受験作文の書き方
受験勉強の考え方









この小冊子は言葉の森のホームページから重要な記事のエッセンスをまとめたものです。
 


■■受験作文の書き方受験勉強の考え方




■入試問題の作文を、枠組みから考えるから方法――都立桜修館中の課題を例に  2675


 この図(やじろべえの図)は、最近の都立桜修館中の入試問題です。
 こういう作文課題は、書き方の方向が決められていないので、書きやすいとも書きにくいとも言えます。誰でも、何とか書こうと思えば書けるが、誰もがどう書いていいかわからないまま書き出すという課題なのです。


 図ではなく文章で書かれた課題も、多くは書く方向性を決めにくい多様な考え方のできるものです。
 作文の課題が、その他の知識的な課題に比べるとどれぐらい得点できるか予測できないのは、こういう捉えにくさがあるからです。

 ところが、言葉の森の作文指導は、こういう課題に対しても、そのほかの文章の課題に対しても、同じように対策を立てられます。その方法が言葉の森独自の構成作文という書き方です。
 与えられたテーマについて、それをどういう方向で書くかということについて、構成、題材、表現、主題を先に考え、それから書き出すようにするのです。

 この図の場合は、ヤジロベエですから、ヤジロベエが表している抽象的な主題をまず考えます。
 与えられた課題に、あらかじめはっきりした意見が求められている場合は、その意見が主題になります。しかし、与えられた課題が象徴的なものである場合、意見はどのようにも考えられます。そこで、その象徴的なテーマを人間の生き方や社会のあり方に結びつけてみるのです。
 場合によっては、範囲をもっと狭めて、文章の書き方や、勉強の仕方などに結びつけることもできます。つまり、方向性のわからない課題を、自分なりの方向性を持った主題に転換していくというのが最初の作業になります。
 このヤジロベエの場合は、バランスという抽象的なテーマが考えられますから、主題を「バランスのとれた生き方」などと考えてもいいでしょう。

 主題が決まったら、次は構成を考えます。
 言葉の森の作文構成法にはいくつかの種類があります。どの構成が正解かということはありませんから、書きやすい構成で書けばいいのですが、大事なことはまず全体の構成を考えるということです。
 構成は、自分の実力に応じて書きやすいものを選びます。この場合は、例えば、複数の意見+総合化というかたちで考えてみます。
 第一の段落は、この図が表していることを自分なりにどうとらえたか説明し自分なりの意見を書きます。
 第二の段落は、バランスのとれた生き方のよい面を考えるとします。
 第三の段落は、バランスのとれた生き方の今度はマイナス面を考えてみます。
 第四の段落は、二つの意見を総合化して、折衷案にはならない形でより高い次元でまとめるようにします。この場合だったら、大事なことは、バランスがとれているかどうかという外見的なことではなく、何を目標としているかということで、その目標との関連でバランスが大事なこともバランスを崩すことが大事なこともあるというような考え方です。
 例えば、バランスとは一般によいものと考えられていますが、走り出すときはバランスを崩さなければなりません。バランスを崩すことは行動力があるということにもつながるのです。

 主題と構成の枠組みが決まれば、次は、その中に盛り込む題材を考えます。題材とは、作文の中身を作る材料です。
 材料には、鮮度のよいものが必要です。鮮度とは、個性、挑戦、共感、感動などのある体験談です。
 鮮度の悪い材料とは、ただ人から聞いただけの話、自分が積極的に行動しているわけではない話、誰でもよくある平凡な話、後ろむきの話などです。
 後ろ向きの話とは、例えば、読書がテーマになっている課題なのに、体験談として自分があまり本を読んでいないのでよく母に本を読めと言われるなどという体験を書くことです。
 もちろん材料にはウソを書いていいのではありません。それは作文の練習というよりも人間として当然のことだからです。

 この材料集めは、その場ですぐに思いつくことはなかなかできません。そこで普段からの練習が必要になります。
 作文の練習をするときに、事前に親子で対話をするのが役立つのはそのためです。人生経験の長い親の話を聞くことによって、子供は自分の中にも似た経験を見つけ出しやすくなるのです。

