1998年1−3月 第1週号 通算第552号

言葉の森新聞

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  1998年の抱負

今年は、(1)生徒1人ひとりが主人公となるような勉強の仕方を工夫し、(2)出会いとふれあいのある教室作りを目指していきたいと思います。

  勉強のコツ

毎日の勉強の時間を決めておきましょう。塾や習い事がある日は学校の宿題だけしかしないという勉強の仕方ですと、なかなか実力がつきません。勉強の中心は、あくまでも家庭学習です。いつでも例外なく同じ時間に同じように勉強する習慣をつけておいてください。

作文の勉強は、担当の先生からの電話のあと、すぐに始めて、その日のうちに書き終えるようにしてください。時間がたってから始めたり、別の日に書くようにしたりしていると、書くことがだんだん負担になってきます。また、書き出してからつまってしまい先に進めないときは、教室に電話をして聞くようにしてください。こういう判断は、子供が自分ですることのできないものですから、お母様が近くにいてアドバイスをしてあげてください。

作文の勉強は、精神的なものに左右されます。だれかとけんかしたり叱られたりしたというようなことがあった場合、その日はいい作文はまず書けません。また、一日のうちに二つ以上の作文を書くというのも無理があります。書けないときは、お母様のほうでその事情を考え、無理がないように対処してください。

小学生の場合は、書き上げた作品については、無条件にほめてあげてください。ほかの子の作文と比較したり、書き上げた直後に欠点を指摘したりすることがないようにしてください。

作文の勉強は精神的なエネルギーをかなり使います。書いている途中に食事の時間が入ると、そのあとの集中力は低下します。食後すぐに作文の勉強にならないように時間配分をしておいてください。運動をしてくたびれているときなども、ほかの勉強はできても作文は書けないということがよくあります。こういうときは、無理をしないようにしてください。

欠席した分はふりかえることができますが、作文の勉強は負担の大きいものですから、課題が何週間かたまってしまたときは、新しい週の課題を優先して書くようにし、古い週の分は無理をせずに欠席としてください。

  新しい教材の説明

1月からの新しい学期の教材をお送りします。これまでの古い教材はかたづけて、新しい教材と混じらないように使ってください。

第1週は、「課題フォルダ」だけと「言葉の森新聞」だけで、「山のたより」「広場のひとこと」「広場の清書」「優秀作品」などは送りません。したがって、作品への投票はしなくて結構です。

 

自習用紙の説明

自習は、できるだけ毎日やっていきましょう。全部ができないときは、長文の音読だけでもやっていきましょう。

今学期から、国語テストの自己採点欄が設けてあります。この問題と解答は、毎週「山のたより」に載せます。第1週は、「山のたより」を送りませんから、この自己採点欄には何も書かなくて結構です

ファクスで作文を送ってくださる場合、自習用紙は全部送る必要はありません。1ページの部分だけを送ってください。

子供さんの作文を見て気づいたことがありましたら、「父母から先生へ」の欄にお気軽にお書きください。

 

作文用紙の説明

今学期から課題コードを書く欄をなくしました

週は、これまでは1週〜12週と読んできましたが、1月からは、1月1週〜3月4週と呼ぶようにします。

週を記入するときは、1.1週(1月1週の場合)のように書いておいてください

 

貸出図書の説明

貸出図書は、12月10日ごろまでに前の学期の図書を返却した人に同封しています。今回の返却期限は3月10日です。ただし、早めに返却しても新しい図書を追加して送るということはありません。貸出図書は、今後、もっと冊数を増やす方向で検討しています。貸出図書の中に国語の問題集が入っている人もいると思いますが、その問題集は、問題文を読書がわりに読むためのものです。

読書は、小学3、4年生のうちに、たくさん読む力をつけていきましょう。子供たちの読書の仕方を見ていると、共通の弱点がいくつかあります。(1)本は1回読めばもう読まないものだと思っていること(本は何度も繰り返して読むものです。好きな本を繰り返し読むことが読書力をつけます)、(2)学年のわりに易しい本を読みすぎること(漫画や学習漫画は読みすぎれば逆に読解力を低下させます。ちょっと難しいと思うぐらいの本を読むようにしていきましょう)、(3)逆に学年のわりに難しいものを与えるすぎること(有名だからという理由だけで、宮沢賢治や芥川龍之介の本を小学生の子供たちに読ませても、内容を十分に把握できません。与える前にお母さんが一度目を通して子供が読めるかどうか確かめてください)、(4)読書は時間があったらやるものだと思っていること(読書は勉強よりも優先して取り組むものです。小学校中学年までは、漢字や計算の練習よりも読書をすることを勉強の中心にしたほうが、高学年になって実力が伸びます。

