1997年7-9月 第10週号 通算第537号

言葉の森新聞

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  ホームページを更新しました

8月中更新が滞っていたホームページをひさびさに更新しました。CGIというプログラムに動作がうまく行かないところがあったので、いったん生徒全員のページを削除して、再度作り直して掲載することにしました。

夏休み中に言葉の森のホームページをごらんになった方も多かったと思いますが、ページが削除されていて見られないところも多かったと思います。大変申し訳ありませんでした。

インターネットの普及は急速に進んでいますが、その分、接続しにくくなるところも出ているようです。言葉の森の「検索コーナー」などは夜間の混み合っている時間になると、なかなか動作しないことがあります。掲示板やチャットコーナーなども、発言のボタンを押してもその情報が接続されるまでに時間がかかるようになりました。今後、もう少し早く表示できるように改善していきたいと思います。

  第9週の手紙課題について

第9週で、小学校3・4年生は「おじいちゃんおばあちゃんへの手紙」を書く練習をしました。この書き方の説明が不十分でしたので、事後になりましたが説明します。おじいちゃんやおばあちゃんは、孫からの手紙をもらうとうれしいものです。その際に書く内容は、基本的には作文を書くのと同じです。おじいちゃんおばあちゃんに、今自分がしていることや最近あった出来事を知らせるつもりで書いていけばいいのです。

したがって、書き方は次のようになります。書き出しは「おじいちゃん、おばあちゃん、お元気ですか。ぼく(わたし)も元気です。」となります。ただし、相手が病気であることがわかっているような場合は「お元気ですか」とは書きません。手紙の中心は作文と同じです。「この間、こんなことがありました。」という話を、そのときの会話やたとえなどを思い出して書いていきましょう。手紙の結びは「それでは、おじいちゃん、おばあちゃん、お体を大切に。」というかたちです。

手紙を書くうえで大事なことは、書き出しと結びはパターンとして同じ形式で書いてしまうということです。手紙作文は、大学入試でもときどき出ます。高校生以上の人は、「拝啓」「敬具」なども使えるように手紙の書き方を覚えておきましょう。

  第10週の課題のヒント

「端的」

 お話とは声によって伝達される文学である。お話は昔話などに求めることができる。昔話は、文学のもとのかたちと言ってよく、大きな力がかくされている。

 似た話は、子供のころお母さんに聞かせてもらった「ももたろう」や「うらしまたろう」の話の懐かしさなど。

 感想は、「昔話は人間の心のふるさとだ」というところで。例えば、「正直者が報われる」や「弱い者にはやさしく」などの価値観は、道徳的に説明されるよりも昔話を通して自然に文化の中に根づいていくと考えられる。

 ことわざは、「101、燈台下(もと)暗し(身近な昔話に実は大きな力が秘められている)」「130、三子(みつご)の魂……(小さいころに聞かされた昔話などがその子の価値観や人生観・世界観の基礎となる)」など。

「二十年前」

 日本人は、日本文化は外国人にはわからないという迷信を持っている。アメリカ人は、アメリカ文化は全ての国の人に通じるはずだという迷信を持っている。それぞれの立場に悪意はないが、相互理解の妨げになる。

 意見は、「自分の考えが唯一のものと考えない視野の広さを」とするのであれば、反対理解は「他人にわずらわされず自分の世界を深く掘り下げていくのも大切だが」。または、「日本文化の閉鎖性を脱却し国際化を」と考えるのなら、反対理解は、「それぞれの文化の独自性を尊重することも大切だが」

 名言は、「18、行動するためには……(外国人にはわからなくてよいとする考えが日本文化を深めている、またはすべての人にわかるはずという考えがアメリカ文化を世界中に広めている)」「32、上天気の日に……(人間はともすれば目先のことしか見られない)」。ことわざでは、「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」など。

  英数国理社にも力を入れていきます

作文の勉強は、考える力をつけるという点で最も大切な勉強であると私たちは考えていますが、知識や技能を習得する教科の勉強も基礎学力をつけるという点で同じように大切なものです。

