http://www.mori7.com/ 1999年10月4週号 通算第637号 mori7@mori7.com

言葉の森新聞

文責 中根克明(森川林)

  今週、10.4週は清書です

  清書用紙には必ず生徒コードを入れておいてください。

 10.4週は、清書です。教室に通っている人は、これまでの作文を持ってきましょう。

 清書は、担当の先生の説明を参考にして、返却されている作文の中から自分でいちばんよいと思うものを選び、清書用紙に清書してください。新しく教室に入ったばかりの人は、返却されている作文がない場合もあります。また、返却されている作文の中に清書するようなものがない場合もあります。そのときは、清書用紙に直接自由な題名で作文を書いて送ってください。

 この清書は、全員の分を12月ごろから順に掲載し、インターネットに掲載し、そのあと新聞社に送ります。インターネットに掲載する清書は、パスワードを入れないと見られないようにしてあります。

  10月中下旬作文の返却が遅れる場合があります

 10月の中旬から下旬にかけて、幾代先生、小田先生、永谷先生、山崎先生がそれぞれ数日から数週間旅行に出かけます。電話指導は、代講の先生が行いますが、作文の返却はそれぞれ担当の先生が戻ってから行います。そのため、作文の返却と講評が遅れてしまう場合がありますがご了承ください。

 将来は、代講の先生がそのまま返却と講評も行うようなシステムにしていきたいと思いますが、今こういうかたちで行うと、郵送先などがかなり混乱することが予想されますので、今回は担当の先生が戻ってから作品の返却を行うということにさせていただきました。よろしくお願いします。

  小学校低中学年の感想文指導

 小学校低中学年の生徒にとって、感想文の勉強はすごく難しく感じるのが普通です。ですから、家庭では「この勉強はむずかしいのだからうまく書けなくて当然」というようにおおらかに見てあげてください。

 教室での様子を見ていると、力のある子で、しかも家で似た話をよく準備してきた子でも、学年の百倍(小2なら200字、小3なら300字)を書くのがやっとです。苦手な子や初めて感想文の練習をする子の場合は、全然書き出せないということも少なくありません。

 感想文のような難しい課題を勉強する場合、指導はできるだけ単純に形の上でできることだけに限定して教える必要があります。例えば、小学1〜3年生では、次のような言葉(「 」で囲んだ部分)を入れて、学年の百倍(小1なら100字、小2なら200字、小3なら300字)まで書ければよいということで、子供が「それならできそうだ」と思えるような範囲でアドバイスをしていきます。

 小学1〜3年生の場合

 わたしがこの話を読んで「いちばん」ふしぎだったのは……。

 わたしにも「にた話」があります。それは……。(「にた話」が見つからない場合は書かなくてもよい)

 「もし」わたしが……「だったら」……。

 わたしはこの話を読んで……と「思いました」。

 これだけでも、すぐに100字ぐらいは書けてしまいます。このほかに「どうしてかというと」「まるで……よう」「たぶん」「これから」などの言葉を入れれば、200字ぐらいまではだれでも書けます。しかし、始めはあまりよくばらないようにすることが大事です。

 苦手な子供や初めて感想文を書く子供には、できるだけ短い言葉で説明していくことが必要です。「『いちばん』と『もしだったら』と『思いました』という言葉を入れて5行まで書いてごらん」というようなアドバイスです。これを逆に長くくわしく説明してしまうと、子供はかえって書き出せなくなってしまいます。長くくわしい説明で効果が出てくるのは、ある程度力がついてからです。

 小学4〜6年生では、三文抜き書きや要約でつまずく子がかなりいます。特に小学4年生の三文抜き書きでは、「何をしていいのかわからない」という子が最初はかなりたくさんいます。三文抜き書きとは、長文の「はじめのほう」と「まんなかのほう」と「おわりのほう」から一文ずつ、合計三文を抜き出して、それを感想文の第一段落に書いていくということです。

 子供は、「適当に」とか「重要なところを」などというあいまいな指導がいちばん苦手です。ですから、この三文抜き書きを初めて教える場合、先生のほうで、「こことこことここに線を引いて、それをそのまま書いてね」というアドバイスをすることもあります。言われたとおりにやったことであっても、かたちが整えば子供は要領がわかってきます。

 感想文は、子供にとっては難しい勉強ですから、なかなか書き出せない場合は、教室に電話をして聞いてください。

  懐かしい高校時代

 もう既に数十年前に過ぎてしまった高校時代を振りかえると、自分の人生の中でいちばん輪郭のはっきりしていた時代のように感じます。

 そこには、大学受験という細く絞られた一つの目標がありました。朝起きてから夜寝るまで四六時中一つの目標を感じて生きていく生活というものは、社会に出てからはむしろ手に入れることがまれなほど恵まれた生活だったと思います。

