言葉の森
受験作文の勉強法








Online作文教室 言葉の森
234-0054 神奈川県横浜市港南区港南台4-21-15
電話 0120-22-3987(045-830-1177 平日9:00~20:00)
20180405-1/5
 



■はじめに  

 この小冊子PDFは、これまで言葉の森のホームページなどで書かれた受験作文コース向けの記事に、新たに書き下ろし原稿を加えて編集したものです。
 この小冊子に書かれている内容についてのご質問やご感想は、オープン教育「受験作文小論文の岸」、又は、facebookグループ「言葉の森と家庭学習)」などにお寄せください。



■受験作文の練習の仕方  

 受験のための作文は、実力をつける勉強ではなく、勝つための勉強と割り切って行うことです。
 実力をつけるための勉強の場合は、読書と作文の練習を中心に幅広いテーマで時間をたっぷりかけて行いますが、勝つための勉強は、出題されそうなテーマに絞って、字数制限と時間制限と考えながら書く練習をすることが大切です。

 まず、出そうなテーマを10本選びます。受験の場合、よく出るのは、多様性を認めることの大切さ、日本文化の特徴、言葉の役割、読書の意義、勉強や学問のあり方、チームワークの大切さ、国際化への対応、自然環境を守ること、などです。

 それぞれの志望校によって特徴がありますから、過去問を見て傾向を考え、自分でテーマを10本決めます。
 近年の入試では、問題を難しくするために複数の文章が出されることが多くなっていますが、そういう出題形式にとらわれることなく、取り上げられているテーマを中心に過去問を見るようにします。

 テーマを決めたら、それぞれのテーマを1日に1本の割合で書いていきます。時間は1時間半ぐらいを目安にします。試験時間に合わせたスピードを上げる勉強は、10本の作品が全部仕上がってから行います。まずは、それぞれのテーマを自分なりに考えて書いていくことです。

 それぞれのテーマの中身となるものは、体験実例と社会実例です。意見や感想は長く書けるものではありませんから、実例の肉付けを準備しておくことが大事です。
 体験実例が不足する場合は、両親に取材して身近な人に聞いた話を実例とします。社会実例はデータとなる数字があれば概数を覚えておいて使うと効果があります。

 意見や感想となる部分は、小学生がひとりで考えるには無理があります。それぞれのテーマについて、親子で協力しながら大きい感想を考えます。その場合のキーワードは、「人間にとって」です。例えば、「読書というものは人間にとってどういう役割があるか」「勉強は人間にとってなぜ大切か」などということを親子で話し合って、自分なりの考えを作っておくようにします。

 意見や感想を書く際、「○○はAでなくBである」というような、他と対比する形で文章を考えておくと、切れ味のいい表現として使えます。これは、言葉の森では、自作名言として練習しているものですが、この表現が結びの5行から10行あたりに入ると、作文全体の印象が向上します。

 作文をテーマ別に10本書き終えたら、今度は書き上げた作文を、毎日音読します。音読するうちに直した方がいいところがあれば書き直します。
 何度も音読していると、文章全体が頭に入りますから、同じテーマで元の文章を見ないで、今度は時間制限と字数制限を考えながら書く練習をします。
 書く文章は、元の文章と同じでなくてもかまいません。大事なことは、時間内に必要な字数を埋める力をつけることです。

 字数制限と時間制限を守るために大事なことは、原稿用紙に途中経過をチェックするポイントを決めて印をつけておくことです。600字の文章で、全体を四段落に分けて書くとすれば、4分の1に分けた140~160字ぐらいの場所に線を引いておき、そこまでの字数と時間の目安をあらかじめ決めておきます。
 自分の決めたチェックポイントで、字数が不足したり時間がかかりすぎたりしたら、次のチェックポイントで長く書くとか速く書くとかする調整ができます。字数と時間は、作文全体で考えるのではなく、それぞれのチェックポイントごとに考えておくことが大切です。

 試験の本番では、設問のキーワードを必ず作文の結びに使うようにします。できれば、作文の書き出しにも設問のキーワードを入れるようにします。
 文章の中身は、自分がそれまでに書いた作文練習の中身を応用するようにします。
 途中、話の展開が多少ずれるようなことがあっても気にしません。大事なことは、中身よりも字数と時間です。最後まで書き上げて、結びにキーワードが使ってあれば、中身の多少のずれは気になりません。