 材料の中には、体験実例以外に社会実例もあります。社会実例は、データの裏付けがあればかなり強力な材料になります。しかし、小学生ではそこまでの材料を求めることは無理があるので、体験実例がしっかり書ければそれで十分です。

 主題も、構成も、題材も決まれば、次は表現です。
 小学校低中学年のうちの生活作文では、表現の要は「たとえ」です。的確な比喩があると、その作文は光ります。しかし、高学年以上の意見文や説明文では、たとえよりも、主題に関連した光る表現が必要になります。
 この光る表現も、その場で考えつくことはなかなかできません。普段の練習の中で、いろいろなテーマについて、自分が思いついた光る表現をためておくのです。
 入試の本番では、自分のそのストックの中から使えそうな表現をあてはめてくるようにします。光る表現がひとつでも入れば十分です。二つ以上入ればほぼ完全に合格です。

 以上の主題、構成、題材、表現を、作文課題が出された最初の5分から10分で考えて、作文用紙の余白にメモし、そのメモをもとに一気に書き上げます。
 最初に全体像を考えているので、途中でどう書くか迷うようなことはありません。また、途中で消しゴムを使って書き直すようなこともありません。消しゴムはもし使うとしても、うっかり書き間違えた文字を消すだけです。

 時間配分は、全体の時間の半分ぐらいで作文の4分の3ぐらいまで書き進め、最後の4分の1はある程度じっくり考えて書きます。
 何をじっくり考えるかというと、書き出しと結びの対応を考えるのです。作文の中身が個性的に広がっているのを、書き出しと結びの対応でひとつの輪のようにまとめていきます。

 こういう工程が身につけば、作文試験という予測のつかないものでも、自分の実力を常に一定の力で出すことができるようになるのです。




■公立中高一貫校向けの勉強と家庭学習  2915


 一昔前までの公立中高一貫校の入試問題は、よく考えられた良問でした。
 小学6年生が学校で勉強する範囲で考えて解けば解けるようにできていました。

 しかし、倍率が高くなり、問題の性格上採点に時間がかかるようになるにつれて、問題が難化してきました。
 また、保護者の中には、入試問題の採点結果を開示するように要求する人も出てきました。
 ところが、実際には、記述問題や作文問題で、厳密な客観的採点などはできません。

 それやこれやで、何しろ問題を難しくして、合否の境界をはっきりさせようということになったのだと思います。
 今の公立中高一貫校の入試問題は、私立中学の入試問題とあまり変わりません。
 数学の問題は、訓練をしないと解けないような難問になっています。
 また、どの教科も問題量がかなり多く、これもスピードを上げて解く訓練をしないと解けない問題になっています。
 考える良問どころか、受験勉強に特化した練習をしなければ対応できない問題ばかりが出されるようになってきたのです。

 しかも、それにもかかわらず、合否の妥当性があまりないような結果が出ています。
 よくできる生徒が落ちたり、それほどでもない生徒が合格したりしているのです。

 小学6年生のほとんどにとって、受験というのは人生の初めての経験です。
 その受験で、倍率がかなり高い学校を受験するのですから、落ちる子の方が圧倒的に多くなります。

 不合格はそれなりに人生の試練として受け止めることもできますが、それよりも、子供たちにこれからの人生を切り開いていく自信をなくすような影響を与えています。
 最初の大きな失敗で、自分の夢もほどほどにしようと思うような子になりがちなのです。
 今の若者に夢がないということを言う人がいますが、それは夢を早めに諦めさせる社会になっているからだと思います。

 学習塾によっては、公立中高一貫校受験だけでは心配だから、私立も併願した方がいいとすすめるところも出てきます。
 その結果、何のために公立中高一貫校の受験を目指したのかわからないような勉強になってしまうことも出てきているのです。

 受験は、勉強の目標を作るという点では大きな利点があります。
 小学5年生になると、どの子も勉強に対する向上心のようなものが育ってきます。
 しかし、今の学校は一斉の授業で勉強するようになっていますから、実力のある生徒にとっては学校の勉強だけでは退屈します。
 だから、受験を目標にして勉強するというのは、本当は子供たちの成長にとってプラスになるのです。

