1997年10-12月 第1週号 通算第540号

言葉の森新聞

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  新しい教材の説明

10月から、新しい学期の教材をお送りします。これまでの古い教材はかたづけて、新しい教材と混ざらないように使ってください。

第1週は、「山のたより」「広場のひとこと」「広場の清書」「優秀作品」などは送りません。したがって、作品への投票はしなくて結構です。

貸出図書は、9月10日ごろまでに前の学期の図書を返却した人に同封しています。9月17日以降に返却した人が20人近くいましたので、図書は早めに返却するようにお願いします。今回の返却期限は12月10日です。ただし、早めに返却しても新しい図書を追加して送るということはありません。貸出図書は、今後、もっと冊数を増やす方向で検討しています。貸出図書の中に国語の問題集が入っている人もいると思いますが、その問題集は、問題文を読書がわりに読むためのものです。

項目表は、その人の級(A1級、B3級などという級で、課題フォルダの右上に書いてあるもの)と連動しているものですが、現在、級が先に進み難しくなりすぎた人もいるようなので、今学期は、臨時に、学年ごとに共通の項目=級で勉強するようにします。「優秀作品コーナー」などを見て、どういう書き方をすればよいか参考にしていきましょう。

字数は、学年の100〜200倍が平均です。例えば、小学3年生でしたら、300字から600字書くのが普通です。しかし、5年生以降は、課題そのものが難しくなるとともに、考える力もついてくるので字数はなかなか長くなりません。言葉の森では、無理のないように字数は少な目に設定していますが、短い字数に慣れてしまうと、なかなか長く書けなくなるということもあります。そこで、今学期は、平均の字数よりもやや長めに書けるように練習していきたいと思います。4年生以上の人は、今学期の終わりまでに、がんばれば900字以上書くことができるという力をつけていきましょう。

課題集は、小学1、2年生は自由な題名が中心です。授業の前までに必ず書くことを決めておきましょう。小学3、4年生は、決められた題名が中心です。授業の前までに、書くことを見つけておきましょう。これまでの勉強では、「たまご料理を作ったこと」などという題名で、実際にお母さんが子供に卵焼きを作らせてそれを作文に書いたという生徒がたくさんいました。こういうふうに、事前に何かをしてから書くというかたちですと、とてもいい作文が書けるようです。お母さんやお父さんの負担が大変ですが、今後、こういう行動する題名を少しずつ取り入れていきたいと思います。第2週の「秋を見つけたこと」などは、できれば家族でハイキングなどに出かけてそこから題材を選んでくるというかたちにしてくださるとよいと思います。

第3、7、11週は感想文の練習をします。長文集は、難しい字が多く、3年生にはかなり読みにくいと思いますが、お母さんが漢字の読み方を教えてあげて毎日音読をする練習をしておいてください。全部読むのが大変でしたら、その中の数ページだけを確実に読めるようにしておくということでもかまいません。長文の音読は、表現力をつける上でも読解力をつける上でもとても大切なものですから、できるだけ毎日取り組むようにしてください。感想文の練習の場合、事前にうちで長文を何度か読んでいないと、絶対と言っていいほど満足したものは書けません。必ず自習で長文を読んでおいてくださるようお願いします。

漢字集は、小学生の場合、その学年で習う漢字を載せています。最後まで書き終えたら最初に戻って繰り返し練習をしていってください。書きにくい漢字は、4回以上書くようにしていきましょう。子供は、新しいものを一回ずつやるような勉強の仕方を好みますが、学力をつけるポイントは同じものを何度も繰り返すということです。勉強の仕方も子供まかせにせず、お母さんのほうで見てあげてください。

短文集は、1ページ目には、その学期の長文の教材の一部を、2〜4ページ目には、たとえ、ことわざ、名言などを載せています。1ぺージ目は学期ごとに異なりますが、2〜4ページ目は前の学期と同じものを載せています。短文の筆写の自習は、1ページ目を中心に何度も繰り返し行なっていくようにしましょう。また、自分で選んだいい表現があったら、それを付け加えておきましょう。

