1997年10−12月 第6週号 通算第545号

 言葉の森新聞

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  おしゃべりな4年生

   ふざけて書く子も多くなる

小学4年生の生徒は、とてもよくしゃべります。「ポケモンがどうした」の「先生がどうした」の、聞く人にとってはどうでもいいようなことをひっきりなしに話してくれます。

この時期は、おしゃべりだけでなく、絵も作文も、どんどん表現したくなる時期のようです。「広場」に掲載するひとことも、小学4年生の生徒の絵には、作文を書くよりも長くかかりそうな^^;力作がかなりあります。

この表現力全盛の時期には、作文の字数も長くなり、その内容もギャグ的なものが多くなります。原稿用紙のマス目をはみ出すような字で「大声で『わはは』(大文字)でわらいました」などと書く子が増えるのもこの時期です。

表現力のあふれている4年生の作文を見ると、おとなはつい眉をしかめがちです。「こんなふざけた書き方しないで、もっと真面目に書きなさい」と言いたくなります。

   4年生ではたっぷり4年生らしい作文と読書を

この4年生の時期には、どういうふうに対処したらいいでしょうか。

ひとことで言えば、表現力や字数をたっぷり伸ばして、5年生以降の考える作文を書くための基礎を作る、ということです。同時に、読書の方も、いろいろなジャンルのものをたっぷり読み速読力を身につけ、5年生以降の考える読書の基礎を作る、ということが4年生では重要です。

作文の表現力を伸ばすというのは、「書き出しの工夫」や「動作表情の様子」や「自分らしいたとえ」や「情景の結び」や「描写のですます」などをふんだんに使って作文を書く力をつけるということです。これらの表現を単なる外見だけでなく内容豊かに書けるようにするために、多くの読書も欠かせません。

   4年生で作文を上手に書くことそのものを目的にしない

しかし、生活作文を表現豊かに書くことは、作文の勉強の本質からすれば付随的なことです。小学校の先生は、小学生の間しか生徒を担当しないので、小学生の間に生活作文を上手に書くことを作文の目標にしがちです。しかし、小学生時代に私小説に近い生活作文を上手に書くことを追求しすぎると、文章力はその後かえって伸び悩むようになります。内容を深めるような方向に進まずに、表現ばかりを工夫する方向に進みがちだからです。

4年生の時期は、表現と字数を伸ばすことができる時期ですが、ここで必要以上に生活作文をうまく書くことを追求せず、次の5年生からの考える作文や考える読書の準備をしていくことが大切です。

   5年生からの勉強を先取りしない

考える力、特に、ものごとを構成的に考える力は、小学5年生ごろから急速に伸びます。5年生から、国語だけでなく理科や社会や算数も急に難しくなってきます。文章を要約する力がついてくるのも5年生からです。作文も、あらかじめ考えた構成メモをもとに書くこともできるようになってきます。(逆に言えば、小学3・4年生で、構成メモを書かせるような作文指導は、子供にとっては無理な注文をしていることになります)

しかし、作文の字数は、5年生ごろからなかなか伸びなくなります。それは、4年生までの事実中心の作文とちがい、5年生からは説明や意見の入った文章を書くようになるからです。4年生ほど無邪気に書けなくなるというのが5年生の作文の特徴です。

言葉の森の作文も、5年生から急に難しくなってきます。本当は、この時期から作文の本当の勉強が始まるのですが、ちょうどこのころから中学受験のために作文の勉強を続けることができなくなる生徒が出てくるのは残念なことです。実際には、塾で国語の勉強をするよりも、言葉の森で作文や感想文の勉強をする方が読解力の力はずっとつきます。特に、6年生の後半になるほど力が伸びる生徒が多いようです。

しかし、この5年生の勉強を4年生で先取りすることはできません。計算力や漢字力や理科や社会の知識は、知識として身につけていくものですからいくらでも先取りした勉強ができますが、作文や読書はその子の内面的な成長と深く関わっているので、勉強を先に進めても中身のないものになってしまいます。例えば、「私の友達」という題名で作文を書く場合、結びの感想で「友情とは(人間にとって)……である」という一般化の主題を書けるのは6年生からです。4年生では、「自分にとって」ということしかまだ考えられない時期なので、「人間にとって」という発想自体がないからです。

   4年生の時期は、読書も作文も遊びもたっぷりと

4年生の時期は、4年生らしい作文をたっぷり書いていきましょう。お母さんも「だいぶ慣れてきたらしく、いつも同じようなパターンで書いている」とか「楽に書けるからもっと先の難しい課題に進んでほしい」ということを言わずに、この時期は、4年生らしい文章を書くことによって基礎力をつけているのだという目で見ていってください。