 では、どうしたらいいかというと、最初から合格しなくてもいいということをはっきりさせた上で、自宅中心の受験勉強をしていくことです。
 言葉の森では、今、発表学習コースというオンライン講座を行っていますが、これも、受験に対応できるような高度な勉強を楽しむという姿勢で行っています。
 そういう勉強で本質的な学力をつけておき、中学3年生の高校受験でがんばるようにするといいのです。
 というのは、中学3年生になると、受験は失敗しても成功しても、それぞれそれなりに人生にとってプラスになるぐらい、子供たちは精神的に成長しているからです。

 ただし、この高校受験で思うようなところに行けなくても心配することはありません。
 中高一貫校の利点は、数学の勉強を通常よりも1年間又は2年間先取りするので、大学入試の最後の1年間の受験勉強が有利になることにあります。
 そのため、公立高校で学校の授業に合わせて、高3で高3の勉強をしている生徒は、1年間のハンディを持って大学入試に臨まなければなりません。

 しかし、今はスタディサプリのように、独学で学校の勉強を先取りする機会が持てるようになっています。
 小学校時代から、家庭での自学自習の習慣をつけておき、家庭で独自に教材を選び自分のペースで勉強する体制を作れば、学校のペースで勉強するよりもずっと密度の濃い能率的な勉強ができます。

 多くの家庭で、家庭学習が行き詰まってくる学年は小学4年生あたりです。
 小3までは、親の言うことを聞いて勉強していた子が、小4になると自分の意思で勉強したくなるので、親とうまく行かない場面が出てきます。

 また、小4になると、算数の勉強に少しずつ考える要素が出てきます。そして、小5になると、算数も理科も急に難しくなり、小6では更に難しい問題が出てくるようになります。
 しかし、これらの入試に対応した難問は、パズルのようなものですから、解き方を覚えて解く訓練をすれば誰でも解けるようになります。
 難問を解くことによって、頭がよくなるというような性質の問題ではないのです。

 小学4年生からは、本人の自主性を生かしながら勉強し、必要以上の難問は避けて先に進むという勉強スタイルを決めておけば、家庭学習を継続させることは難しくありません。
 したがって、異常な難問は避けながら、家庭で自分のペースで勉強し、学校の勉強よりも算数を1年間先取りしておくというのが、これからの理想の勉強スタイルになると思います。
 自分ひとりで独自の道を歩むのは、親も子も不安が多いと思いますが、そういう選択をすることによって大きくなってからも自分らしく生きるという姿勢が育っていきます。

 ただし、勉強の仕方は家庭によっていろいろあって当然です。
 中学で受験しても、高校で受験しても、どういう形でも決めた方針で最善を尽くせばそこから得られるものは必ずあります。

 いちばん大事なのは、親が、その道しかないというような狭い思い込みで子供の勉強に臨まないことです。
 合否を目的にした勉強では、もちろん合格を目指して真剣に取り組まなければなりません。
 しかし、心の奥で、人生は長いのだしそれ以外の道はいくらでもあるという気持ちの余裕を持って子供の成長を見守っていくことが必要なのです。