読書は、小学3、4年生のうちに、たくさん読む力をつけていきましょう。子供たちの読書の仕方を見ていると、共通の問題点がいくつかあります。(1)本は1回読めばもう読まないものだと思っていること(本は何度も繰り返して読んでいいのです。自分の好きな本を何度も繰り返し読むことが読書力をつけます)、(2)学年のわりに易しい本を読みすぎること(漫画や学習漫画は読みすぎれば逆に読解力を低下させます。ちょっと難しいと思うぐらいの本を読むようにしていきましょう)、(3)逆に学年のわりに難しいものを与えるすぎること(有名だからという理由だけで、宮沢賢治や芥川龍之介の本を小学生の子供たちに読ませても、内容を十分に把握できません。与える前にお母さんが一度目を通して子供が読めるかどうか確かめてください)、(4)読書は時間があったらやるものだと思っていること(読書は勉強よりも優先して取り組むものです。小学校中学年までは、漢字や計算の練習よりも読書をすることを勉強の中心にしたほうが、高学年になって実力が伸びます。毎日何十ページ以上というふうに決めて読んでいくとよいでしょう。また、子供が自分で読むのを渋る場合は、お母さんが読んで聞かせてあげてください。何度も読み聞かせをしていると、内容がおもしろければ子供は必ず自分で読むようになります)

勉強の時間は、決めておきましょう。電話のあと、すぐに始めて、その日のうちに書き終えるように勉強の計画を立てておいてください。担当の先生からの電話のあと、すぐに始めずに、時間がたってから始めたり、別の日に書くようにしたりしていると、書くことがだんだん負担になってきます。また、書き出してからつまってしまし、先に進めないときは、すぐに教室に電話をして聞くようにしてください。こういう判断は、子供が自分ですることのできないものですから、お母さんが近くにいて、「じゃあ、教室に電話をして聞いてごらん」というようにアドバイスをしてください。作文の勉強は頭脳をかなり使います。書いている途中に食事の時間が入ると、そのあとの集中力は低下します。食後すぐに作文の勉強にならないような時間配分をしておいてください。

小学校高学年で始めたばかりの人は、長文の感想文の練習を難しく感じると思います。最初は、要約だけできればいいというぐらいの軽い気持ちで取り組んでいってください。また、自習で長文の音読をしていないと、授業のある日の先生の説明だけでは、書き方がよくわからないと思います。長文の音読は必ずしておきましょう。特に、その日の課題の長文は事前に何度も読んで自分なりに内容を理解しておきましょう。

インターネットに接続できる人は、自分のページを見てください。プロフィールと清書が掲載されています。アドレスは、毎週送る「山のたより」に掲載します。担当の先生のプロフィールやほかの人のプロフィールもあり、落書きも書けるようになっていますから、ぜひごらんください。

  学年別作文の書き方のポイント

小学1、2年生……第1週の課題は、自由な題名です。この1週間であった出来事を思い出して書いてみましょう。題名は、「きょうのこと」や「このまえのこと」で書くと書きやすいと思います。小学校低学年のころは、日曜日などにせっかくいい話があっても、数日たつとくわしく思い出せないことがかなりあります。それだけ生きている時間が充実しているのだともいえます。低学年の子供にとって、いちばん書きやすいのは「きょうのこと」です。ただし、毎週「きょうのこと」という題名ですと、あとで題名を見たときに何の話かわからなくなりますから、書くのに慣れてきたら、「○○をしたこと」のように、中身がわかる題名で書いていきましょう。

小学校低学年では、与えられた題名で書くことは難しいことが多いので、自由な題名が中心です。そのかわり、毎週、担当の先生からの電話がある前に、自分で何を書くか決めておきましょう。まだ、ときどき、先生からの電話があっても、「まだ、何を書くか決めていない」という人がいます。お母様のほうで、作文の電話がある前までに、「今日はどんなことを書くか決めた?」とひとことたずねてあげてください。教室に通って勉強している方も同様です。お母さんが、子供さんを教室に行かせる前に「どんなことを書くか決めた?」とひとこと聞いてあげてください。

小学校低学年では、誤字や誤表記はたくさんあるのが普通です。大人が、子供の作文を、字の間違いを直すことを中心に見てしまうと、子供は作文を書くことをだんだん負担に感じてきます。大人は、つい誤字を理屈で直そうとしてしまいがちですが、誤字は、読む力をつける中で自然に直していくものです。例えば、「わ」と「は」の区別ができないというような場合、「こういうときは『わ』で、こういうときは『は』で……」と説明しても、すぐには直りません。それよりも、長文の音読をしたり、毎日の読書をしたりすることによって、自然に「わ」と「は」の使い分けを身につけさせていくようにしてください。

小学3、4年生……第1週の課題は、「スポーツをしたこと」です。小学校の中学年のころから、与えられた題名で、昔のことを思い出して書くことができるようになります。今はちょうど運動会の季節ですので、運動会の話などを書いてもよいと思います。また、地域の野球部やサッカー部に入っている人は、その話を思い出して書いてもよいでしょう。体育の時間のことを思い出して書いてもいいと思います。