読書は、毎日何十ページ以上というふうに決めて読んでいくとよいでしょう。また、子供が自分で読むのを渋る場合は、お母さんが読んで聞かせてあげてください。何度も読み聞かせをしていると、内容がおもしろければ子供は必ず自分で読むようになります。

 

課題フォルダの説明

 

(1)おもて表紙の項目表

項目表は、その生徒の級(A1級、B3級などという級で、課題フォルダの右上に書いてあるもの)と連動しているものですが、今学期は、学年ごとに共通の項目=級で勉強するようにします。毎週送られる「優秀作品コーナー」などを見て、書き方の参考にしていきましょう。

今学期の項目表は、上の段が作文の練習用、下の段が感想文の練習用となっています。いずれも●印の項目ができるように勉強していきましょう。

 

(2)うら表紙の作文課題集

課題集は、授業のはじまる前までに見ておき、何を書くか決めておきましょう。小学1、2年生は自由な題名が中心です。小学3、4年生は、決められた題名が中心です。授業の前までに、書くことを準備しておきましょう。その週に何を書くのか決めていないまま電話に出たり、感想文の長文を読んでいないまま先生の説明を聞いたりした人もまだいるようです。準備なしに説明を聞いてもいい作文は書けません。感想文のもとになる長文は、あらかじめ何度か読んでおいてください。小学5、6年生の課題(特に感想文の課題)は、難しいものが多いので、書きにくい場合はほかの題名で書いてもかまいません。しかし、やさしいものをたくさん書くよりも、難しいものを少し書く方が力がつきますから、無理のない範囲でできるだけ課題集の◎印の課題に取り組んでいきましょう。

 

(3)学習の手引

内容は前学期とほとんど変わっていません。新しく受講される方はひととおり目を通しておいてください。

 

(4)漢字集

漢字集は、小学生の場合、その学年で習う漢字を載せています。最後まで書き終えたら最初に戻って繰り返し練習をしていってください。書きにくい漢字は、4回以上書くようにしていきましょう。子供は、新しいものを1回ずつやるような勉強の仕方を好みますが、学力をつけるポイントは同じものを何度も繰り返すということです。勉強の仕方も子供まかせにせず、お母さんの方で見てあげてください。

「あいうえお」などのひらがなは、文字の書き方を練習するためのものですので、とばしても結構です。

 

(5)短文集

短文集は、1ページ目には、その学期の長文の教材の一部を、2〜4ページ目には、たとえ、ことわざ、名言などを載せています。1ぺージ目は学期ごとに異なりますが、2〜4ページ目は前の学期と同じものを載せています。短文の筆写の自習は、1ページ目を中心に何度も繰り返し行なっていくようにしましょう。

短文筆写はただ書き写すだけではなく、暗唱(暗誦)できるようにしてから書き写しましょう。これも子供まかせにすると、ただ機械的に書き写すだけという勉強になりがちですから、お母さんの方で暗唱できるかどうか見てあげてください。初めのうちは暗唱ということに慣れないので時間がかかると思いますので、無理のないようにゲーム的な感覚で勉強してください。

短文の暗唱・筆写は、表現力と記憶力を育てます。

 

(6)長文集

長文集は、全部で8ページあります。毎日1ページ、声を出して読みましょう。声を出して読めない場合は、心の中で音読するつもりで読みましょう。つまり、内容を理解するためだけに読むのではなく、言葉と言葉のつながり方を味わいながら読むということです。最後まで読み終えたら、また、最初から戻って読んでください。長文は、自分の好きなものを繰り返し読んでいくとよいと思います。ただし、感想文の課題がある週は、その感想文のもとになる長文をよく読んできてください。

長文は縦長で行間が狭く読みにくいと思いますが、アクセスというデータベースソフトで作成しているために、まだ日本語特有の行間をとる機能がありません。しばらくは、このレイアウトのまま我慢して読んでください。読みにくく感じるのは、最初のうちだけだと思います。

長文の音読は、表現力と読解力を育てます。特に、高校生以上で、文章を書くのが遅い人、長く書けない人、語彙が乏しい人、国語の読解が苦手な人などは、長文を繰り返し音読していきましょう。国語の読解が苦手な人は、長文の音読と合わせて、現代文の問題集の問題文を復読する練習もしていきましょう。

 

(7)予定表

予定表は、課題フォルダのうしろの方に載っています。この予定表は、3ヶ月を1週から12週に分けています。課題集の週とは、次のように対応しています。

予定表の1週=課題集の1.1週

予定表の2週=課題集の1.2週

予定表の3週=課題集の1.3週

予定表の4週=課題集の1.4週

予定表の5週=課題集の2.1週

予定表の6週=課題集の2.2週

……以下同じ。

授業のない日は、言葉の森新聞などでもお伝えしますが、予定表をよく見て、おうちでも確かめておいてください

 