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公立中高一貫校受験向けの勉強法(その1)
https://www.mori7.com/index.php?e=2140
●説明文を読み取る力をつける
 公立中高一貫校の問題は、ほとんどが文章と図表で書かれています。だから、これらの説明的な文章を読む力が必要になってきます。
 ところが、子供たちが行っている読書のほとんどは、物語文です。つまり、ストーリーに沿っていれば理解できる易しい文章を読んでいることが多いのです。
 物語文の中には、会話だけでストーリーが成り立つようなものもあります。読む力をつけるために大事なことは、ストーリーの面白さだけでなく、地の文の説明がしっかり書かれている本を選ぶことです。
 また、物語文だけでなく説明文を読む機会を増やしていくことも大切です。昔、シミュレーションゲームの攻略本などは、小学生の読む説明文の導入的な文章として効果がありました。今はそういうものはあまりありません。
 現代では、それぞれの子が、その子の趣味に合わせた説明文の本を、図書館を利用して探していく必要があります。例えば、男の子なら、電車の本や恐竜の本、女の子なら、料理の本や、ファッションの本などになるでしょう。
 更に、ストーリのある説明的な文章として、伝記の本を読むのもおすすめできます。
 しかし、最も効率的なのは、理科や社会の参考書、そして、国語の入試問題集、更には公立中高一貫校の入試問題集を読書がわりに読んでいくことです。
 これらの説明文をばりばり読みこなしていく力が、公立中高一貫校受験向けの基礎学力です。
●教材の選び方
 公立中高一貫校受験の勉強として、最もよい教材をひとつ挙げるとすれば、それは全国の公立中高一貫校の過去問題集です。どんな勉強も、まず原典にあたることが大切です。
 多くの人は、公立中高一貫校受験向けの問題集や参考書や学習塾に頼ろうとしますが、そのようにワンクッション置いたものではなく、直接過去問にあたることが大切です。
 この考え方は、社会に出てからも役に立ちます。例えば、会社の仕事でも、何か問題があったときには、まず現場に行ってみることです。現場に行かずに、他人からの説明を聞いていたのでは、わからないことが必ずあるからです。
 最もよい教材が、1年前の過去問だとすると、次によい教材は2年前の過去問です。要するに、過去問に直接あたることが、教材選びの原則です。
●計算力をつける
 公立中高一貫校の受験対策で、意外と見落とされがちなのが計算力です。もちろん、計算力は、数学の力というよりも、むしろ実務の力です。計算力は、生活やビジネスでは役に立ちますが、学問に役立つというわけではありません。有名な数学者でも、計算はあまり得意でないという人も多いのです。
 しかし、現実の社会生活を送る上では、正しく速い計算力は、いろいろな場面で役に立ちます。だから、江戸時代でも、読み書きと算盤(そろばん)の教育が行われていたのです。
 受験でも、この計算力はかなり重要です。特に、公立中高一貫校の算数の問題では、考える問題はパズルや図形のものに限られてくるので、理科や社会との融合問題の中で、比の計算や割合の計算が出されることが多いのです。
 このとき、割り算をするスピードと正確さにかなりの差が出てきます。誰でもできる計算なのですが、それを早く済ませられる子は、ほかの問題に時間をかけて取り組むことができます。
 割り算をのスピードを上げるには、練習によって慣れなければなりません。江戸時代には、九九のように割り算を暗唱する勉強法がありました。言葉の森でも、いつか繰り下がりのある割り算の暗唱をやっていきたいと思っています。
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公立中高一貫校受験向けの勉強法(その2)
https://www.mori7.com/index.php?e=2141
●じっくり考えて1問解くよりも、答えを見ながら10問読む
 勉強の能率で、最も差のつくのが、解く勉強法と読む勉強法の違いです。ほとんどの人は、問題を見ると、自分で解こうとします。自分で解くまでは答えを見ないという方法で、1問を解くのに時間をかける人が多いのです。
 そういう解き方ではなく、答えを見ながら10問読む方がずっと能率のよい勉強になります。
 大学入試の問題集では、問題のすぐ近くに答えの載っているものがかなりあります。それは、高校生になると自然にそういう能率のよい読む勉強法をする人が増えるからです。
 ところが、小中学生の問題集は、答えが別冊になっているものがほとんどです。これは、小中学生は勉強の自覚がまだないので、答えを写して形だけやったように見せる子がいるためです。
 だから、小中学生のときに、親から勉強の意義を理解させておく必要があります。つまり、勉強は、人に見せるためのものではなく、自分を向上させるためのものだということを、折にふれて伝えていくのです。
 そういう教え方をしていれば、塾や学校のテストで悪い点数を取ったときでも、驚くことはなく、むしろ弱点がわかってよかったと喜べるようになります。
●最後は書く力
 書く力は、言葉の森で毎週作文を書いていれば、自然に身につきます。
 書く勉強は、負担が大きいので、ひとりで続けるのは難しい面があります。もし、家庭で書く勉強をするとしたら(これは、作文のような長い文章ではなく、50字から200字の短い記述式の問題を解くときに、言葉の森で教えている方法ですが)、問題文を読んでそれに対して、150字なら150字の字数を決めて感想を書く練習をしていくことです。
 このときに大事なのは、AではなくBであるというように、対比のはっきりさせた文章を書いていくことです。
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■公立中高一貫校受験という選択(1)  3024

