KotobanomoriNo.743

言葉の森新聞

2002年1月2週号

文責 中根克明(森川林)

  幼長用の長文集は読み聞かせで

 幼稚園年長で言葉の森を受講されている生徒は、長文音読が自分ではまだ十分にできないと思います。その場合、お母さんが読み聞かせをしてあげるということで、耳から長文を聞くようにしていってください。

 読書と読み聞かせの効果は、ほとんど同じです。よくある誤解は、読み聞かせをしていると自分で読めなくなるというものです。これは反対で、読み聞かせをたっぷりしてもらった子ほど、自分で読むことも好きになります。

 これはもちろん、小学校低学年の生徒の場合にも当てはまります。

  低学年の長文音読は半ページずつでも可

 学年によって、長文が急に難しくなる時期があります。今回は、小学2年生が急に難しくなったので、何人かの保護者の方から、問い合わせがありました。

 難しくなったとは言っても、わずか8ページの長文集を3ヶ月かけて読むわけですから、毎日気長に読んでいれば、必ずどの子もすらすら読めるようになります。

 しかし、最初の数回は、読めない漢字があったり、難しい言葉があったりで、読み切るのに時間がかかることもあります。そういうときは無理をせずに、1ページではなく、例えば10行だけ読むというように課題を易しくしてもかまいません。

 そして、子供が読み終えたら、「こんなに難しいのを読めるなんてすごいね」と、いつもほめてあげるようにしてください。

 親が、「こんなに難しいの読めないのではないか」「嫌がっても仕方ない」とためらっていると、そういう気持ちが子供に伝染してしまうようです。反対に親が「こんなに難しいのを読むなんてすごい」と明るい気持ちで考えていると、やはりその気持ちも子供に伝わります。

 勉強はすべて、「難しい→嫌」ではなく「難しい→すごい」という対応で取り組んでいくのがコツです。子供というよりも人間は、もともと挑戦意欲のある生き物ですから、明るい気持ちで難しい課題に取り組んでいくと、上達も早くなります。

  長文継続のコツは、間違って読んでいても、ほめる

 小学校低中学年のうちは、読み方もあまりうまくなく、間違って読んだり、一度教えたことをいつまでも覚えなかったりということがよくあります。

 そのときに、親は、「今直さないと、一生この間違った読み方を覚えてしまうのでは」と思い、すぐに注意をしようとします。これは作文についても同様です。間違った書き方をしていると、やはり、「今直さなければ、一生この間違った書き方を覚えてしまうのでは」と思い、まず注意をしようとします。

 ところが、これらの間違った読み方や書き方は、親にも先生にも誰にも教えられなくても、学年が上がるにつれて自然に直るものです。実際には誰かに教えられたことがきっかけで直るということもあると思いますが、それよりも、ほかの人の読み方を聞いたり、読書などでほかの人の文章を読んだりする中で自然に直っていくものです。

 注意してもしなくても、間違いはいずれ直ります。とすれば、注意することによる大人の疲労と子供の嫌気の方が、大きな問題です。

 長文音読が続かない原因の多くは、親が注意して子供が読むことを嫌がるようになるというものです。逆に考えれば、長文音読を続けるためには、子供が読むたびに親が感心してほめてあげればよいということになります。そして、できれば、その長文の内容に関連して連想した似た話や体験を、親が子供に楽しく話してあげてください。長文をもとに、親子の雑談が始まるという感じで勉強ができれば、長文音読は親にとっても子供にとっても楽しい時間になると思います。

  ミスプリント

 小2「ケヤキ」の長文週3.3週「ふいに、わたしは」で、上の段と下の段で同じ行が重複していました。一方を消して読んでください。m(__)m

 

