1997年10-12月 第2週号 通算第541号

 言葉の森新聞

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  長文の音読はお母さんやお父さんの前で

言葉の森の勉強は、週1回の作文を一生懸命書いていれば、それだけでも少しずつ力がつきますが、やはりいちばん大事なのは毎日の自習で実力をつけていくことです。

自習の中でも、長文の音読は短い時間でできるわりに読解力・表現力を育てる効果の高いものですから、できるだけ毎日やっていきましょう。自習に慣れてくると、子供が自分の部屋で長文をざっと飛ばし読みして、それで読んだことにしている、というケースも出てくるようです。勉強のコツは同じものを何度も繰り返すということですが、子供はこの繰り返しの勉強をいやがり、目新しいものを次々にやっていくことを好みます。そのために、子供にまかせていると繰り返しの勉強は形式的なものになりがちです。また、長文の中には読みにくい漢字や意味のよくつかみにくいところもたくさんあるはずですから、小学生の場合は、できるだけ大人のいる前で読むようにしてください。

はじめての長文を読むときに、つっかえずにすらすら読める子は、読む力の基礎が一応できています。つっかえつっかえ読む子は、読む力の基礎ができていません。小学3年生までの目標は、すらすら読めるようになることです。聞いている方のお母様も忍耐力を必要としますが、毎日、長文を読ませて、そのつど「だんだん上手に読めるようになったね」と励ましてあげてください。間違っても「ほら、また、つっかえた。すらすら読みなさいって言ったでしょ!」とは言わないようにしてくださいね(^。^)。

  第2週の課題のヒント

小12年 「自由な題名」

低学年の人は、電話の説明があるときまでに、自分で何を書くか決めておきましょう。勉強を始めたばかりの人は、まだ毎週何を書くか決めておくという習慣がついていないと思いますから、お母様がその日の朝にひとこと「今日は作文だから、書くことを決めておこうね」と声をかけてあげてください。

「いちばん……は」……中心を決めるための表現です。低学年の生徒は一生懸命に書いていると、長く書こうという気持ちが強くなり、「それから」「それから」と、話を次々に続けていく傾向があります。「自分が書こうとする出来事のなかでいちばん心に残ったことを『いちばんおもしろかったのは、……です。』と始めのほうに書いておくといいよ」とアドバイスしてあげると、中心を決めて書くコツがつかめるようになります。

この項目は、作文の最初の方に書いていくことが大事です。ときどき、いろいろなことをだらだらと書いたあと、作文の最後に、「いちばんおもしろかったのは……です。」と書いてまとめている子がいます。(^_^;)

最初の方に書いてあり実際に中心がしぼられているときは◎、表現として書いてはあるが中心が絞られていないときは○です。

小学34年 秋を見つけたこと

学校などでもよく出されるテーマです。子供さんが「秋ってどんなことがあるかなあ」と聞いたら、お母様の方で、「ドングリや柿の実などの秋の果物の話」「枯れ葉の話」「寒くなったのでセーターを出した話」「コオロギが鳴き出した話」など自然界の季節の移り変わりを説明してあげてください。また、日曜日などに課題集を見て、子供とお父様が相談をしてくださるとなおよいと思います。いい作文を書く子は、家庭での話し合いがよくされています。「自分の勉強なのだから自分で考えなさい」などと言わずに(笑)、子供さんと楽しくいろいろなことを話し合ってあげてください。

「です・ます」……過去形で書くことが中心になる作文の中に、現在形で、説明や描写を入れていく練習です。文章のリズムに変化が出てきます。(例:ぼくはカマキリを見つけました。葉っぱと同じような緑色です。そっと近づいてみました。カマキリはじっとしています。まるで何かを考えているようです。ぼくは、ゆっくり手をのばしました。)

この「です・ます」は多すぎると逆に単調になってしまいます。「でした・ました」が作文の中心で、ところどころに「です・ます」を入れていくということです。

この項目は今回は●印ではありませんので評価の対象にはしていませんが、評価する際は、「です」と「ます」がどこかにひとつずつ以上入っていれば◎、どちらかひとつしか入っていなければ○です。

小56年 「こうしてケーキミックスは(感)」

要約:アメリカでヒットしたケーキミックスを日本でも売るために、炊飯器を利用した作り方を開発した。しかしケーキミックスは日本では売れなかった。調査したところ、炊飯器にバニラやチョコレートを入れるということに抵抗があったことがわかった。日本文化の中では、白米を炊くことは特別の価値を持っている。

似た例:パンやラーメンやスパゲッティなどがどんなに普及しても、やはりふだんの食事の中心はご飯です。家庭によっては、「ご飯粒は一粒も残さずに食べなさい」と言われているところもあるでしょう。白米は、日本の社会ではほかの食物とは違う重みを持っているという例です。

感想:「白米とは……」「日本人は……」と大きく考えて書きましょう。または、「文化というものは、理屈を超えた力を持っていて、人間の行動に影響を及ぼす」というふうに考えてもよいと思います。

ことわざ:「40、腐っても……」「130、三つ子の魂……」などが使えそうですね。

「要約の仕方」……ものごとをまとめる力は、5年生のころからついてきます。しかし、5年生では、まだ要約の仕方そのものがわからないという子がほとんどです。特に、学校でしている勉強のほとんどは、ある一つの問題に対してある一つの答えがあるというものですから、「自分で考えて大事なところを見つける」という自由度の高い勉強は、多くの子が苦手に感じるようです。