先ほどの「わはは」(大文字)のような漫画的な書き方も、あまり細かく注意しなくてよいと思います。大事なことは、「自分らしいたとえ」などの表現がしっかりできているかということです。漫画的な書き方をしていても、表現の項目がしっかりしていれば問題はありませんし、逆に真面目に書いていても、表現の項目が充実していなければ問題があります。

表現の内容を充実させるためには、読書や自習が必要です。「たとえ」の項目で、いつも同じように「チーターのように速く走りました」と書くような子は、項目はできていても語彙力が不足しています。語彙力は、作文で身につくものではなく、読書や短文筆写や長文音読で身につくものです。

4年生から塾に通う子も多いので、「勉強が忙しくて読書をする時間がない」という声をよく聞きます。本を読む時間を削ってまで、川の名前や平野の名前を覚えてどうなるというのでしょう、と言いたいところです。4年生でしかできない読書と4年生でしか書けない作文を大事にしていきましょう。

  賞状と賞品の引き換え

これまでに渡した賞状のクラウン数の合計を確かめてください。賞状の点数に応じて賞品との引き換えをします。(ときどき点数の計算をまちがえている人がいるので、計算は慎重にね)

今回の申込締め切りは、11月30日で、賞品をお渡しするのは12月末になります(1月の教材と一緒に送る予定です)。賞状と賞品引き換え券は、自習用紙に入れて送ってくだされば結構です。

  第6週の課題のヒント

朝晩、だいぶ涼しくなりましたね。11月の3・4年生のテーマは、「旅行にでかけたこと」。寒いからなんて言っていないで、元気に遊びに行きましょう。

小学1・2年生 「自由な題名」

いつものことですが、1・2年生の人は、先生からの電話がある前までに何を書くか自分で決めておいてください。と言っても、つい忘れてしまうでしょうから、お母さんやお父さんが作文のある日の朝にひとこと声をかけてあげてください。

小学3・4年生 「旅行にでかけたこと」

旅行という季節ではないかもしれませんが、どこかに出かけたことを思い出して書いてみましょう。できるだけそのときのお父さんやお母さんの会話を思い出すのがコツです。友達どうしの会話だとなかなか長い会話がありませんが、お父さんやお母さんの会話だと、人柄の感じられる長いおもしろい会話が見つかると思います。

小学5・6年生 「みなさんに、まだ字を(感)」

 要約:字の読めないころ読んだ「漫画の描き方」という本が印象に残っている。本の読み方は、人によって違う。自分流の読み方をするところに読書の楽しみがある。

 似た例:自分の好きな本の話などを例にして、自分がとてもいいと思っていたのにほかの人はそう思っていなかった、などという話を考えてみましょう。または、読んだ本の印象に残る場面などを話すと、人によってかなり違っていることがあります。本の例以外に、映画やテレビやゲームの話などで、「受け取り方が人によって違うなあ」という感じたことなどを書いていくとよいでしょう。

 感想:5年生は「わかったこと」を、6年生は「読書とは(人間にとって)……」という大きい感想を書きましょう。

 ことわざ:「88、蓼食う虫も……」「33、蟹は甲羅に似せて……」など。意味のわからない本は「22、馬の耳に念仏」となるときもありますが、難しい本でもくりかえし読めば「読書百遍意自ずから通ず」となります。何しろ読み出さなければ話しは始まらないという意味で「まかぬ種ははえぬ」なども使えそう。

中学生 「フィンランドの(感)」

 要約:フィンランドの15年にわたる調査で、健康管理をしたグループの方が健康管理をしなかったグループよりも病気になった人の数が多かったということがわかった。過保護が依存心を生み、生きる活力を鈍らせるという例は、子供の育て方にも当てはまる。子供が成長するためには、原始時代からの人類の全課程をたっぷりたどることが必要だ。

 意見:子供時代は、子供らしい遊びをする必要がある、という意見です。反対理解としては、高度に発達した現代の文明では、知識を覚えるような勉強ももちろん大切だが、というところで考えていきましょう。

名言:「21、子供は大人を小さくしたものではなく……」など。でも、中学生はできるだけ自分で見つけてみましょう。

高校生 「伝統の根を(感)」

単なる伝統でも新しさでもなく、伝統を受け継ぐ新しさ、というのがこの長文の主題。第2週の長文とも関連あり。

大学生・社会人 「わたしはいじめと(感)」

「愛情の反対は、憎しみではなく、無関心なのだ」という言葉が、この長文の内容をひとことで表現していますね。