 読み返して書き間違いなどに気がついた場合は、消しゴムを使うよりも二本線などで訂正しておきます。消しゴムを使うと時間がかかりすぎることが多くなるからです。しかし、あまり読みにくくなるような複雑な訂正はしないようにします。
 誤字が2箇所以上あると大幅な減点になります。ひらがなで書くのは、誤字と同じ評価になることが多いので、書いた漢字が曖昧なときは、別の言葉を工夫します。



■受験生の夏休みの勉強法  2377


 夏休みの勉強は次のように取り組んでいきます。
 まず、夏休みから本格的な受験勉強を始めるために、夏休み前に、志望校の過去問を解いておきます。解くと言っても、自分の力で解くのではありません。答えを最初に書き写し、問題と答えを読んで、どういう傾向の問題か、自分ならどこまでできるか、今後どういう勉強が必要かということを考えるのです。
 問題を自分で解こうと考えると、心理的な負担が大きくなり、過去問に取り組む勉強がどうしても後回しになってしまいます。過去問は、勉強の仕上げのためにやるのではありません。勉強の準備のためにやるのですから、まず取り組みやすい「答えの書き写し」という作業から始めるのです。

 過去問の答えを書き写し、自分で問題と答えを読んでみると、これから力を入れなければならない分野が自ずからわかってきます。受験勉強は、得意分野を伸ばすのではなく、苦手分野を伸ばすことを第一に考える勉強です。
 人生や仕事は、得意分野を伸ばして取り組むものです。それは、正解のない分野だからです。しかし、受験勉強は正解のあるものですから、自分の苦手を補強することを第一に考えるのです。
 得意教科の90点を95点にする時間よりも、苦手教科の60点を70点にする時間の方が短いのが普通です。このように考えると、苦手分野に取り組むことの大切さがわかってきます。受験の合否は総合点で決まるのですから、苦手分野の点数を上げる方が能率がよいのです。

 自分がこれから力を入れて勉強する分野がわかったら、全教科の教材選びをします。大きい書店に行き、参考書コーナーなどで、自分が勉強するのにふさわしいと思う問題集や参考書をできるだけたくさん買ってきます。ネットの書店では、中身が確かめられませんから、評判のよさそうなものを、これもできるだけ多く買います。この最初の投資が重要ですから、ここでの出費は惜しまないことです。
 参考書と問題集を買ってきたら、ひととおり全部少しずつやってみて、自分に相性のよいものを選びます。原則として1教科1冊に絞り、その1冊を受験までに5回繰り返して完璧に仕上げることを目標にします。夏休みは最も時間の取れる時期ですから、夏休み中にどの問題集を何ページやるか、どの参考書を何ページ読むかというページ数の配分をします。以上が夏休み前の準備です。

 夏休み中は、1日の勉強時間の目標を決めます。目標の絞られた勉強ですから、成績がどれくらい上がるかは、どれだけ時間をかけたかで決まってきます。1日7時間やるとすれば、朝3時間、午後3時間、夕方1時間などと大体の目安を決めておくとよいでしょう。自分の立てた計画で、夏休み中に1日6~7時間勉強すれば、成績は必ず上がります。それも、驚くほど上がります。だから、夏休みは、塾の夏期講習などに行っている暇はないのです。
 中学3年生は、昔で言えば元服ですから、大人として一人前の行動ができる年齢です。自分の意志力に自信がないから塾の夏期講習に行くというような気持ちでは、将来も人並みのことしかできません。また、お父さんやお母さんも、子供が自分の意志で勉強することを見守る勇気を持つ必要があります。最初は試行錯誤の不安があるはずですが、自分の立てた計画で1か月勉強したあとは、成績だけでなく人間としても大きく成長しているはずです。

 ただし、自分の成績を客観視するために、模擬試験は、夏休み中から何度か受けておきます。しかし、模擬試験はあくまでも模擬試験で、最も大事な基準は、志望校の過去問で自分がどれぐらい得点できるかということですから、時々過去問に立ち戻り勉強の軌道修正をしていく必要があります。



■受験は作文力記述力で差がつく  2439


●中高大いずれの入試も記述力重視に

 中学入試、高校入試、大学入試とも、入試の傾向は、○×式の選択問題から、記述力を重視した問題に移っています。この傾向は、難関校ほど顕著で、国語に限らず数学、英語、理科、社会も、すべて記述力が必要な問題になっています。
 また、融合問題と言われる複数の教科の内容を横断したものも増えているので、これまでのように単純に理科や社会の教科別の勉強をしていたのでは答えられない問題も出てきています。つまり、単なる知識の再現をテストする問題ではなく、その問題を自分なりにどう理解し、どう考えるのかという思考力が問われる問題になっているのです。
 生徒の思考力は、表現力として表れます。ある問題についてどのように書くかということが、その生徒がどのように考えているかという内容と結びついています。だから、これからも記述力、作文力を重視した問題は確実に増えていくのです。