小学校中学年は、表現を工夫して、長く書く力がついてくる時期です。スポーツの作文は、「はじめに1点をとって、次に1点をとられて、そのあとまた1点を入れて……」と、経過をだらだらと書くかたちになりがちです。特に自分が活躍したところや特に自分が失敗したところなどを中心にして書いていくと、中心のしぼられた文章になると思います。会話は入れにくい題材ですが、プレーの最中に自分が心の中で思ったことをところどころに入れながら書いていくと、立体感のある文章になります。プレーの経過を書き並べるだけですと、平板な文章になってしまいます。表現の工夫としては、たとえ(まるで……のよう)をできるだけ入れるようにして書いていきましょう。たとえを入れるのが苦手な人は、短文集の2〜4ページをよく読んでおくとコツをつかみやすいと思います。

結びの感想は、3年生は自分らしく思ったことを長く書いていきましょう。4年生はやはり自分らしく思ったことを「たぶん」という言葉でそのときのほかの人の立場や気持ちを推測しながら書いていきましょう。思ったことは、いくつ書いてもかまいません。

小学5、6年生……いつも長文の感想文だと難しくて大変なので、第1週は、「スポーツをしたこと」という書きやすい題名です。実例を二つ以上入れながら書いていきましょう。例えば、「この前の運動会の騎馬戦のこと」と「幼稚園のころのかけっこの思い出」というような構成です。5年生の人は、複数の出来事を通して、結びの感想は、自分なりに「わかったこと」や「学んだこと」を書いていきましょう。6年生の人は、複数の実例を通して、結びの感想は、「スポーツとは(人間にとって)……である」と大きく一般化してまとめていきましょう。いろいろな感想が考えられると思いますが、「スポーツとは勝ち負けを競うものでなく、楽しむものであるべきだ」とか「スポーツとは、人間の心を明るくしてくれるものだ」とか「スポーツは、机の上の勉強だけでは学ぶことのできないチームワークや決断力を育ててくれるものだ」など、自分なりに考えた大きい感想を書いていきましょう。ことわざは、(パン食い競争で)「110、二兎を追うものは……」、マラソンで「116、人を相手にせず……」、はじめてのプレーで「7、案ずるより……」、勝ったスポーツで「31、勝ってかぶとの……」、といろいろ使えるでしょう。ことわざは、学校ではあまり勉強しません。よくことわざを知っている子は、家庭でお父さんやお母さんから教えてもらっていることが多いようです。短文集に乗っているのはわずかですから、家庭で子供向けのことわざ辞典(学習漫画などでもかまいません)を1冊用意しておいてくださるとよいと思います。ことわざの引用は、表現の項目で採点をしていますが、実は、表現の工夫という意味では、それほど効果はありません。むしろ、中学生以降の「名言の引用」の前段階の練習という意味と、ことわざを引用することによって、自分の感想をより一般化したものに高めていくという意味を持っています。

中学生……毎週、感想文だと負担が大きいので、第1週は「スポーツについての意見文」がテーマです。1年生の人は、スポーツはよいか悪いか、よい又は悪いとすればその理由は何か、ということで書いていきましょう。スポーツのよい面は、オリンピックなどに見られるように国境を超えた交流ができるということ、体力や精神力がつくこと、年齢や性別にかかわらずそれぞれの楽しみ方ができること、チームワークや忍耐力などが学べること、などいろいろあると思います。逆に悪い面は、競争にこだわること、やりすぎると勉強や読書などに差し障りがあること、試合などではうまい人が中心に運営されてしまうこと、などがあると思います。「確かに、こういう点でスポーツにも悪い点はあるが、私はこういう点でスポーツはよいと思う」又は、「確かに、こういう点でスポーツにもよい点はあるが、私はこういう点でスポーツは悪いと思う」のように、反対意見に対する理解をしっかり書いて、自分の意見を書いていきましょう。理由を複数見つけるというのは、難しいときがあると思います。次のように考えていきましょう。「私は、BではなくAがよいと思う」という意見の場合、(1)Aのよい理由、(2)Bの悪い理由、(3)Aの悪くない理由、(4)Bのよくない理由、(5)Aでないことの悪い理由、(6)Bでないことのよい理由、(7)Aでないことのよくない理由、(8)Bでないことの悪くない理由。(1)〜(4)をざっと考えると、二つか三つの理由はすぐに考えつくと思います。実例は、自分の体験を入れていきましょう。余裕のある人は、第一の実例に体験実例を、第二の実例に社会実例を入れて、実例の幅を広げていきましょう。名言は「31、上手なプレーをしたときよりも……」などいろいろありますが、できるだけヒントに頼らずに、自分で短文集の2〜4ページをひととおり見てさがしていきましょう。ここに載っている名言は全部覚えておくぐらいにしておくとよいと思います。そして、本を読んで、いい表現を見つけたら、自分でこの短文集に書き加えておくとよいでしょう。