  「中学生の自宅学習法」より

 中学生の勉強法の本としては、「中学生の自宅学習法」(内藤勝之著・産心社)がおすすめです。

 教室に来ている中学生に、ときどきこの「中学生の自宅学習法」をすすめます。どの子もこの本を読むと、読むだけで勉強ができるようになる気がするようです(笑)。それぐらい勉強の仕方のコツが具体的に書いてあります。

 しかし、ほとんどの子は最初はこの本に書いてあることを実行しようとしますが、その内容を十分に自分のものにしないうちに、やがて従来の能率のよくない自己流の勉強法に戻ってしまうようです。

 「見える学力・見えない学力」という本もそうですが、内容の濃い本は、ときどき取り出して読み、自分の現在の勉強法と比較しておく必要があります。

 

 さて、この本で、中学生の反抗期について参考になることが書かれています。

 中学2年生の1年間は反抗期の時期と言われています。著者の内藤氏が自分の塾に来ている生徒で調べたデータによると、次のような結果が出たそうです。

(A)特に大きな変化が見られず、そのまま同じように成長していった生徒……40人

(B)動作や言葉づかいが乱暴になったがそれほど問題は感じられなかった生徒……40人

(C)まったく別人のように変わり、反抗的態度を強く示すようになった生徒……39人

 つまり、3分の2ぐらいの生徒が反抗期を経過するようです。

 この反抗期には一般則はないようで、親の育て方や子供の成長の仕方などとの関連はないと言われています。よく反抗期に十分に反抗していないとあとで困るという話も聞きますが、そういう法則もあるかどうか不明です。自分のことで言うと、私(森川林)は、自分で言うのも何ですがすごく素直な中学生でした。反対に4歳上の兄はかなり反抗的な中学生だったようです。しかし、いずれもまともに生活しています。(たぶん)

 この反抗期の時期は1年間で過ぎ、中学3年生になるとどの子も元に戻ります。ですから、反抗期は嵐のようなもので、親や教師は最低限の注意はするが基本的には静かに見守っているという対応の仕方がいいようです。

 しかし、この反抗期の時期に勉強の習慣が途絶えてしまうと、あとで回復することが難しくなる教科が出てきます。内藤氏は、その最も典型的な教科を英語だと述べています。

 英語は勉強量に比例して成績が上がる面が強い教科ですから、一般に真面目に勉強している生徒は英語がよくできます。この英語でいったん差がついてしまうと、あとで追いつくのはやや苦労します。

 中学3年生や高校生で英語が苦手になっている生徒は、本当は、中学1年生の教科書に戻って勉強しなおせばいいのですが、そこまで戻る決心がつかないまま、ずるずると英語を不得意教科にしてしまう傾向があります。

 ですから、中学生の子供が反抗期になったときの対応の仕方は、(1)注意は最低限に、(2)静かに見守り、(3)英語の勉強だけは継続させる、ということになると思います。こういうふうにうまく行けばいいのですが……(笑)

 

 さて、その肝心な英語の勉強法ですが、内藤氏は次のように書いています。

(1)教科書を声を出して繰り返し読む

(2)基本文や単語は、口で唱えながら書いて覚える

 まったく単純な勉強法だと思われると思いますが、実はこういう単純なやり方がいちばんいいのです。

 市販の参考書や問題集は、文法的なことが前面に出すぎているように思います。文法は大切ですが、基本的なことを押さえておけば、中学生のころはそれほど文法的な知識を細かく強化する必要はありません。それよりも、教科書の英文をまるごと覚えてしまった方が、英語が得意教科になります。

 もちろん、この教科書の英文暗唱も、中学1年生の教科書からやっていくことが大切です。中学1年生の教科書では易しすぎると感じて省略してしまいたくなりますが、この易しいところに重要な基本が盛り込まれているからです。

 大人も子供も、勉強というと、スポーツのような反復練習ではなくもっと知的にスマートにやりたくなるようですが、勉強もスポーツも芸術も、上達のコツは同じです。基本を徹底して繰り返し体で覚えてしまうことです。

 

 

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