●言葉の森の作文で読解力も表現力も

 言葉の森の作文の学習は、単に作文を書かせるだけの学習ではありません。長文を読み、家族と対話し、実例を増やし、より広い視野で作文を書くという学習です。
 書く力は、読む力に支えられています。読む力の育成を伴わない学習では、作文力の向上はすぐ頭打ちになります。例えば、語彙力のない生徒は、いつも同じようなありきたりの言葉で文章をまとめてしまいます。語彙力のある生徒は、それぞれの文の流れに合わせて多様な語彙を使うことができます。語彙力のない生徒に、作文の評価の上だけで多様な語彙を使うように言っても指導は空回りするだけです。書く練習をする以上に、読む練習をする必要があるからです。
 言葉の森の作文の課題となる長文は、それぞれの学年に応じたレベルの文章よりも一段階難しいものになっています。だから、家庭で事前にその長文を音読し、その長文をもとに家族と対話することが、よりよい作文を書く準備となっています。この音読と対話が、作文力のもととなる読む力を育てるのです。

●中学入試から大学入試まで作文専科

 言葉の森の生徒は、下は幼稚園年長から、上は高校3年生、大学生、社会人まで幅広い年齢にわたっています。中学入試で作文の試験を受け、言葉の森の受験作文コースで勉強した生徒が、学年が上がり、今度は大学入試でも小論文試験を受けるために受験作文コースに切り換えて勉強するということがよくあります。それだけ、言葉の森の作文指導を信頼しているのです。
 作文や小論文を教えてくれる塾や予備校は数多くあります。しかし、子供たちの文章を見て評価したり添削したりすることと、その生徒の文章力を上達させることとは全く別のものです。
 言葉の森は、長年の作文指導の蓄積があるので、苦手な生徒から得意な生徒まで、どのような課題にも対応できる指導をしています。
 受験には合否がありますが、言葉の森の作文指導を受けた生徒は、受かった生徒はもちろん、落ちた生徒でさえもほぼ全員が、「作文の試験はよくできた」と言ってくれます。受験の合否を超えて、真の実力をつける練習をしているからです。

●文章力は社会に出てからも役に立つ

 言葉の森の作文指導は、作文小論文の試験はもちろん、記述力の試験にも、読解力の試験にも役立ちます。しかし、本当に役立つことが実感できるのは、社会に出てからです。
 社会生活は、仕事の上でも、仕事以外の分野でも、文章を書く機会は意外と数多くあります。特に、責任ある立場になれば、それだけ表現力のある文章を書く力が要求されるようになります。
 言葉の森の作文指導は、小学校低学年までは事実中心の作文練習ですが、その事実中心の作文で書く力をつけ、その土台の上に感想文や論説文を書く練習をしていきます。
 社会に出てから役に立つ文章力は、どちらかと言えば、小説を書くような文章力ではありません。自分の意見をわかりやすく説得力を持って書くという論説文的な文章力です。
 言葉の森で作文の練習をすることによって、その論説文を書く力が育ちます。それは、その人の生涯の無形の財産ともなるのです。



■受験作文コースの今の時期に大切なこと  2483


 受験作文コースの方は、間近に迫った受験に落ち着かない気持ちでいることと思います。
 こういう時期は、特に親の姿勢が重要になります。
 これまでに載せた受験関係の記事から、今の時期に大切なことを再掲します。

■受験直前の作文の勉強は、これまでにやってきたことを再確認して自信をつけること(20140102)