 10月になると、公立中高一貫校の受験作文コースを選択する生徒が増えてきます。
 作文の試験というものは、実力のある生徒でも、その日の課題によって自分がどの程度をできるのかつかめないところがあるので不安になりがちです。

 言葉の森の作文指導は、そういう不確定な作文試験に自分の実力の120パーセントを発揮できるようにすることを目標に指導しているので、10回ぐらい書く練習をすると、ある程度安心して受験することができます。

 さて、この公立中高一貫校の試験問題は、昔は確かに教科書レベルの考える良い問題が出題されていました。
 しかし、今は私立中学の受験と同じように、受験のための訓練をしなければ解けない問題になっています。
 受験生の点数に差をつけるために、時間内には解き切れないような大量の問題を出し、その中にほとんどの生徒が解けないような難問も入れてあるのです。

 これまでに受験した生徒を見ると、順当に合格したと思われる子もいますが、実力が十分にあるはずなのに不合格だった生徒もかなりいます。
 問題が特殊なので、実力があるから合格するというわけではなく、合否はかなり偶然に左右されています。
 しかも、公立中高一貫校の倍率は一般にかなり高いので、合格しない生徒の方が圧倒的に多いのです。

 だから、公立中高一貫校を受験する生徒の保護者は、最初から合格はしないつもりで受験に臨むことです。
 というのは、子供にとっては受験というものは最初の経験なので、どうしても甘い見通しを持つからです。
 また親も、実力のある子供を見ていると、つい合格が当然のように思って取り組んでしまう場合も多いのです。

 親子で、合格するつもりでハードな勉強をして、その結果不合格になると親も子もかなり消耗します。
 その結果、もっと大事な、中学での勉強を親子で協力するということができなくなってしまうのです。

 塾によっては、公立中高一貫校受験一本では不安だろうからと、私立の受験をすすめるところがあると思います。
 しかし、滑り止めのために、もともとは行く気のなかった私立を受験するというのは本末転倒です。

 公立中高一貫校が不合格だったら、近所の公立中学に行けば十分です。
 不合格であっても、受験をしたことは、勉強の密度を高める生活をするという意味でとてもいい経験になります。

 そして今は、公立中学、公立高校という選択も、かなり明るい見通しが持てるようになってきているのです。
(つづく)

公立中高一貫校受験という選択(2)



■公立中高一貫校受験という選択(2)  3026


 今は、公立中学、公立高校という選択も、かなり明るい見通しが持てるようになってきました。

 だから、公立中高一貫校の受験は、合格はしてもよいが、最初から合格しないもりで受験するぐらいに考えておくといいのです。

 なぜ、そういう姿勢でいるのがいいかというと、第一に、小学6年生はいくら本人が受験したいと思っていても、まだ自覚して勉強に取り組む年齢ではないからです。

 本人が受験を希望していても、それは友達や親の言葉に影響されて、ムードでそう思っていることがほとんどです。
 だから、合格すればそれはそれでいいのですが、不合格になったときに、それを自分の問題として受け止めることができません。
 だから、不合格という経験が自分のプラスにならないのです。

 第二に、公立中高一貫校の試験問題は、何度も言いますがガラパゴス化しているために、努力や実力に比例して合格するものではなく、合否が偶然に左右される面が大きくなっているからです。

 努力のしようがあるものであれば、全力でがんばるということは、たとえそれば失敗に終わっても価値ある挑戦になります。
 しかし、今の試験問題は、高倍率で、難問で、しかも問題数に比べて制限時間がかなり短いので、努力と成果の相関がきわめて低くなっているのです。

