長文集  12月4週  ○生きているものには  u-12-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/04 15:12:34
 生きているものには、すべて
寿命がありま す。しかし、生
物の体を作っている細胞のレベ
ルで考えると、実は寿命がない
のです。 
 例えば、アメーバは、自分の
体を分裂させながら増えていき
ます。栄養がいいと、自分の体
の一部を分裂させて、自分を増
やしていきま す。
 このアメーバのような増え方
をしている生物は、たまたま一
つの個体が死んでも自分の分身
は生きていますから、死んだこ
とにはなりません。
 実は人間にも、同じようなこ
とが言えます。人間はアメーバ
のように分裂して増えるわけで
はありませんが、自分の細胞の
一部を子供に伝えて生きていま
す。だから、子供は、お父さん
やお母さんに似ているのです。
 
 このように細胞は無限に生き
続けていきますが、人間の個体
には寿命があります。どうし 
て、このような寿命があるのか
はわかりませんが、この理由は
次のように考えることができる
かもしれません。
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 例えば、もし何百(なんびゃ
く)年間も壊れない自動車があ
ったらどうでしょう。古くなっ
て、いろいろ改良したいところ
が出てきても、いつまでもその
古い車に乗り続けなければなり
ません。物は壊れるから、また
新しいものを作ることができる
のです。 
 プラスチックは、人間が人工
的に作ったものです。そのプラ
スチックの特徴は、腐りにくい
ことでしたが、その腐りにくさ
のためにいつまでも自然の中に
残り環境を汚染するようになり
ました。壊れないものばかりで
世の中ができていると、新しい
ものが登場できなくなるので 
す。 
 生物も似ています。寿命があ
るから、新しい生物が生まれ、
その新しい生物が古い生物ので
きなかったことをできるように
していくので す。∵
 アメーバと同じような生き物
にゾウリムシがいます。このゾ
ウリムシは、栄養状態のよいと
きに自分を分裂させて増えてい
きます。しか し、七百回ぐら
い分裂を繰り返すと、それ以上
の分裂はできなくなり、突然す
べてのゾウリムシが死んでしま
います。そうならないように、
ゾウリムシはときどき別のゾウ
リムシと結婚して、今までの自
分とは違う新しい子孫を作りま
す。と言ってももちろん、ゾウ
リムシがゲタムシやサンダルム
シになるのではありません。ゾ
ウリムシのまま新しい性質を手
に入れるので す。
 寿命があるということは、新
しいものを生み出す条件だと言
えるのかもしれません。

 言葉の森長文(ちょうぶん)
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