 受験直前の勉強は、これまでやってきたことを再確認することです。そして、自分なりに納得できる作品を仕上げて、これまでやってきたことに自信をつけることです。
 ところが、受験直前に不安になり、別の塾や予備校に相談したり、別の勉強をやろうとしてしまう人も多いのです。そういうことが、これまで何度もありました。あるいは、模試で悪い点数を取って自信をなくすという子もいました。
 ところが、そういう悪い点数を取ったり、これまでの作文をけなされたりした子もちゃんと合格しています。作文のよさは内容のよさです。他人にどうのこうの言われて判断するものではありません。しかも、受験の直前にそういうところで他人にふりまされるものではありません。
 言葉の森は、中学入試だけでなく、高校入試でも大学入試でも通用する作文小論文を指導しています。大学入試では、どの予備校の小論文講座よりも優れた指導をしている自信がありますし、現にそういう実績を上げています。塾や予備校で、その学年の生徒だけ指導しているのとは厚みが違うのです。
 かわいそうなのは、受験直前にこれまでと違うアドバイスを受けて動揺してしまう子供たちです。言葉の森では、たとえほかの塾や予備校から入ってきた子がいても、前の作文指導の悪口などは決して言いません。そんなことを言っても、子供にとっては何のプラスにもならないからです。そして、自然に言葉の森のやり方で作文が書けるように指導していきます。
 だから、子供のそれまでの作文をけなす指導者は、それだけでもう二流です。保護者のみなさんは、そのことをよく頭に入れておくといいと思います。
 今の時期は、新しいことを始めるのではなく、これまでやってきたことを固めることに全力を尽くす時期です。受験にはメンタルな面があります。親が不安がっていては、子供も力を出せません。お父さんやお母さんがどっしり構えて、これまでやってきたことをそのまま一直線に続けていくことが大事なのです。

■受験直前の今は、欠点を直す時期ではなく、これまでの勉強に確信を持って反復する時期(20140103)

 受験直前になると、子供以上に親や先生が不安になります。不安になると、欠点を直すことに目が向きます。しかし、これがいちばんよくないのです。
 まず第一に、欠点はそんなに簡単に直せるものではありません。
 第二に、欠点を直す勉強に力を入れると、どんどん自信をなくしていきます。
 欠点は捨てておけばいいのです。普段の心がけがよければ、苦手な分野は出てこないと思っていれば気が楽になります。そんな感じでいいのです。
 そのかわり、これまで自分が勉強してきたやり方に確信を持ち、参考書や問題集を見なおして更に確実に自分のものにしていくことです。その際、過去問にもう一度目を通しておくといいでしょう。どういう分野が重点になっているかがわかると、これまでの勉強の見直しにも焦点が絞れます。
 過去問に目を通す方法は、まず、まだやっていない過去問に、あらかじめ答えを全部書き込むことです。過去問は、自力でやろうとすると気持ちの負担が大きくなり、後回しになることが多いからです。
 答えを全部書き込んだあと、その過去問の問題と答えを読書のようなつもりで読むのです。なるほど。この問題で、こういう答えになるのか。ふむふむ」という感じです。
 受験勉強という一大イベントに臨む姿勢は、その後のその子の人生の大きなイベントに臨む姿勢のモデルのようなものになります。そういう大きい視野で勉強を見ておけば、受験勉強はその子にとって勉強以上の大きな収穫のあるものになっていきます。



■受験作文コースの直前の対策は、これまでの作文を読み返すこと  2513


 受験作文のい直前の対策と言っても、この時期に新しいことをやるのではありません。ときどき、言葉の森で勉強したものを学校やほかの塾の先生に見てもらう人がいますが、よほどその先生が作文指導に慣れている先生でなければそれはやらない方がいいです。(そういう先生はほとんどいません。)
 というのは、作文指導に慣れていない先生ほど、この時期に直す指導をしてしまうからです。もちろん、その直す指導が具体的で本人にすぐできるものであればいいのですが、ほとんどの場合その生徒がすぐにはできないことを言います。
 すると、子供は混乱して、これまでできていたことまでできなくなってしまうことがあるのです。

 もし万一そういうことをもうしてしまった人がいたら、お母さんかお父さんがしっかりした方針として、「これまでのやり方でやっていけばいい」と言ってあげてください。
 これは作文の試験以外のすべての試験にあてはまります。
 何事も、最初に決めてやってきたやり方が、いちばんいいやり方なのです。

 では、どういう直前対策をするかというと、それはこれまで書いてきた作文をファイルにとじておくことです。
 その上で、その作文を読んで、自分なりに上手に書けたと思うところに赤か青のペンで線を引いておきます。(赤ペンは既に担当の先生が引いていることが多いので。)
 また読み返してみると、表現を直した方がいいと思うところも出てきます。その場合は、小さい字になってもいいので、その部分をよりよい表現に直しておきます。ひらがな書きになっているところや、誤字のところも同じです。

 そのようにしてファイルした作文を、ときどき読み返します。全部読む時間がないときは、上手に書けたと思った傍線の引いてある箇所だけでもかまいません。試験の直前まで何度も読んでいると、試験の本番で同じ表現や実例を使える場面が出てくるからです。
 作文の勉強の仕上げは、自分がこれまでに書いた作文を読むことなのです。