 ところで、これまでは、志望校に合格するかどうかということがその後の人生を大きく変えるような感覚を多くの人が持っていました。

 それは、中学生や高校生の時期は、まだ周囲の影響を受けやすいので、進学校に入ると、その進学校的な雰囲気で自然に勉強するようになるからです。
 それは、学校の教育力というよりも、周囲の友達の教育力と言ってもいいものです。

 そして、これまでは、学校以外に本格的に勉強をする場はほとんどありませんでしたから、ある学校に入ることは、その学校のレベルに合わせて勉強することにならざるを得なかったのです。

 しかし、今は、ネットワークの利用によって、学校以外に勉強できる場が充実してきています。
 本人にやる気があれば、学校に頼らずに勉強を進めていけるようになっているのです。

 また、公立の中学、高校も、独自の改革を進めているところが多くなっています。
 私立が優れているのは、受験生を集めることができるトップ校までで、そうでない私立校は、今後少子化の影響で財政的な余裕がなくなるという点で、公立よりも教育環境が不利になることが考えられます。

 このように考えれば、近所の公立中学に進み、その後公立高校に進むということは、いい選択肢だとも言えます。

 公立中高一貫校を受験するような生徒は、どの子も優れた実力を持っています。
 だから、努力と成果の相関が低く、偶然の合否に左右される面の強い入試であまり消耗しないように、親は大きな目で余裕を持って受験に取り組んでいくとよいと思います。

公立中高一貫校受験という選択(1)



■受験に取り組む際に大事な三つのこと  3061


 受験生の保護者が、子供と一緒に受験に取り組む際の大事なポイントは3つあります。

 第一は、保護者が受験の合否に対する耐性をつけておくことです。
 合否はその後の人生に大きな影響を及ぼすように思われがちですが、そういうことはありません。
 合格不合格にかかわらず、その子のその後の生き方がすべてです。
 合格してよかった子もいれば悪かった子もいるし、不合格になってよかった子も悪かった子もいます。大事なのは、その後なのです。
 そういう大きな視野を保護者が持っていることが大切です。
 だから、合否が決まっ翌日には、もう合否に関係なく新しい取り組みを始めていくことです。

 第二は、大きな視野を持つことと反対のように見えるかもしれませんが、親が全面的に子供の受験に協力する体制を作ることです。
 勝負の目的は勝つことですから、勝つという目的に徹することが大切です。
 塾に任せるだけでなく、親が志望校の傾向を分析したり、子供の勉強の重点を決めたりすることが大切です。
 受験作文については、事前に作文課題に関する材料を親子で集め、話し合い、作文が返却されたらそれを親子でよりよく書き直しておくことです。
 こういう形で10問ぐらい志望校に合った練習しておけば、どういう課題が出ても、それまでに練習した作文の題材と表現と主題を組み合わせて構成を考えることができます。

 第三は、その志望校についてですが、受験する学校の過去問を独自に分析しておくことです。
 学習塾によっては合格可能性を測定するために、受験の直前になるまで過去問をさせないところがありますが、これは本末転倒です。
 過去問の研究は、受験の1年前から始めていくのが原則です。
 これは、高校入試でも、大学入試ても同じです。
 大学入試の場合は、高2から高3になるときの春休みに、志望校の過去問を答えを書き写しながらでいいので、全部解いておくことです。
 それでこそ、1年間の受験勉強の作戦が立てられるのです。
 先に過去問を研究して、自分の弱点を補強するという対策を取るのが、最も効率がよい勉強の仕方です。

 しかし、実は、以上の三つと正反対のことをしている保護者がとても多いのです。
 それでも、合否はある確率で決まりますから、正反対の勉強の仕方をして合格する人はたくさんいます。
 だから、いまだに、合否は人生の岐路、受験は塾や予備校にすべてお任せ、過去問は最後の仕上げと考えている人も多いのですが、それはよい勉強法とは正反対の勉強法なのです。



■作文の字数配分と時間配分のコツ  3114


 受験作文コースの相談会で、次のような質問がありました。
「書くスピードはついてきたが、実例が長すぎて、意見が短くしか書けないことがある」。
 こういうケースは、よくあります。

