1997年7-9月 第5週号 通算第533号

言葉の森新聞

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  第5週は作文のテストです

第5週は、作文のテストを行ないます。このテストでは、全員の作品をその学年に応じた同じ基準で採点します。項目ができているだけでなく、中身のよさも点数に入りますから、題材をよく考えて書いてください。書き方は、ふだんの作文の書き方と同じです。

  生徒別のチャットコーナーを広場別に

現在、体験学習中の生徒も含めて、生徒数が急増したために、インターネットに設置している生徒別のチャットコーナーの動作が多くなり、プロバイダーのサーバーに負荷がかかるようになってきました。先日23日にはCGIが一時停止してしまいましたので、24日から生徒別のチャットコーナーを休止します。

そのかわり、近いうちに広場別(学年別)のチャットコーナーを作りますので、お喋りやほかの人の作文を読んでの感想などはこの新しいチャットコーナーでお願いします。

  書く意欲は読書に支えられる

「書くことがない」「なかなか書き出せない」という人の書けない原因の多くは、読書量が少ないことです。

読書はふだんの食事と同じように、毎日欠かさず続けていくことが必要なもので、「今日は1週間分をまとめて食べておこう」というようなことはできません。

読書を通して、身につくものはそこに書かれた素材だけではありません。読書は、その本に書かれていることを通して自分も何かを考えたくなるという、いわば問題意識のもとも提供してくれるのです。

昔の人は、「一日、本を読まなければ、一日、人相がわるくなる」と言いました。人間の意欲や決心や薄れやすいものです。日々価値ある本を読んで、日々問題意識を新鮮に保つようにしておきましょう。

  難しかった? 自習テスト

読む力、書く力をつけていくいちばんの勉強方法は、難しい文章をくりかえし読んで自分のものにしていくことです。そのためには、自習の「漢字・短文・長文・読書」を毎日続けていくことが大切です。

しかし、これまで、生徒の中には自習がかたちだけのものになって人もいたようです。つまり、漢字は「ただ書くだけ」、短文も「ただ写すだけ」、長文も「ただ眺めるだけ(笑)」、読書は「軽い本を読むだけ」というような、心のこもっていない外見だけの勉強になっていた人が少なからずいたということです。ですから、毎日短文の筆写はやっているがなかなか暗唱できるようにならないとか、毎日長文は読んでいるがなかなか内容を消化できない、という人が多くいました。

人間を含めてすべての生き物は、与えられた目標を達成するためにいちばんエネルギーを節約できるやり方で取り組みます。ところが、勉強に関しては、このエネルギーを節約するやり方は、効果が上がらないことが多いのです。勉強で大切なのは、勉強らしい外見ではなく勉強そのものです。(どこかで聞いたような……)

自習を中身のあるものにするために、今学期から、自習の日数そのものを評価するかたちをなくし、自習の定着度を自習テストで評価するというかたちにしました。第4週の自習テストは、はじめてということもあり、かなり難しかったようです。特に、漢字はその学年でまだ習っていない字が出たので書けない人も多かったと思います。今後、改善していきます。長文の問題は、次回第8週から、長文をふだんから読んでいれば解けるような問題にしていきたいと思いますので、全部で8ページある長文を読んで内容をよく理解しておいてください。短文は、短文集の1ページ目から出題します。(短文集は4ページ分あります)。1ページ目の短文を何度も読んで文のつながり方を覚えておきましょう。

  コンピュータ社会の現状と今後

NTTがこの夏から、INSライトという商品を発売しました。これは、これまでアナログ回線をデジタル回線に変更する際に必要だった初期の設置費用を毎月の料金に入れることで、初期投資を軽くしたものです。

現在、パソコンでインターネットに接続している家庭では、お父さんがインターネットにパソコンをつなげている間、家庭の電話がつながらないなどという問題がありました。言葉の森でも、先生が生徒に電話をしてもずっと話し中で、あとで聞いてみたら「お父さんがインターネットを使っていたから」ということが何度かありました。しかし、INS64というデジタル回線では、1回線で2回線分の通話ができるので、これを導入すれば今後このような不便はなくなります。INSは今後かなり広く普及していくと思います。