 また、もっと時間があるという人の場合は、同じテーマで元の作文を見ずに、時間制限の中で同じように書けるかどうかを確かめてみてください。(全く同じに書くというのではありません。大体の方向が同じであればいいということです。)

 受験で差がつくのは、時間が限られているためです。同じテーマで何度も書いていると、自分が最高のスピードで書けばどのぐらいの時間で何文字書けるかがわかってきます。この自分の最速の字数を知っていると、試験の本番で残り時間が少なくなったときでも、「あと何分あるから、何文字は書ける」という見通しがつくので、焦らずに書いていくことができます。

 作文試験や面接試験の当日には、読みかけの小さい本も持っていくようにしてください。作文の場合は、これまでに書いた作文を見直すのが試験前の準備ですが、それでも時間があるとき、又は面接試験で待っている時間があるときは、持ってきた本を読んでおきましょう。
 試験前に本を読んでいると、なぜか不思議なことに、作文や面接の試験のときに、その本の内容を生かせる場面が出てくることがあるのです。

 作文試験の本番で、書きやすい、易しい課題が出てきたら、それは普段の心がけがよかったからです。
 その反対に、難しい、書きにくい課題が出てきたら、それは逆にチャンスです。自分が難しいと思うときは、ほかの人もみんな難しいと思っています。言葉の森での作文の勉強は構成を重視して練習しているので、難しくて書きにくい課題のときほど上手にまとめて書くことができるからです。

 さて、生徒の方はこういう準備でやっていけばいいのですが、お父さんやお母さんも心の準備をしておく必要があります。
 合格を目指して勉強することは、とても価値あることです。こういう受験勉強の中で、親も子も鍛えられます。

 しかし、人生という長い目で見ると、合格した子も、合格しなかった子も、途中の経過は違っても、なぜかその子の本来の目指していたところに行き着くようになっているのです。
 合格が有利で不合格が不利に見えるのは、そのときだけです。その後の人生の中では、有利に見えたことが不利になったり、不利に見えたことが有利になったりして、いろいろな紆余曲折を経て、その子の本来の道を進んでいたことに気がつくのです。
 だから、お父さんお母さんは、なごやかな表情で子供の受験勉強の最後の仕上げを見守ってあげてください。



■受験作文のコツ――実例と表現に個性を生かす  2650


 受験作文には、コツがあります。
 それは、わかりやすく書くことです。何を今更と言われそうですが、わかりにくく書いてある作文も意外と多いのです。

 わかりやすさのいちばんのポイントは、構成がすっきりしていることです。
 起承転結でも、序論本論結論でも、どういう形でもいいのですが、自分が意図した構成で書かれていることが大事です。

 ところが、学校の作文では、構成を意識して書くということはあまりやりません。
 構成メモを書いてから作文を書くというやり方はよくやられていますが、その内容の多くは、メモを先に書くよりも直接書いた方が早くできるというようなあまり意味のないものになっているようです。

 特に、小学校低中学年では、構成メモを書く意味はほとんどありません。
 それは、作文に書くことが事実に基づいたものであることが多いので、時間の順に書いていけばそれで間に合うからです。

 言葉の森の作文構成指導も、低学年のときは、中心を決めて書くということだけです。
 中学年になると、構成を立体的にするために、途中でお父さんやお母さんに取材した話、又は、自分の昔の話などを入れたりします。
 しかし、基本は時間の順序で書いていく形です。

 小学校高学年になると、構成の意識をもっとはっきり持てるようになります。
 それは、小学5年生ぐらいになると、全体の構造を考える能力がついてくるからです。
 文章を要約する力がつき始めるのも、この小学5年生からです。

 この時期には、複数の実例を組み合わせて、一つの感想でまとめるという書き方になります。
 複数の実例を書くときは、できるだけ、それらの実例の長さが大きく違わないようにすると読みやすくなります。

 中学生以上になると、実例ではなく、理由や意見や方法や原因を複数に分けて書く形になります。
 このころになると、構成をもとにして考えること自体に頭を使うようになります。

 言葉の森で作文を勉強している生徒が、予備校の模試などを受けると、構成のところがよい点になることが多いのは、普段から構成を意識して書く練習をしているからだと思います。