 しかし、これと反対に、実例が短すぎて、意見が長くなってしまう子もいます。
 意見の部分が長くなると、同じことを繰り返すようなまとめ方になります。
 そうすると、密度の薄い作文になってしまいます。

 作文試験という場になると、受験生は早く書き上げたいという気持ちが出るので、全体のことをあまり考えずに書き出しがちです。
 すると、実例の部分を書いているうちに、だんだん全体の見通しを忘れてしまうことがあるのです。

 この問題を解決するには、構成を意識して書く習慣をつけることです。

 具体的には、自分が書く文章の段落の数を4段落とか3段落とか決めておき、それぞれの段落の字数の見通しとなるところに、薄く線を引いておくのです。
 できれば、そこに目標とする時間も書いておくと安心です。

 800字の作文全体で、字数を時間をコントロールするのは大変ですが、200字ずつの4段落を目安にすれば、字数も時間もずっと把握しやすくなります。

 そうすると、ある段落が長くなってしまった場合、次の段落を短くするというようなやり方で対応していくことができます。

 気ままに書く文章と、作文試験で書く文章の違いは、ここにあります。
 試験とい限られた時間で、失敗しない作文を書くためには、全体の構成を意識して書くことが必要なのです。

 普段の作文の練習は、この全体の構成にあてはめる、実例や表現や意見のストックを作っておく練習と考えておいてください。

 作文試験の本番で、自分がそれまでに書いた作文の中から、一つでも入れられそうなものを思いつけば、作文はかなり書きやすくなります。
 2つか3つ思い出せば、それだけで自分の実力の百パーセントを発揮できるようになります。

 試験の時期まで1か月を切るようになったら、新しい作文を書くよりも、これまでの作文のを何度も読み返し、同じテーマで同じことが時間内に書けるように練習し、作文の構成力を付けてていくといいと思います。



■受験作文は、構成の示してある模範解答で練習すれば誰でも書けるようになる  3330

 言葉の森の模範解答には特徴があります。
 それは、書き方のパターンをいくつかに絞って書いていることです。
 そのため、子供たちは、書き方の解説を見て、自分でも同じように書けるようになります。

 世間にある受験作文小論文の参考書の模範解答には2種類あるように思います。
 ひとつは、専門家があたりさわりのない模範解答を書くことです。

 この場合は、減点のない解答ということが目的ですから、抽象的な説明が中心になります。
 これは、模範解答とは言っても、不合格にならないための模範解答です。

 中学入試の作文試験でも、最初のころはこういう模範解答のような作文を書く受験生が多かったのだと思います。
 そのため、今の作文試験では、ほとんどが、「あなたの具体的な体験をもとにして」というような条件をつけて書く形になっています。
 この場合、あたりさわりのない模範解答はあまり役に立ちません。

 もうひとつの模範解答は、子供が実際に書いたものでよく書けたものをまとめたものです。
 これは、確かに具体的な実例も入っているので、作文試験で合格するような内容になっています。

 しかし、これを見て、自分でも同じように書けるかというと、そういうことはありません。
 上手に書けた作文を見ても、それで自分でも上手に書けるようになるというわけではないからです。

 上手に書けた作文をいくら見ても、では自分がどういうふうに書いたらいいのかということがわかりません。
 それは、パターンが絞られていないからです。

 では、パターンとは何かというと、それは構成の仕方です。
 構成の方向がわかれば、子供たちはそこに自分らしい実例や表現を感想を盛り込んで書くことができます。
 この、実例や表現や感想が、その生徒の実力となる部分で、その実力を伸ばすために、問題集読書や、事前の準備や、事後の推敲があるのです。

 大事なのは、模範解答としてただ上手に書けた作文を見せることではなく、子供たちがどう書いたらいいかを示すことです。
 模範解答は、子供たちが作文を書きやすくするためにあるものだからです。

中学入試ハイパー作文6.2週
https://www.youtube.com/watch?v=uFHCjFptSqs


高校入試ハイパー作文6.2週
https://www.youtube.com/watch?v=8qJz-Yx82xU
 















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