 そして、その同じ目標を持った同じ学力の仲間たちとの交流がありました。交流といっても、楽しく談笑するような交流ではなく、「今度のテストは、あいつもがんばったな。キラリーン」というような意識の上だけのささやかな交流です。私(森川林)の通っていた高校では、中間テストや定期テストがあると、どの教科も上位20人ぐらいの名前が貼り出されましたし、教科によっては成績順にテストを返却してくれるシビアな先生もいました(笑)。

 そして、受験の科目に関係なく、自分自身の向上のためにどの教科も真剣に学ぼうという姿勢がクラスの雰囲気の中にあったように思います。私は理系だったので、中3の政経は受験には関係のない科目でしたが、いつもいちばん前の席で熱心に聞いていました。そのかわり、物理のさ○○先生の権威主義的な雰囲気が嫌いで、物理の授業中はいつも別の本を読んでいました。今考えると愚かであった。^^;

 目標があって、努力に見合う評価があって、ともに戦う仲間がいて(かわいい子もいて)、日々自分自身の向上が感じられて、しかも何の雑用もなく目標に向かって専念できるというような四拍子も五拍子もそろった生活は、その後、この年になるまで二度と訪れてはいません。

 高校生のころは、周りの大人の人たちをエスタブリッシュメント(既に確立している体制に属する人)だと思っていました。しかし、いま自分がそういう年齢になってみると、外見はともかく内面的には全然どこも確立していません。いまだに毎日のように、喜んだりがっかりしたり、浮いたり沈んだりの人生を送っています。昔と違うのは沈みすぎなくなったことぐらいです。

 四十は不惑の年といいますが、実際には多くの四十代は、若いころよりもずっと多くの惑う材料を持っていると思います。だからこそ、趣味や消費やいろいろな会合に多忙な日常生活を送っているのかもしれません。そう考えると、なおのこと、迷うことなく一つの目標に収斂されていた高校時代のような生活こそが、人間の理想とする生活のように思えてくるのです。

  先生と生徒

 「先生、生徒のなれの果てー。あこりゃこりゃ」という歌がありますが、先生というのは読んで字のとおり「先に生きた者」と考えると、その役割がはっきりしてくるように思います。

 自然界では、先生の役は親が務めています。ライオンのお母さんが、その子供に、「この鉄のにおいは、罠というんだよ」という感じで、自分の先に生きた経験を伝えます。

 人間の場合も同じです。子供が「どうして算数なんてやるの」と聞いたとき、「それは、大人になってから、買い物のおつりなどをまちがえないためよ」などと、先に生きた経験を伝えます。しかし、学年が上がると、事態はもっと複雑になってきます。

 小中学校の勉強の中には、先に進んでから重要になってくるものと、そうでないものとがあります。しかも、それが重要なものの基礎だったとわかるのは、数年たってからです。そうすると、生徒が自分の力で何をどう勉強するかを決めることはまずできません。全部重要なんだから、全部一生懸命やりなさい、というのは、一日が50時間ぐらいある場合に言えることです。

 そこで、先に生きた者の役割が出てきます。今、先生というと、自分の知識を伝えるような仕事をしていることが多いと思いますが、知識を伝えるだけなら、よく整理された参考書のほうがずっと密度濃く伝えられます。先生は、生徒の実状に合わせて、その生徒が先に進むために、どこがいちばんのネックになるかを予測して、どの方法がいちばん能率がよいかを伝える役割を果たすものだと思います。

  ミスプリント

 中学生〜高校生の11.1週と12.1週の課題で、課題フォルダには、3の題名課題と5の感想文課題の両方に●印がついていますが、感想文課題のほうを優先課題としてください。

 中学3年生の11.2週長文「もう三〇年も前の」の上の段、左から5行目は、「音から必ず」→「から必ず」です。

  10月29日(金)30日(土)は休み

 課題フォルダの中の予定表に書いてありますが、10月29日(金)と10月30日(土)は休みです。宿題もありませんから、家でたっぷり本を読んだり遊んだりしていてください。

  来週11.1週のヒント(小1〜小6)

 小学12年生 11.1週 ●じゆうなだいめい

 1・2年生は、自由な題名ですが、3年生以上の課題を見て参考にしてもいいでしょう。教室が始まる前に、お母さんやお父さんと何を書くか相談してくるといいと思います。

 小学3456年 11.1週 ●私の好きな(苦手な)食べ物 ◎いたずらをしたこと

 好きな食べ物、苦手な食べ物の話を書いてみましょう。自分の体験だけでなく、お父さんやお母さんに聞いてみるとおもしろい話が出てくると思います。先生(森川林)の苦手な食べ物は、クサヤ。うちの犬は大好物ですが、人間が食べるものとしてはどうも……。でも、それが好きな人もいるのでしょう。