 構成をわかりやすく書いたあとで大事なことは、実例と表現の工夫です。
 意見文の場合、意見で個性を出すということはまずできません。意見というものは、誰が考えても同じようなものになることが多いからです。
 では、どこで個性を出すかというと、その意見の裏付けとなる実例と、その意見をどう表現するかという表現の工夫の部分です。
 意見は、あまり凝ったことは考えずに、自分が最初に思いついた平凡なことでかまいません。その平凡な意見の実例として、自分らしい実例を入れていくのです。

 自分らしい価値ある実例の要素は、個性、感動、挑戦、共感などがあることです。
 あまりよくない実例は、「最近、テレビを見たが、こんなことがあった」というような、ただ見ただけ聞いただけの実例です。
 やはり、自分が何かしたという要素が大事なのです。
 また、社会実例の場合でも、誰でも思いつくようなよくある話ではなく、自分なりに本を読んで得た知識などが書いてあれば、それが価値ある実例になります。

 表現の工夫とは、輪郭のはっきりした光る表現を入れることです。
 光る表現は、「○○はAではなくBである」というような形になることが多いのですが、特に形にこだわる必要はありません。
 これは、普段から書く練習をしていると、たまに、「われながらいい表現になった」と思うものが時どき出てきます。それを覚えておいて、使えるようにしておくといいのです。

 小学生の場合は、たとえやことわざが光る表現に近いものになりますが、これらは中学生以上の意見文で使ってもあまり効果はありません。
 事実中心の作文で書くときには、光る表現になるのです。

 入試で作文試験がある場合の対策ですが、この実例と表現をたくさんストックしておくことがいちばんの準備になります。
 準備があれば、作文試験のような出来不出来が不安定になりがちなものも、コンスタントに自分の実力が発揮できるようになるのです。



■記述式問題の家庭での対策  2660


 入試で、記述式の問題を出すところが増えています。
 理由はいろいろありますが、選択式の問題では、ある程度考えて読む力を身につけた生徒は、ほぼ全部正解になってしまうからです。言葉の森のセンター試験満点講座を受ければ、それがすぐわかります(もう募集はしていませんが)。

 だから、選択式の問題で難しい良問を作るのはかなり大変です。センター試験の問題作成者は、よくがんばっていると思います。問題を解くことに比べたら、選択式の問題を作ることは何倍も(かかる時間でいったらたぶん十倍以上)難しいのです。

 それに比べると、記述式は問題作成が簡単です。そのかわり、採点が難しくなります。
 そして、記述式の字数が長くなると、採点はその字数の自乗に比例する形で難しくなってきます。
 小論文の試験になると、採点者は読むだけで大変です。

 高校入試の作文試験というものの中には、かなり短いものもあります。200字ぐらいのものでは、作文というよりも長めの記述試験と言った方がよいと思います。 
 これも、長い文章を書かせる形にすると、採点が難しいからとい事情があるからだと思います。

 しかし、生徒の実力が最もわかるのは、この小論文なのです。
 それも、1本だけでなく、複数の小論文をそれぞれ1200字以上書くような試験であれば、実力はかなりはっきり出てきます。だから、森リンで採点しても、人間の評価と同じような結果になってくると思います。

 昔の東京大学の小論文が、一時そうなったことがあります。かなり長い小論文課題を複数書かせるよな問題でした。
 しかし、やはり採点の負担が大きかったのでしょう。その方式は、長続きしませんでした。

 記述式の問題が増えてきた背景には、以上の、(1)選択式では問題作成が大変なわりに、実力のある生徒はほとんどできてしまう、(2)小論文では生徒の実力はよくわかるが、多数の生徒を短期間で採点するのはほぼ不可能、ということがあると思います。

 さて、この記述試験(大体が50字から150字程度)にどう対処するかです。
 毎年、今ごろの時期になると、言葉の森の受験作文コースに、記述式の対策をしてほしいという要望が寄せられます。又は、ごく短い作文試験(という名前の実際は記述試験)を見てほしいという要望が寄せられます。

 以前は、その対策をしたこともあるのですが、あまりにも簡単で、わざわざ1時間近く時間をかけて教える内容でもないので、記述式の対策は家庭でやってもらうことにしました。
 教室で教える形であれば、週に1回だけになってしまいますが、家庭でやれば毎日でもできます。
 記述式の試験は、やり方がわかっているだけでなく、書くことに慣れていることも大事なので、家庭で毎日できればその方がずっといいのです。

 そのやり方は、こういう形です。
 まず、教材は昨年度の国語入試問題集です。
 その問題集の中の記述の問題を選んでももちろんいいのですが、ランダムにどの問題文でもよいから、その文章を読んで感想又は論旨を書く、というやり方の方が簡単だと思います。

