらぐらしてしまうぐらい
揺れていました。だから、ぼくだけ、
朝ごはんをおかゆにしてもらいました。おかゆはあまり
食べた
気がしません。ぼくは
何杯も
食べました。
3. 【3】
朝ごはんはなんとか
食べられたけれど、
心配なのは
給食です。その
日の
献立はきびなごフライでした。まるで
歯医者さんに
行ったときみたいに
大きな口を
開け、
慎重に
口に
入れました。そんなに
気をつけて
食べたのに、ぐらぐらの
歯にがつんと
当たってしまいました。【4】とても
痛かったです。ぼくは、おなかがぺこぺこでしたが、それからは、もう
歯が
気になってあまり
食べられませんでした。
4. ぼくは、一
回も
給食を
残したことがありません。それなのに、
今日は
残したので、
友達が
心配してくれました。【5】
大ちゃんは、
5.「
自然に
抜けるまで
待った
方がいいよ。」
6.と
言いました。てっちゃんは、
7.「ぼくは、お
兄ちゃんとケンカしてたら
腕がぶつかって
抜けたよ。」
8.と
言いました。その
話を
聞いていた
女の子たちも、
自分が
抜けたときのことを
教えてくれました。【6】
歯医者さんで
抜いてもらった
子もいました。ぼくがいちばんうらやましいなと
思ったのは、
朝起きたら
抜けていたという
話です。どうしてかというと、
寝ている
間だったら
痛くてもきっと
気がつかないなと
思うからです。∵
9. 【7】
給食のあとの
掃除の
時間も、
帰りの
会のときも、ぼくはいつもの
元気が
出ませんでした。きっと
給食を
食べられなかったからだなあと
思いました。
帰りに
大ちゃんが
10.「
今日、
遊べる?」
11.と
声をかけてきたけど、
断ってとぼとぼと
家に
帰りました。
12. 【8】
家に
着くと
お母さんが、
13.「うわー、これぬいてあげようか。」
14.と、ぼくの
歯を
指でぐらぐら
揺らしました。ぼくは、
思わず逃げたくなりました。
15.
晩ご飯も、
歯が
痛くて
食べられませんでした。【9】
思い切って
抜いてしまおうとも
思ったけれど、
結局そのままにしてお
布団に
入りました。
明日の
朝、
起きたら
抜けていたらいいなあと
考えながら
寝ました。
16.
次の
朝、
目が
覚めると、なんと、
枕のとなりに
歯が
落ちていました。
17.【0】「やったあ、
抜けたよう!」
18.ぼくは
お母さんのところへ
走りました。
思ったとおり、
寝ているときに
抜けたので
嬉しくてたまりません。
痛くなかったので
本当によかったです。
19.(
言葉の
森長文作成委員会 ω)