 納豆などは、好き嫌いが分かれる例ですが、ニンジンやほうれん草などは、どちらかと言えば嫌いな人のほうが多いかな。

 ずいぶん昔になりますが、小学校の給食で出る牛乳は脱脂粉乳というまずーいもので、冷めるとなかなかひといきでは飲めませんでした。今の給食はおいしいから、そういう献立はあまりないでしょう。給食で人気があったのは、揚げパンや鯨のから揚げ(だったかな?)。おいしい献立のときは、ほとんど丸呑みでおかわりしている男の子がいました。今でもいるでしょ。

 いま、近くのイタリア料理のレストランでよく注文するのはイカ墨スパゲティ。口の回りを真っ黒にして食べています。

 5・6年生のことわざは、「88、蓼食う虫も好き好き」「114、花よりだんご」「140、良薬は口に苦し」など、たくさんありますね。

  光る表現(小1〜小6) 1999年10月4週号

瞳子さん(あとふ/小2)の作文より(ミルクティ先生/10.1週)

 『天までシャボン玉がいったら…』もし、もしかしたらですよ、シャボン玉が天までいったらどんなにきれいなけしきが見られるでしょう。きょうはシャボン玉のことを話します。<評>読む人に話しかけるような、楽しいワクワクするような書き出しだね。

しおきちさん(あにせ/小2)の作文より(ミルクティ先生/10.1週)

 『はじめてのピアノのコンクール』「だめだと思ったんだ。」わたしは目になみだをためて言いました。「上手だったけど、出るにはもうちょっとれんしゅうをしなきゃだめだね。」おかあさんは、またがんばってねと思うように言いました。<評>会話のあとに、声や顔のようすをじょうずに入れて書けたね。ふたりのきもちが、しっかりつたわってくるよ。

ししさん(あふか/小2)の作文より(スズラン先生/10.2週)

 (運動会の日に)いえにかえってビデオを見たら三ちゃくでした。お母さんが、「おしゃべりしながら走ってるんじゃないの。」と言いました。するとおねえちゃんが、「もっとまじめに走れば一ちゃくになれるかもしれないよ。」と言いました。ぼくは、一ちゃくじゃなくてもいいんだと思いました。評:ビデオを見ながらの会話が上手に書けていましたね。三着でも、楽しく走ったからいいんだという気持ちが伝わってきましたよ。

一休さんさん(わら/小2)の作文より(けいこ先生/10.1週)

 (合しゅくのおふろで)ぼくはしかたなく水であたまをあらいました。その時ぼくは、さみしくなりましたが、なぜかおもしろかったです。評:あついお湯が出たり、水がドーと出たり……。「どっちなのかはっきりしてくれよう」と思うのも、もっともだよね。家でこんなことになったら怒るだろうけれど、合しゅくだからこそさみしくておもしろいと感じたんだと思うよ。

友葵さん(あしも/小3)の作文より(ゆり先生/10.2週)

 らくだは私の体の3倍ぐらいの大きさで、らくだを見る時は、空を見上げるように見なければなりませんでした。評:らくだって、ちかくで見るとそんなに大きいんだね。この文を読むとどんなに大きいかがよくわかりますよ。

えりさん(あなふ/小3)の作文より(ももんが先生/10.1週)

 前後に、足をこまめにうごかして、バランスをとります。評:一輪車で停止する(むずかしーい)わざの説明です。とてもくわしく書くことができましたね。

むっちゃんさん(あひほ/小3)の作文より(ももんが先生/10.1週)

 「ぬかすぞおー」と思ったら、はんたいに、しんゆうのさきちゃんが、おいぬいていきました。「ゲ!」と思いました。評:「ゲ!」には笑っちゃいました。むっちゃんの表情が予想できそうだよ〜。

真亮さん(あむこ/小3)の作文より(みち先生/10.1週)

 同じクラスの強い元委員長があやちゃんのおにいちゃんのボールをがっちりとりました。まるでサッカーのキーパーのようでした。たぶんその時はいたかったと思います。評:見たことをくわしくはっきり書きましたね。たとえがひきたっています。

瑞季さん(てく/小3)の作文より(ゆり先生/10.2週)

 学校のつうがくろをあるいていたら、草むらで、「リーンリーン。」と、言う声を見つけた。評:「声を見つける」という表現がステキですね。

チョコボさん(あさつ/小4)の作文より(ミルクティ先生/10.2週)

