1997年10-12月 第3週号 通算第542号

言葉の森新聞

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  「山のたより」の見方

「山のたより(第3週)」には、今回、字数ランキングを載せました。学年平均を100にしていますので、自分が今書いている字数が学年平均と比べて多いか少ないかの判断の目安にしてください。

今回、漢字の小テストを新しく入れましたが、この漢字小テストは、自分で採点しておくだけで結構です

漢字集に載っている漢字には、まだ学校で習っていないものもあると思いますが、今の学年の終わりまでには習う予定になっている漢字です。毎日の自習でぜんぶ覚えていくようにしましょう。

  高学年の人は「ひとこと」に

  ほかの人の作文を読んでの感想を

広場へのひとことがだいぶにぎやかになってきました。低学年や中学年の人は、ポケモンの絵などが多く楽しいひとことを書いています。高学年の人は、学校でのできごとなどをおもしろおかしく書いている人が多いようです。中学生や高校生の人は、作文を書くことだけで精一杯なのかひとことも短く、「やっと中間テストが終わった」というような、ためいきに似たひとことが目立ちます。

ひとことには、もちろん何を書いてもいいのですが、せっかく同じ目的で勉強している友達の作文が毎週掲載されているのですから、高学年の人はできるだけ友達の作文を読んでの感想を書いてみましょう

今学期から、みんなの清書作品は、A4サイズに拡大し読みやすくしました。どの生徒の作品も毎月1回は必ず載るようにしています(ただし、清書を出した人のみ)。

友達の作文を読んでの感想は、次のように書くと書きやすいと思います。

  1. 似た話を書く……「○○さんは、こういうことを書いているけど、私もこういうことがあったよ」という感じで。
  2. 新しい理由や方法を書く……「○○さんは、こう言っているけど、私もそう思うよ。その理由は……」。
  3. 新しい反対理解を書く……「○○さんは、こう言っているけど、私もそう思うよ。たしかにBという考えもあるかもしれないけど……」。

「ぼくは違うと思う」「私はその考えに反対だ」という反対意見を書いてももちろんいいのですが、賛成意見を発展させる方が意見は深まることが多いものです

広場のひとことで同じ学年の仲間たちと意見を交換していきましょう。

  第3週の課題のヒント

小学12年生 自由な題名

書くことをいつも見つけておきましょう。気候もよくなってきたので、この連休は、家族でどこかに出かけた人も多いと思います。どこかに出かけた話を書くときは、いちばん心に残ったことを最初から書いていきましょう。「朝、○時におきました。それから、朝ご飯を食べました。それから車に乗りました。……」と順番に書いていくと、目的地に着いたあたりで作文が終わってしまいます(笑)。「日曜日に、家族で○○に行きました。いちばんおもしろかったことは、○○です。」と最初に書いておくと中心を決めた作文を書きやすくなります。

小学34年生 「みなさんは江戸時代の(感)」

第3週は、感想文です。日本では、普段の生活の中でお米が重要な役割を果たしています。昔のように、給料のかわりにお米が渡されるというようなことはもうありませんが、朝ご飯でも夕ご飯でも、毎日の食事のほとんどがお米中心だという生活は今も変わらないでしょう。みなさんがスパゲッティーやハンバーガーなどを食べていると、よくお父さんやお母さんは「やっぱりご飯の方が食べた気がするね」などと言いませんか。そんな似た話を書いてみましょう。また、田舎などに行くと、水田に稲が実っている光景がよく見られます。水田には、いつも水がたたえられています。こういう水田の水が緑のダムになっているんだなあとあらためて思い起こしてみましょう。

構成は、次のようにしていきましょう。「この話を読んでいちばん……なところは……です。私も……があります(似た話。できれば長く書く。似た話が見つからない時は『もし……だったら』と想像した話を書いてもよい)。私はこの話を読んで……と思いました。」

 4年生の人は、感想文の冒頭に、長文から三文を抜き書きしてみましょう。これは、5年生になって要約の練習をするための準備です。抜き書きするところはどこでもいいのですが、できるだけ「始め」「中」「終わり」から一つずつ書き抜いていくようにするとよいでしょう。大事なところを抜き書きするということにすると、4年生では荷が重すぎます。何しろ全体から三ヶ所抜き書きするというかたちができることを当面の目標にしていきましょう。

小56年生 「私は改めて(感)」

要約:(先生が家庭訪問に来るので)自分の部屋は見違えるほどきれいに片づけられていた。先生が来てお母さんと話をしたあと、先生は子供部屋を見にきた。部屋はきれいだったが、引き出しを開けるとゴチャゴチャだったので先生は吹き出し、私は恥ずかしくなった。