要約の仕方がよくわからないという人は次のようにしていきましょう。(1)大事なところに線を引きながら長文を4回以上読む、(2)線を引いた中から特に大事だと思うところを3〜4つ選ぶ、(3)その3〜4つの文をつなげて書く(つながりにくいところは自分で言葉を付け加えるとなおよい)。ひとつの文は平均50字です。3つか4つの文で要約を書くと、150〜200字の要約になります。

こういう説明をしても、最初は子供たちはどこから手をつけていいかわからないことが多いようです。外見がいったんできれば内容はあとからついていきますから、初めて取り組む子は、なにしろまず3つの文を抜き書きするということでやっていくとよいでしょう。教室でも、苦手な子に要約の指導をするときは、「この長文を4回読んで、そのあと、この長文の始めと中と終わりからひとつずつ文を選んでそれをそのままつなげて作文用紙に書き写してごらん」というように説明をしています。子供たちの反応のほとんどは、「えー、どこでもいいの?」「そのままつなげるだけでいいの?(それで果たして意味が通じるのかという意味)」です。しかし、これで、生徒が要約は(かたちだけなら)簡単にできるという自信を持てば、そのあと、内容的な面の指導に移ることは比較的容易にできるようになります。

要約の目的は、「要約をしようと思って長文を深く読むこと」にあるのですから、要約の出来不出来よりも、要約をしようと思って長文をよく読んだかどうかが大事です。したがって、ヒントの要約を見てそれをただ書き写すだけというような勉強にならないように注意しましょう。

自分の力で要約をしようとすると、字数が長くなってしまう生徒がいます。700字の作文のうち、500字ぐらいが要約という生徒もときどきいます。しかし、要約が長くなるのは自分の力で読んでいる証拠ですから、その「自分の力で読んでいる」というところは大いに評価してあげたいと思います。慣れてきたら、「200字ぐらいに短くまとめられるようにしていこう」という指導をしていきます。

評価は、内容がわかるように要約してあれば(字数が長すぎても)◎、3〜4文でまとめてあるが内容がうまく通じない又は内容をよく把握していないという場合は○です。

授業のある日までに、その週の長文を何度か繰り返し読んでおきましょう。事前に長文を読んでいる生徒は、先生の説明がよく理解できますが、まだ、予習をせずに先生の説明を聞くという生徒も多いようです。毎日の自習で、長文の音読は必ずやっておいてください。

中123年 「何でもよく知っていて(感)」

要約:情報や知識よりも知恵が大切だ。知恵があるかないかは、自分の頭で考えているかいないかの違いだ。ファーストフードの定員のマニュアル化した応対なども笑い話とは言えない。今の教育でも、知恵を育てるようなゆとりが必要だ。

意見:知識よりも自分で考える力が大切だという意見で書くとよいでしょう。反対理解は、「確かに基礎になる知識が大切だが」というところです。知識や情報なしに考えると、ひとりよがりになることもあるでしょう。

名言:「46、知識がはしごを作ったのではなく……」「51、読書とは自分の頭で考えることでなく……」などが使えそうです。

「総合化の主題」……AとBの二つの意見を、Cという、より高い次元の意見にまとめていく練習です。これは、ひらめきがないとなかなか考えつかない意見ですから、どうしても思い付かない場合は「AとBをうまく使い分けていくことが大切だ」というような折衷案にしてもかまいません。しかし、できるだけ自分の力で、より高い次元のCという意見を見つけていきましょう。「知識と知恵とどちらが大切か」という設定の場合は、「知識に支えられた知恵こそが大切だ」のように考えられるでしょう。また、「知識と知恵を二つの手段と考えれば、大事なのは手段ではなく目的だ」ということで、「まず何のためにやっているのかという目的をはっきりさせることが最も大切だ」のようにまとめていくこともできるでしょう。

この項目は難しいので、かたちの上で、Cという意見らしきものが書けていれば◎です。特に内容が優れている場合は、内容点(*^^*)で評価していきます。

高123年 「大昔、この列島は(感)」

要約などのヒントは省略。担当の先生の説明をよく聞いてください。

 別の言葉の結び……意見を書いたあとに、その意見を別の言葉に言い換えてまとめる練習です。評論などで、よく、「換言すれば……」「言い換えれば……」「別の言葉で言えば……」という表現を見ることがあると思いますが、自分の意見を読者によりくわしく知ってもらいたいという筆者の気持ちが伝わってきます。

「AはBである」という意見を言い換える場合、「言い換えれば」のあとに、「Aでなければ……」「Bであるためには……」「Bでない場合は……」などと考えることができます。例えば、「読書は考えを豊かにする」という意見を言い換えるとすれば、「読書をしなければ……」「考えを豊かにするためには……」「考えが豊かでない場合は……」というかたちです。一見同じことを言っているように見えますが、言い換えることによって、自分の意見に新しい一面を付け加えることができると思います。

 大学生・社会人 「松下電器産業では(感)」

要約などのヒントは省略。担当の先生の説明をよく聞いてください。

 書き出しの結び……

書き出しに使ったキーワードを結びにも使っていきましょう。そのためには、書き出しに、表現の上の工夫をしておくことが必要です。情景や会話や名言などを引用した印象的な書き出しを工夫し、その書き出しのキーワードを結びの意見に結び付けて書いていきます。意見と書き出しのキーワードを結び付けるのは、かなり頭を使います。「書き出しの結び」が上手に書けると、800字程度の文章では、全体が安定してまとまっているという印象になります。