 文章を読むだけなら5分もかかりません。その上で、その文章に対する感想又は論旨を字数を決めて書くのです。その字数は、自分が受けようとする志望校の過去問の傾向に合わせておくとよいと思います。

 この場合、大事なことは、
(1)読んで、考えて、一気に書くということです。書いている途中で考えたり、書いたあと消しゴムで消して直したりということはしません。頭の中で書くことを考えたら、一息で書くように練習するのです。
(2)一文の字数は、50字を平均としておきます。ですから、150字の記述であれば、3文でまとめるということになります。
(3)できるだけ字数ぴったりに書くようにします。50字の記述であれば、50字目の最後のマスに句点が来るぐらいに書きます。マス目がなく全体の枠があるだけならば、その枠に普通の字数でいっぱいまで書くようにします。
(4)説明文の場合は文章の輪郭がはっきりするように、物事を対比させる形で書いていきます。「AではなくBである」という形です。物語文の場合は文章の深みが出るように、物事の二重の面を浮き彫りにさせる形で書いていきます。「AでありながらBであった」という形です。しかし、これは難しければパスしてもかまいません。

 さて、このように書いたあと、お父さんやお母さんはどう評価したらいいかというと、書かれた文章がスムーズに読めるように書いてあればいいということで見ておけばいいのです。

 お父さんやお母さんも問題文を読んで、その記述が問題文に対応したものになっているかどうかを見られればその方がもちろんよいのですが、そういう評価の仕方を決めてしまうと、親の方が億劫になってきます。

 大事なことは、毎日練習して書き慣れるということですから、苦労するのは子供だけでよく、親はその外側だけ見て、きちんと読めるように書いてあればそのことを褒めてあげるだけでいいのです。

 このように毎日練習をしていると、書くスピードも上がり、読む力もつき、字数ぴったりにまとめる力もついてきます。
 ですから、こういう勉強は普段から行えればいちばんいいのですが、実は記述の勉強や作文の勉強は、生徒の心理的な負担が大きいので、受験という目標がなければなかなかできません。

 だから、受験をきっかけにして、家庭で記述式の勉強ができるというのはとてもよいことなのだと思います。



■作文が返却されたあとの家庭での対応  2728


 作文を書いたあと、1週間後に先生から講評と評価が返却されてきます。
 それをどう見たらいいのかということについて説明します。

 まず、ほとんどすべての子は、先生の評価や講評をざっとしか見ません。ほとんど見ないと言っていいと思います。
 それでいいのです。

 講評は、生徒向け、又は、保護者向けに書かれていますが、その講評だけを読んでもらうために書かれているのではなく、翌週先生が生徒や保護者に話をするための先生のメモのような役割として書かれています。
 生徒は、書かれた評価や講評を読まなくても、先生の話を聞いて入れば、先生が大事なことを言ってくれるのです。

 ほかの通信教育では、詳しい赤ペン添削が返却されることが多いので、その赤ペン添削が勉強の中心のように思われがちですが、作文の勉強で大事なのは、書いたあとの話よりもむしろ書く前の話なのです。

 書く前の話というのは、書く前の準備のことです。
 作文の課題に合わせて、できるだけ自分の個性的な体験を書くようにする、似た話をお父さんやお母さんに取材する、というような準備が作文の内容を決めていきます。

 そして、その準備のあとに、実際に書いている過程が、子供が実力をつけている場面です。そこで、どういう表現を使うか、どういう構成で書いていくかということが作文の勉強なのです。

 どういう表現を使うかということは、その場の努力だけでできるものではありません。読書や音読によって、自分がこれまで使ってこなかったようなよりよい表現を吸収し、それらを使っていくことが表現の練習です。
 ですから、作文を書く前の準備には、毎日の音読や読書も含まれます。

 こういう準備をして、作文を書いて提出したら、それで勉強の勉強はできたということです。
 その作文は翌週に返却されてきますが、次の勉強は、その返却された作文を見直すことではなく、新しい作文を書くことです。

 新しい作文を書くときに、「前の作文はこうだったから、今度はこう書こう」というような話になります。
 例えば、「今度は段落に気をつけてね」とか、「また面白いたとえを見つけてね」とか、「今度はお父さんにも似た話を聞いてみるといいよ」とかいうようなアドバイスです。
 この積み重ねでだんだんとよりよい書き方ができるようになっていきます。

 作文は、最初に書いたものがほとんどすべてで、それをいくら直しても、最初に書いたものよりもよくなることはありません。
 だから、書いたあとの勉強は、する必要がないのです。