  学年別作文の書き方のポイント

小学1、2年生

第1週の課題は、自由な題名です。この1週間であった出来事を思い出して書いてみましょう。題名は、「きょうのこと」や「このまえのこと」で書くと書きやすいと思います。小学校低学年のころは、日曜日などにせっかくいい話があっても、数日たつとくわしく思い出せないことがあります。それだけ生きている時間が充実しているのだともいえます。低学年の子供にとって、いちばん書きやすいのは「きょうのこと」です。ただし、毎週「きょうのこと」という題名ですと、あとで題名を見たときに何の話かわからなくなりますから、書くのに慣れてきたら、「○○をしたこと」のように、中身がわかる題名で書いていきましょう。

小学校低学年では、与えられた題名で書くことは難しいことが多いので、自由な題名が中心です。そのかわり、毎週、担当の先生からの電話がある前に、自分で何を書くか決めておきましょう。まだ、ときどき、先生からの電話があっても、「何を書くか決めていない」という人がいます。お母様のほうで、作文の電話がある前までに、「今日はどんなことを書くか決めた?」とひとことたずねてあげてください。教室に通って勉強している方も同様です。お母様が、子供さんを教室に行かせる前に「今日は、どんなことを書くか決めた?」とひとこと聞いてあげてください。

小学校低学年では、誤字や誤表記はたくさんあるのが普通です。大人が、子供の作文を、字の間違いを直すことを中心に見てしまうと、子供は作文を書くことをだんだん負担に感じてきます。大人は、誤字を理屈で直そうとしてしまいがちですが、誤字は、読む力をつける中で自然に直っていくものです。例えば、「わ」と「は」の区別ができないというような場合、「こういうときは『わ』で、こういうときは『は』で……」と説明しても、すぐには直りません。それよりも、長文の音読をしたり、毎日の読書をしたりすることによって、自然に「わ」と「は」の使い分けを身につけさせていくようにしてください。

小学3、4年生

第1週の課題は、「お父さんやお母さんと遊んだこと」または、「私の宝物」です。小学校の中学年のころから、与えられた題名で、昔のことを思い出して書くことができるようになります。年末やお正月に家族で楽しく遊んだ話などを中心に書いていくとよいと思います。

小学校中学年は、表現を工夫して、長く書く力がついてくる時期です。しかし、このころの作文は、「はじめに何をして、つぎに何をして、それから何をして、……」と、経過を並列的に書くかたちにもなりがちです。自分のしたことや思ったことがはっきりしている場面を中心に書いていくと、中心のしぼられた文章になります。作文の冒頭に、「いちばんおもしろかったのは……です」と入れてから書き出すのもコツです。

会話は、題材によっては入れにくいこともあると思いますが、会話のある場面を思い出して書くと、作文が自然に描写的になります。特に、男の子は説明中心の短い文章を書くことが多いので、会話のある場面を思い出して書くと、生き生きとした作文になると思います。

長い会話とは、作文用紙で2行以上になるような会話です。言った人の人柄が伝わるような会話を思い出して書いていきましょう。

たとえは、小学生の表現力のいちばんのポイントとなるものです。たとえを入れるのが苦手な人は、短文集の2〜4ページをよく読んでおくとコツをつかみやすいと思います。

書き出しのくふうは、作文の書き出しに、会話や色や音や情景などを書いていく練習です。書き出しのくふうをしたあとに、「いつどこで何がありました」と書いていきましょう。

途中の思ったことは、作文の途中のところどころに自分の思ったことを入れながら書いていく練習です

結びの感想は、自分らしく思ったことを長く書いていきましょう。

小学5、6年生

いつも長文の感想文だと難しくて大変なので、第1週は、「お父さんやお母さんと遊んだこと」または「私の宝物」という書きやすい題名です。実例を二つ以上入れながら書いていきましょう。5年生の人は、複数の出来事を通して、結びの感想は、自分なりに「わかったこと」や「学んだこと」を書いていきましょう。6年生の人は、複数の実例を通して、結びの感想は、「家族とは(人間にとって)……である」または「宝物とは(人間にとって)……である」と大きく一般化してまとめていきましょう。

たとえやことわざは、できるだけ結びの感想の部分で入れていくとよいでしょう。ことわざの使える人はことわざで、ことわざの使えない人はたとえで表現の工夫をしていきましょう。ことわざは、学校ではあまり勉強しません。よくことわざを知っている子は、家庭でお父さんやお母さんから教えてもらっていることが多いようです。短文集に乗っているのはわずかですから、家庭で子供向けのことわざ辞典(学習漫画などでもかまいません)を1冊用意しておいてくださるとよいと思います。ことわざの引用は、表現の項目で採点をしていますが、実は、表現の工夫という意味では、それほど効果はありません。むしろ、中学生以降の「名言の引用」の前段階の練習という意味と、ことわざを引用することによって、自分の感想をより一般化したものに高めていくという意味を持っています。