また、これとは別に、OCN(オープンコンピュータネットワーク)にアクセスできる範囲が急速に広がっています。言葉の森のある港南台でも、この10月から(ほかの地域よりもやや遅れて)OCNにつなげられるようになります。このOCNエコノミーというのは、毎月38000円という定額で、インターネットに常時接続できるというサービスです。通話料もプロバイダへの接続料もいっさいかからないのですから、長時間利用する人には便利なサービスです。そしてたぶん、通話料を気にせずに常時接続できるということになると、インターネットの役割も飛躍的に変化してくると思います。「ちょっとわからないことがあるけどだれに聞いたらいいかなあ」というときに、さっとインターネットで検索してみるという使い方が日常的なものになってくると思います。こうなると、家族中で使える百科事典のような役割をインターネットが持つようになるでしょう。

この定額接続は、CATVなどでも次第に導入されてくると思いますが、インターネットの技術革新が速いので、技術的にカバーできないところがまだ多いようです。

今いちばん安いパソコンは、10万円で手に入ります(「日経パソコン」夏合併号)。パソコンで本当によく使う機能はワープロとインターネットぐらいですから、今のパソコンの仕様は全体に重すぎると言われています。機能を絞れば、5万円(500ドル)で十分に使える製品は今後出てくると思います。

こういう低価格の普及品が出てくる一方で、ウインドウズNTを搭載したサーバーがパソコンにかわって今後一般の家庭にも次第に普及してくると思います。マイクロソフト社は、投資の50%をウインドウズNTの開発に向けているそうですから、このあたりの進歩も速いと思います。

今、大学ではどこでも情報処理に関する講座ができています。高校までの勉強は、人類の過去の遺産を学ぶというどちらかと言えばゆっくりした勉強でした。教科書も参考書も、お兄ちゃんのものを弟が使うというやり方で十分に勉強できました。しかし、大学での勉強は時代の先端の勉強です。コンピュータの勉強はもはや必修に近いもので、その勉強も、先輩の4年生より新しく入学した1年生の方が先端的な勉強ができるから先に進めるという、これまでの勉強のイメージとはかなり違ったものになっています。

コンピュータとインターネットの爆発的な進歩はこれからもしばらく続くでしょうから、ここ当分は、若さと時間がなければついていけないという状態が続くと思います。しかし、進歩が一段落してコンピュータとインターネットが社会に普及したときに登場するのは、やはり人間の世界です。

コンピュータの進歩は、よく自動車の進歩の歴史になぞられます。ハイウェイがはりめぐらされることによってアメリカの自動車社会が急速に発展したように、OCNやCATVなどのネットワークのより低価格な普及によってパソコンを利用した文化は急速に広がっていくでしょう。

自動車が登場したばかりのころは自動車を運転できるというタクシーの運転手が、今の飛行機のパイロットと同じような憧れの職業で高い評価と収入を得ていました。コンピュータが発展しつつある現代ではコンピュータを動かせる人が、どの企業からも求められています。

しかし、コンピュータそのものに携わる仕事の寿命は短いと思います。今の自動車はエンジンの仕組みなど何も知らなくても自由の乗り回せます。パンクしたときのタイヤの交換の仕方を知らなくてもJAFに電話をすればすぐにやってきてくれます。コンピュータの勉強が覚えることが多く複雑なのはまだコンピュータという製品が十分に仕上げられていないためです。

私もこの春、インタラクティブなホームページを作るために、CGIやPERLという比較的簡単なプログラムの本をどっさり買ってきましたが、今はこういうプログラムを作ることそのものが、プログラム言語を覚えるという長い困難な勉強をせずに、より直感的にマウスであっちからこっちに引っ張ってくるというような安易なやり方でできるようになりつつあります。そして多分、こういうやり方のほうが今後主流になるでしょう。

となると、大事なのは、コンピュータを動かすことよりも、それを動かして何をするのかという目的の方です。

この数年のうちに、コンピュータとインターネットの普及によって、金融、流通、教育などさまざまな分野でこれまでとはまったく違った新しい波が起こってくると思います。その波に流されないようにコンピュータやインターネットの流れを把握しておくことは大切ですが、より大切なのは、その波が引いたあとにどういうビジョンを持って新しい文化を作っていくかということです。