2年生の人は、複数の意見を、総合化した一つの意見でまとめる練習をしていきます。「スポーツには確かにチームワークを育てるようなよい面もある。しかし、過度な競争で勝ち負けだけにこだわるような悪い面もある。だから、大事なことは、スポーツ自体がよいか悪いかということでなく、それに取り組む人の姿勢や考え方を正しいものにしていくことだと思う」というような書き方です。総合化の主題は、ひらめきがないとなかなか出てきません。考え方としては、次のようなパターンを覚えていくとよいでしょう。(1)Aという方法もあるし、Bという方法もある。しかし大事なのはCという目的だ、(2)Aという相手もいるし、Bという相手もいる。しかし大事なのはCという自分自身だ、(3)Aという外見もあるし、Bという外見もある。しかし大事なのはCという中身だ。どうしても考え付かない場合は、AとBの意見の折衷案になってもやむを得ないと思いますが、できるだけA・B二つの意見をのりこえたより大きな立場の意見でまとめていくようにしてみましょう。

3年生の人は、自分の生き方に結び付けて書く練習をしていきます。スポーツという言葉から連想する自分の生き方を主題にして書いていきましょう。これは、「風」「窓」「空」「手」などという象徴的なテーマのときも同じです。その言葉から連想する自分自身の生き方を第一段落に書き、第二第三段落はその生き方を実現するための具体的な方法を書くという練習です。コツが分かれば、2年生の総合化の主題よりも書きやすいと思います。そのかわり、余裕のある人は、書き出しと結びに情景を入れて表現を工夫していきましょう。「真っ赤な夕日が西の空に沈んでいく。私たちのサッカーの練習が終わるのはいつもそのころだった。……」というようなちょっとくさい書き出しです。おもいっきりかっこよく決めてみましょう。

高校生……課題の説明は、省略。担当の先生から聞いてください。高校生のみなさんは、長文の予習の不足している人がかなりいます。先生の説明を聞くまでに、必ず数回は長文を読んでいるというようにしてください。また、勉強に追われて読書が足りなくなっている人も多いようです。読書の不足している人は、社会実例がなかなか出てきませんし、問題意識も希薄になってきます。また、語彙も乏しくなりひとつの文章の中に同じ言い回しを何度も使うということになりがちです。読書は、勉強の一部と位置づけて必ず毎日読むようにしていきましょう。その際、易しい内容のものではなく、難しい内容のものを優先して読んでいきましょう。文章がリズミカルでない人は、規範となる文章を復読していないのが原因です。長文を何度も音読していると、文章はなめらかになってきます。自分の好きな著者が入ればその人の文章を何度も繰り返し読んでいくようにしましょう。文章力をつけるためには、ひとつの本を繰り返し読む「精読」と、いろいろな本を次々に読む「多読」の両方が必要です。両方とも不足している人が多いのですが、いちばん力を入れていくのは「精読」のほうです。長文を復読して、意味や読み方のわからないところがあったら、先生に聞いていきましょう。

大学生・社会人……課題の説明は、省略。担当の先生に聞いてください。大学生・社会人のテーマは、高校生のものよりも読みやすくなっています。しかし、その分、自分の生き方に結び付けて深く考えて書いていくことが必要です。。読書や作文は、自分の中に深く求めるものがないとなかなか取り組めないものです。今の大学生は多かれ少なかれ楽しい生活をしています。楽しい生活をしているときには、難しい本を読んだり、難しい文章を書いたりということがなかなかできません。自分の通っている大学の身近な人と接しているだけでは、強い問題意識は育ちません。インターネットなどを利用して、自分の関心のあるテーマで話し合いのできるサークルを見つけていきましょう。日本中には、真面目にいろいろなことを話し合っているサークルがたくさんあります。そういうサークルに参加して、自分の考えをどんどん発信していきましょう。

  新学期からの評価

10月からの評価の仕方です。

作文は、項目表の●印ができているかどうかで◎ ○ △の3段階で評価します。

また項目の出来とは別に、内容に個性や感動がある場合は、内容点を*^^* ^*^ ^ ^の3段階で評価します。

自習は、前の学期は自習テストの点で評価していましたが、今学期からは自習テスト以外に、提出した自習用紙の日数も評価していきます。自習用紙は、毎週かならず提出しておきましょう。