書き出しのくふうは、作文の書き出しに、会話や色や音や情景などを書いていく練習です。書き出しのくふうをしたあとに、「いつどこで何がありました」と書いていきましょう。

聞いた話・調べた話は、題材に広がりを持たせるための練習です。自分の体験以外に、お母さんやお父さんに聞いた話、伝記などで読んだ話、図鑑や事典で調べた話などを入れていきましょう

中学生

いつも長文の感想文だと負担が大きいので、第1週は、「人口問題」または「今いちばん問題だと思うこと」または「本当の豊かさ(字が途中で切れています)」の中から選んで書きましょう。「クリスマス(またはお正月)」という題名でもかまいません。

意見文としては、「本当の豊かさ」が書きやすいと思います。クリスマスにサンタさんからプレゼントをもらった人も多いと思いますが、物質的には今の日本はとても豊かになっています。しかし、自然の環境や時間的なゆとりや家族の団欒(だんらん)や心の潤いなどでは、かえって昔よりも貧しくなっている面もあるようです。

「確かに、経済的な豊かさも大切だが……」という反対意見に対する理解もしっかり考えて自分の意見を書いていきましょう。

構成は、理由と方法で書いていきましょう。第一段落で意見を書いたあと、第二段落はその理由と実例、第三段落は方法と実例、第四段落は反対意見への理解と名言の引用と意見というかたちです。字数を長くする場合は、第三段落のあとに、もうひとつ理由や方法を展開していってもよいでしょう。

実例は、自分の体験以外に伝記人物実例を入れて、実例の幅を広げていきましょう。福翁自伝、フランクリン自伝、氷川清話(勝海舟自伝)など大人向けに書かれた伝記をじっくり読んでおくといろいろなところで実例として使えると思います。

書き出しの工夫は、身近な実例の情景などから書き出す練習です。

名言は「7、家の批評ができるのは……」などいろいろありますが、できるだけヒントに頼らずに、自分で短文集の2〜4ページをひととおり見てさがしていきましょう。ここに載っている名言は全部覚えておくとよいと思います。また、本を読んで、いい表現を見つけたら、自分でこの短文集に書き加えておくとよいでしょう。

高校生

高校生のみなさんは、長文の予習の不足している人がかなりいます。先生の説明を聞くまでに、必ず数回は長文を読んでいるというようにしてください。また、勉強に追われて読書が足りなくなっている人も多いようです。読書の不足している人は、社会実例がなかなか出てきませんし、問題意識も希薄になってきます。また、語彙も乏しくなりひとつの文章の中に同じ言い回しを何度も使うということになりがちです。読書は、勉強の一部と位置づけて必ず毎日読むようにしていきましょう。その際、易しい内容のものではなく、難しい内容のものを優先して読んでいきましょう。文章がリズミカルでない人は、規範となる文章を復読していないのが原因です。長文を何度も音読していると、文章はなめらかになってきます。自分の好きな著者が入ればその人の文章を何度も繰り返し読んでいくようにしましょう。文章力をつけるためには、ひとつの本を繰り返し読む「精読」と、いろいろな本を次々に読む「多読」の両方が必要です。両方とも不足している人が多いのですが、いちばん力を入れていくのは「精読」のほうです。長文を復読して、意味や読み方のわからないところがあったら、先生に聞いていきましょう。

大学生・社会人

大学生・社会人のテーマは、高校生のものよりも読みやすくなっています。しかし、その分、自分の生き方に結び付けて深く考えて書いていくことが必要です。読書や作文は、自分の中に深く求めるものがないとなかなか取り組めないものです。今の大学生は多かれ少なかれ楽しい生活をしています。楽しい生活をしているときには、難しい本を読んだり、難しい文章を書いたりということがなかなかできません。自分の通っている大学の身近な人と接しているだけでは、強い問題意識は育ちません。インターネットなどを利用して、自分の関心のあるテーマで話し合いのできるサークルを見つけていきましょう。日本中には、真面目にいろいろなことを話し合っているサークルがたくさんあります。そういうサークルに参加して、自分の考えをどんどん発信していきましょう。

  評価の仕方

作文は、項目表の●印ができているかどうかで◎ ○ △の3段階で評価します。

また項目とは別に、内容に個性や感動がある場合は、内容点を*^^* ^*^ ^ ^の3段階で評価します。

自習は、提出した自習用紙の日数で評価していきます。自習用紙は、毎週かならず提出しておきましょう。