 私は、この話をよんで、お米は今ではもう身近なもので当たり前なものになっているけれど、むかしからの友達のようなものなのだな、と思いました。<評>お米のことを「友達のよう」と考えたところが、おもしろいね。本当に大事な友達だね。

けろっぴさん(あちえ/小4)の作文より(ゆり先生/10.2週)

 たたみも日本を代表するけれども、お米も日本の代表です。たたみも、もとはいなわらです。日本の文化のたたみさえ、お米からできているのです。評:日本とお米の切っても切れない関係を、とっても上手に表現できていますね。

ゆうちゃんさん(あにみ/小4)の作文より(ももんが先生/10.1週)

 ぼくの投げたボールが鳥のように飛んでいきます。評:作文の書き出しの一文です。たとえを使った情景描写で、読み手を「ぐいっ」と、作文の中に引き込みました。

仁敬さん(あみそ/小4)の作文より(きょうこ先生/10.1週)

  「1位の紙をもらった時、うれしさが体いっぱいに広がってとてもうれしかった。」 うわぁ、仁敬くんの感動が伝わってきたよ! どんなにうれしかったかが、すっごくよく分かるすてきな表現でした!

雅貴さん(あめす/小4)の作文より(ももんが先生/10.1週)

 ぼくは、む中になって走りました。そしてテープを切りました。心の中できんちょうがはじけて心の中が「やったあー」という気持ちでいっぱいになりました。評:80m走で初めて一番になったときの感げきが、作文を読んでいる人にも「ドキドキ」伝わってきますね。

友二さん(ふき/小4)の作文より(とこのん先生/10.1週)

 ぼくは、バトンをわたされたときは、「一位になるぞ。」と、心の中で思いました。それで気合いを入れていたのだけれど、ライバルの小野くんと、ならんでしまいました。だから、ぼくは、力がもうなかったのだけど、赤組のおうえん席の最後のコーナーで、「ぜったい一位になりたい。」と心の中でもう一度思ったらスピードが出て、一位になりました。 評:接戦のレースの中での心の動きが、とても生き生きと、臨場感いっぱいに描かれています。

信長さん(あえほ/小5)の作文より(けいこ先生/10.2週)

 遠まわしに物事を言うのは相手を傷付けないよう人が注意するためなのだと思う。だがそれによって気持ちが相手に伝わりにくくなるのなら相手の心が傷つくよりもずっと始末が悪い。評:「ことば」は本当に難しいし、だからこそおもしろい。言いたいことでもうまく伝わらない(伝えなれない)ことも多いのだから、言いにくいことだとなおさらだよね。

美和さん(あきき/小5)の作文より(スズラン先生/10.2週)

 言いにくい言葉を言うとき、まるで、きらいな食べ物を食べているような気がする。評:お詫びの言葉などを言うときは、心が重くなって、きらいな食べ物を食べているような気持ちになるというのは良くわかります。上手なたとえですね。

トカゲさん(せふ/小5)の作文より(とこのん先生/10.1週)

 僕の打席では、かなり緊張していた。リラックスしようと思うともっと緊張してしまった。声も出なく、一球ごとに監督の顔を見るだけで、結果的にはフォアボールだった。 評:緊張感あふれる空気の中、打席に立ち、ピッチャーからのボールを待つ姿が目に浮かぶようです。

 

  来週11.1週のヒント(中1〜中3)

 中1年 11.1週 ●ミミズがある生態系に(感想文)

 内容:ダーウィンは、ミミズの研究に基づき、ミミズが有機土壌の形成に大きな貢献をしていると述べた。有吉佐和子は、ミミズの死が土の死につながるという農民の声を取材した。ロンドンでは今、ミミズを利用した生ゴミの処理を行なおうとしている。

 解説:目に見えるミミズの役割であっても、それが評価されるまでに多くの年月を必要としました。目に見えないバクテリアの役割などは、まだ十分に評価されているとは言えません。最近、寄生虫が人間の生活にプラスの役割も果たしていたのではないかという研究も出てきました。藤田紘一郎氏(東京医科歯科大学教授。「笑うカイチュウ」などの著者)よれば、これまでは寄生虫が人間の免疫系の主な対象となっていたそうです。しかし、社会全体が清潔になり寄生虫が駆除されると、免疫系の働く対象がなくなり、それがスギ花粉やダニ抗原に反応するようになり、花粉症やアトピー性皮膚炎が増えたという因果関係が推測されるということです。

 個々の農薬や化学肥料は、それだけを見ると強力に見えることもありますが、生態系全体の中で果たす役割まで考えに入れなければ、正しい評価をくだすことができなくなっているようです。