本来、教科の勉強は学校でしっかり学んでいればそれで済むはずのものですが、現在の教育体制では、根幹のところに時間を割かず枝葉の部分に時間をとられがちなので、学校の勉強だけでは学力は不十分になりがちです。

今、高校中退者の増加が社会問題になっていますが、その原因の多くは基礎学力の低下にあると言われています。先日朝日新聞の投書欄で、現職の高校の校長先生が「小学校では、理科や社会などやらなくてもいいから、何しろ国語の読み書きと算数の計算だけをしっかり身につけて卒業させてほしい」と訴えていました。

しかし、当の小学校では、家での勉強をほとんどしない子もいれば、中学受験をするために学年より先の勉強をする子もいます。もし、小学校の先生が、基礎学力を身につけさせるために読み書きと計算だけを重点にした授業を行なうとすれば、逆に授業が退屈でしょうがないという生徒も出てくるはずです。

ある子にとっては易しすぎ、ある子にとっては難しすぎるというのが、一斉授業の避けて通れない弱点です。この一斉授業の弱点を補うためには、学力別のクラス編制をしなければなりませんが、それも現状ではなかなか難しいようです。その結果、多くの子供は、学校の勉強だけでは間に合わずに、自分の学力に応じた学習塾に通うようになります。

しかし、学力はあるが受験のための過度の勉強をしたいわけではないという子にとって選択できるような塾はあまりありません。補習塾に入れば、授業は学校よりも退屈かもしれません。かといって進学塾に入れば、その中で必要以上の競争にまきこまれてしまう可能性があります。

このような現状を考え、言葉の森ではこれまでの作文指導とは別に、個人別指導の長所を生かした英数国理社指導も行なうようにしました。これは学校で使用している教科書に合わせた勉強を中心に、教科書よりもレベルの高い参考書・問題集を組み合わせて、その生徒の苦手なところだけを徹底して反復する勉強です。こういう勉強法は実は家庭でもできるものですが、手作業でやるとすると指導の準備にかなり時間をとられます。言葉の森では、パソコンのデータベースに個々の生徒のできなかった問題だけをそのつど蓄積して問題化する方法をとっています。これまでは、通学の生徒が中心でしたが、通信でもできるようになっていますので、くわしくお知りになりたい方はお問い合わせください。

  「山のたより」の点数表示を改善します

毎週送っている「山のたより」には、その生徒の作文の項目ごとのできぐあいが◎○△などで表示され、それを同学年の生徒のできぐあいと担当講師の甘辛度の加味した点数(平均点100点)で集計しています。

これは、勉強をするからには明確な目標が必要だという観点から行なっているものですが、現在、以下のような問題があるようです。第一は、点数のいつも悪い子は劣等感を持ちがちだということです。第二は、担当講師の甘辛度を加味しているので、甘い先生に評価されている場合は、◎でも100点以下になることがあるということです。

評価の目的は、指導に生かすということですから、子供たちの意欲にマイナスになるような面は極力少なくしていかなければなりません。今後、少しずつ評価の表示方法を改善していきたいと思います。ご意見やご希望がありましたらお知らせください。

  項目指導も改善します

言葉の森では、子供たちが作文を書く際に、書くための手がかりをつかみやすくするために、項目を中心とした指導をしています。たとえば、「そのときの様子をくわしく書こう」と言うかわりに、「そのときの会話を思い出して書いてみよう」というような指導です。同じように、「自分らしい表現を工夫して書こう」と言うかわりに「たとえを入れて書いてみよう」という指導や、「自分らしい感想を書こう」と言うかわりに「『どうして』という言葉を使って自分がそのときに疑問に思ったことを思い出して書いてみよう」という指導もしています。

こういう具体的な項目指導によって、多くの生徒は何をどういう方向で書くのかがわかり、努力する手がかりがつかめるようです。しかし、文章力のある生徒は実はこういう項目指導ではなく、「自分らしい感想を書いてみよう」というような抽象的な指導でも十分にやっていけるものです。

そこで、今後、具体的な項目指導と合わせて、よく書ける生徒にはより抽象的な指導もしていきたいと思っています。この点でも、ご意見やご要望がありましたらお寄せください。