1997年1〜3月 第12週号 通算第517号 言葉の森 

言葉の森新聞

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  文章上達のコツは基本の反復

文章を書く力は、英語や数学の勉強とは性格が異なります。文章力を上達させる練習は、スポーツや音楽の練習に似ています。理屈がわかるだけでは不十分で、その技術を自分の身体の一部のように自由に使えるようになってはじめて書く力がついてきたと言えます。

作文の勉強のいちばんよい方法は、ですから、昔から言われているように、たくさん読み、たくさん書き、たくさん直す、です。この中でも、特に大切なのが「たくさん読む」です。

しかし、ただいろいろなものをたくさん読めばいいのではありません。内容の上でも、表現の上でも、自分の手本にしたいと思う文章を少数選び、それらを何度も反復して読んでいくことが重要です。いま、皆さんがやっている長文の音読は、そういう意味を持っています。

文章で大切なものは、もちろんその中身です。しかし、中身以前に、表現力が不十分であるために、中身そのものがうまく伝えられないという書き方をする人も意外に多いのです。

小学生で正しい表記ができない人、中学生で主語と述語のねじれた文章を書く人、高校生で語彙が豊富でない人などは、読む量が不足しています。

上手に書く技術や、深く考える技術はたくさんありますが、まず読書の足腰を鍛えることを優先して勉強していきましょう。

  ワンポイントレッスン

  題名の工夫

作文課題集に載っている題名を、自分なりに工夫して書いてみましょう。

いつも、「今日のこと」という題名では、あとから見たときに何を書いたのかわかりません。中身が分かるような題名を書くことが大切です。

しかし、「遠足に行ったこと」や「海に行ったこと」や「友達と遊んだこと」などという題名では、少しものたりない気がするでしょう。

その作文のいちばん中心になるところを選んで「○○な○○」というかたちで題名をつけてみると、いい題名になることが多いものです。例えば、「大雨の遠足」「冷たかった海」「大好きな○○君」という感じです。

中には、工夫しすぎて、「やったー!」「チョー最高!」「ガックリ……」などという題名を書く人もときどきにいますが、題名は、やはり中身がわかるように書くことが大事です。

このように、題名を工夫する場合、はじめに仮の題名で作文を書いておき、作文を全部書き終えたら、その作文の内容に合わせて題名を書き直すという順序で書くとよいでしょう。

  複数の理由

自分の意見を書いたあとに、その意見を展開するための複数の理由を書く練習があります。このとき、「先生、二つも理由が見つからない」という人がよくいます。

理由を見つけるためにいちばん大事なことは、自分が本当にその意見を書きたいのかということです。心から書きたい意見であれば理由は見つけやすくなります。

次に、意見を書く際に、「私は、Bではなくて、Aがよいと思う」と、必ず、自分とは反対の「B」という意見を想定してみましょう。そうすれば、Bの意見を主張するBさんと対話するつもりで理由を考えることができます。

理由の書き方には、いくつかのパターンがあります。「Bではなくて、Aがよいと思う(例えば、漫画を読むよりも読書をしよう)」という意見の場合は、

  1. Aがよい理由(読書のよい理由)
  2. Bがよくない理由(漫画のよくない理由)
  3. Aでないことがよくない理由(読書をしないことのよくない理由)
  4. Bでないことがよい理由(漫画を読まないことのよい理由)

の四つが考えられます。あてはめてみると、それぞれ新しいアイデアがわくと思います。

  文末の工夫

読書量の少ない人は、論説文を書くと、文末がワンパターンになってしまうことがあります。

日本語は、英語などと違い、文末が同じかたちになりやすいという特徴を持っています。そのため、話し言葉などでも、文章のように喋ることがしにくく、「……であるからして、……ということで、……というふうにも言えますが、……という考えで行きたいと、」と文末に至らずに延々と話が続くパターンが多いのです。

こういう人が、文章の上で文末を作ると、いつも同じように「……である。……である。……なのである。……だったのである。」となってしまうことが多いようです。

文末を変化させるコツとして、いろいろなかたちの結び方を覚えておきましょう。

……だろう。

……と言いたい。

……かもしれない。

……ではあるまい。

……に違いない。

……のはずだ。

……と言ってもよい。

……と考えられる。

……ではないだろうか。

……とも言える。

など、など。

 しかし、もちろん、いちばん大切なのは、文章の中身です。

  合格速報

●TH君……神奈川大学 法学部

●HNさん……関東学院短大 家政学部

●MA子さん……大妻女子短大 家政学部

●YA君……慶應義塾大学 商学部、立教大学 法学部

受験がおわった人は、やっと一息つけますね。大学に入ったら、難しい本をたっぷり読みましょう!

  12週は清書です

第12週は、清書です。担当の先生のアドバイスを参考にしながら、返却された作文の中から自分でいちばんよいと思うものを選んで、水色の罫線(けいせん)の原稿用紙(以下、清書用紙と呼ぶ)に清書してください。清書の仕方は、課題集の中の「学習の手引」に書いてありますが、大事なことは、原稿用紙の一枚めの左上に小さく自分の生徒コードを書いておくことと、名前を載せてほしくない人は、表には名前を書かずに裏に書いてよいということです。また、清書用紙の空いているところには、絵などを書いて楽しい清書にしてください。

この清書は、全員の分を4月から5月にかけて発行する「広場」に掲載し、そのあと新聞社に送ります。

今回、返却した作品は、2月にみなさんが書かれたものです。返却された作品の中に、清書するのにふさわしいものがない場合は、直接新しい作文を清書用紙に書いても結構です。