 さて、以上が原則ですが、ただし、次の場合だけは、書いたあとの対応が必要になります。

 第一は、誤字の書き出しです。
 添削された作文には、褒め言葉が中心に書かれているはずですが、誤字についてはすべてチェックが入っています。
 この誤字は、一度注意されただけでは直りません。漢字の書き間違いなどは、間違って覚えていることが多いので、同じ間違いを何度もする子がよくいます。
 この誤字だけを、誤字ノートのようなものを作って書き出しておくといいのです。そして、できればその場で正しい漢字を40回書いてみます。40回というのは、400字詰めの原稿用紙の2行分です。
 誤字は、これまでのその誤字を何度も使って書いていたはずなので、これまで書いた回数以上に正しい漢字を書かないと、記憶に残らないのです。

 第二は、受験作文コースの生徒の場合です。
 受験作文は、合格することが目的です。作文の実力をつけるための勉強と、合格するための勉強は、少し性格が違います。
 返却された作文をよりよい作文に書き直していくことが大事な事後の勉強になります。

 では、どう書き直すかというと、作文に書かれている実例をより感動のある実例に直し、表現をより高度な表現に直し、意見をより深い意見に直していくことです。
 これは、子供だけの力ではできません。そして、先生はそこまでは教えられません。そういう話をするには30分も1時間もかかるからです。
 ここで、お父さんやお母さんの役割が大事になります。お父さんやお母さんが子供と一緒に考え、一緒によりよい作文に直していくのです。
 そして、その作文をファイルして、毎日読むようにするのです。

 しかし、こういう親子で書き直すという勉強は、受験前でなければできません。受験前は、子供も勉強の目的がわかっているので、こういう親子での書き直しということも受け入れますが、普段の勉強でこういうことを喜んでする子はまずいません。
 だから、受験前の作文は、密度の濃い親子の話し合いをするいいチャンスだとも言えるのです。




■受験に取り組む際に大事な三つのこと  3061


 受験生の保護者が、子供と一緒に受験に取り組む際の大事なポイントは3つあります。

 第一は、保護者が受験の合否に対する耐性をつけておくことです。
 合否はその後の人生に大きな影響を及ぼすように思われがちですが、そういうことはありません。
 合格不合格にかかわらず、その子のその後の生き方がすべてです。
 合格してよかった子もいれば悪かった子もいるし、不合格になってよかった子も悪かった子もいます。大事なのは、その後なのです。
 そういう大きな視野を保護者が持っていることが大切です。
 だから、合否が決まっ翌日には、もう合否に関係なく新しい取り組みを始めていくことです。

 第二は、大きな視野を持つことと反対のように見えるかもしれませんが、親が全面的に子供の受験に協力する体制を作ることです。
 勝負の目的は勝つことですから、勝つという目的に徹することが大切です。
 塾に任せるだけでなく、親が志望校の傾向を分析したり、子供の勉強の重点を決めたりすることが大切です。
 受験作文については、事前に作文課題に関する材料を親子で集め、話し合い、作文が返却されたらそれを親子でよりよく書き直しておくことです。
 こういう形で10問ぐらい志望校に合った練習しておけば、どういう課題が出ても、それまでに練習した作文の題材と表現と主題を組み合わせて構成を考えることができます。

 第三は、その志望校についてですが、受験する学校の過去問を独自に分析しておくことです。
 学習塾によっては合格可能性を測定するために、受験の直前になるまで過去問をさせないところがありますが、これは本末転倒です。
 過去問の研究は、受験の1年前から始めていくのが原則です。
 これは、高校入試でも、大学入試ても同じです。
 大学入試の場合は、高2から高3になるときの春休みに、志望校の過去問を答えを書き写しながらでいいので、全部解いておくことです。
 それでこそ、1年間の受験勉強の作戦が立てられるのです。
 先に過去問を研究して、自分の弱点を補強するという対策を取るのが、最も効率がよい勉強の仕方です。

 しかし、実は、以上の三つと正反対のことをしている保護者がとても多いのです。
 それでも、合否はある確率で決まりますから、正反対の勉強の仕方をして合格する人はたくさんいます。
 だから、いまだに、合否は人生の岐路、受験は塾や予備校にすべてお任せ、過去問は最後の仕上げと考えている人も多いのですが、それはよい勉強法とは正反対の勉強法なのです。










この小冊子は、言葉の森の体験学習をされた皆様にお送りしています。