似た例:自分の机の上の大掃除などの話を書いてみましょう。机の上はきれいでも、引き出しはガラクタがいっぱいというのはよくありそうですね。

感想:かたづけなどは、ふだんの心構えが大事だということで書いてみるとよいでしょう。

ことわざ:「105、なまけ者の……」「113、のどもと過ぎれば……」などが使えそうですね。

中学生 「ある朝、私は一冊の本と(感)」

要約:ある朝、庭を散歩して、小さいころに遊んだものを見てまわったが、もはや子供のころのように無邪気に見ることはできなかった。トカゲをつかまえたが、昔のようなよろこびは感じられなかった。汽車が走ってくるのを見たとき、自分の本当の喜びはここでは得られないと思い、その列車に乗って世の中に出てみたいと思った。

意見:人間は日に日に成長します。昔熱中したテレビ漫画も、今見るとずいぶん色褪せて見えるという思いはだれもが持っているでしょう。成長や進歩に伴い関心が変化していくことはむしろ自然な現象と言えます。昔の思い出を大切にすることも大事ですが、新しいスタートを切ることもそれ以上に大事ですね。

名言:「43、脱皮できない蛇は……」「58、人間は求めているかぎり……」などが使えそうです。でも、できるだけ自分で見つけてみましょう。

高校生 「すでに見たように(感)」

内容:人間関係とは、ひとりの人間の内部にある「もうひとりの自分」との対話である(といっても、ひとりでブツブツつぶやいているようだとちょっと危ないけど)。人間関係は、個人の成長の跳躍台である。

今日の社会の問題:人間関係をうまく作れない子供たちが増えているようです。少子化や子供のときからの塾通いで、集団で遊ぶ機会が少なくなったことがひとつの原因だとも言われています。また、子供が自由に集団遊びをするような場所も少なくなったため、子供たちの遊びも、野球やサッカーのようなルールのあるスポーツと家の中でのテレビゲームとに二極分化しているようです。大学生になって、子供時代の集団遊びを取り戻すかのような鬼ごっこやかくれんぼに夢中になるということもあるようです。人間関係をうまく作れないことに悩む大学生もかなりいます。友達との対話も、浅い上辺だけの関係で済ませることが多いので、その反動で一気飲みのような盛り上がりを求めるという面もありそうです。友達との対話の少なさは、自分の内部での自分自身との対話の少なさを反映しているのでしょうか。

長文を、今日の社会問題に結び付けるのが高校生の小論文では大事です。この社会問題がはっきり出てこないと、焦点の絞られた小論文にはなりません。しかし、あまり自分の問題意識に結びつけすぎると、長文の提示している主題とずれてくる場合もあります。自分の問題意識を中心に、長文のキーワードとも関連させながら書いていきましょう。

大学生社会人 「退行催眠を使った実験では(感)」

自分の過去を自分なりに納得できると、その現在の生き方も変わってくるようです。米国で流行している精神分析にもそういう面がありますし、各種の信仰宗教にも似た面があります。例えば「こういうたたりがあるので、こうなっています」という説明を聞くと、それだけで聞いた人は気が楽になるようです。気休め程度に過去を整理するという分にはいいのですが、これが行き過ぎると、過去探しの果てのない旅に向かうようになってしまいます。

特に青年時代は自分自身を確立する途上にあるので、確かなものを過去に求めたくなる気持ちは、より強いようです。大事なことは、自分の前世を見つけることではなく、自分の未来を築いていくことです。

過去が現在を規定しているのではなく、現在が過去を規定しているというのが筆者の主張です。これを更に押し進めれば、現在が未来を規定しているのではなく、未来が現在を規定しているとも言えるでしょう。

「あのとき、ああすればよかったんだけどなあ」といつまでも過去を悔やんでいるよりも、その過去や現在をどう未来に生かしていくかを考えるほうが、より建設的な生き方でしょう。そして、どんな失敗が過去にあっても、未来で成功を手に入れればそれは「失敗は成功のもと」になるのです。

  漢字の「書き」

教育課程審議会(文相の諮問機関)は9月30日の総会で、ワープロが普及している時代背景をふまえ、漢字の「書き」は「読み」よりも遅れてもいいようにすることで合意しました。

これは、時代の流れから考えれば当然のことですが、これから大学で小論文の受験をする人は、漢字は一字も間違えない覚悟で試験に臨んでいきましょう。小論文の採点は時間がかかるので、誤字が少しでもあると、くわしく読まれる前に不合格にされてしまうことがあります。というのも、800字程度の小論文で1字か2字誤字がある人は、いつでもそれぐらいの確率で誤字があるからです。