 考えを広げてみると、子供時代の遊びなども、人生という土を耕すミミズのような役割を果たしているのかもしれません。目立たないものが、全体的に見ると大事な役割を持っているという例を考えてみましょう。

 名言は「雑草とは……」などがぴったりかな。

 中2年 11.1週 ●交話機能というのは(感想文)

 内容:交話機能とは、ことばがもつ、人と人との気持ちを結びつける作用である。人は他人に出会うと、心の中に警戒や不安を持つ。この緊張をほぐす役割があいさつなどの言語行動である。一見無駄に見える話にも潤滑油としての働きがある。

 解説:学校で先生の話を聞いているときでも、ためになる話ばかりではくたびれてきます。たまには寒いギャグを飛ばしてくれるような先生のほうが人気があります(ないか)。「さあ、今日は漢字のテストをするぞ。だれかな。いやあなカンジなんて言っているのは。ははははは(ひとりで笑っている)」

 デートをしたりプロポーズをしたりするときでも、突然、「こんちは。僕と結婚してください」などと言う人はいません。たいてい「星がきれいですね」とか「月がきれいですね」とかいうどうでもいい話から始めます。しかし、最初から最後までどうでもいい話ばかりで、本題が何もないというのもまた困ります。伝えるべき中味があってこその交話機能と言えるかもしれません。

 中3年 11.1週 ●時計を選ぶときには(感想文)

 内容:デジタルは正確な情報をドライに表現する。アナログは全体の中での位置づけを情緒的に表現する。デジタルウォッチは、時刻の表示だけでなく情報処理をデジタルで行うウォッチへと進化している。アナログウォッチは、頭脳にデジタルな演算処理機能を持たせたウォッチへと進化している。人間の脳に右脳と左脳があるように、デジタルとアナログも共存共栄で発展していくだろう。

 解説:「木を見て森を見ず」という言葉があります。現代のようにコンピュータが生活の隅々まで入ってくると、ものごとをデジタル的に表わす場面が多くなります。成績なども、昔は、花丸、二重丸など視覚の上でアナログ的なもののほうが多かったようですが、今は、偏差値などで細かいところまでデジタル的に表わせるようになっています。しかし、最近、デジタルではわかりにくいので、その数値をグラフ化してアナログ的に実感できるようにくふうされた表示も増えてきました。

 全体をアナログ的に見ることと個々の細部をデジタル的に見ることのバランスをうまくとっていくことが必要なのでしょう。「バランスよく」を主題にして、デジタルの長所を伸ばすための方法(1)とアナログの長所を伸ばすための方法(2)を考えていくと構成しやすいと思います。

 高1年 11.1週 ●例えば市町村で(感想文)

 内容:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンというバンドは、社会のあらゆる機械(権力や制度)に反抗することをメッセージとしている。ヴァレリーは十九世紀末、方法が世界を支配し、英雄や偉大な個性は不要になると述べた。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの語る「機械」こそが、私たちから個体性を剥奪する「方法」にほかならない。

 解説:機構が完備され、手順やマニュアルが精緻になればなるほど、個人の自由裁量の余地は減っていきます。機械=方法は、レベルの低い個人でもある一定の水準を保てることを保証しましたが、同時に、個人が創造する自由も奪ってしまいました。手順どおりにものごとを進めるスケールの小さな個人が「よくできる人」ともてはやされ、みずから手順を創造しようと試みる人は逆に「変わった人」扱いされてしまうようなところがあります。勉強でもスポーツでも、決められたとおりにやる人のほうが高く評価されがちです。サッカーのシュートで、まだだれもやったことがない空中一回転シュートをしてみようとか、野球で、漫画にしか登場しない消える魔球を投げてみようなどと試みる人は、どうしても変人扱いされてしまいます。確かに変人だけど……。

 高2年 11.1週 ●日本とはくらべものに(感想文)

 内容:ドイツでは、日本と比べて社会的共通資本が充実している。夜間まで運営されている交通機関や医療機関は市民に安心感を与えている。労働時間も日本より少なく、一日の中に労働と文化生活と家族のだんらんが並行して行われるゆとりがある。

 解説:ヨーロッパの特にドイツやフランスなどには、仕事の能率を上げることよりも人間らしい生活をすることを優先するような風土があります。イギリスやアメリカは、その反対に、仕事を優先する考え方が強いようです。日本はちょうどその中間ぐらいになるのでしょうが、これまではどちらかと言えば、生活よりも仕事を優先するという考え方が強かったようです。

 いま、平日の夕方にお父さんが早く会社から帰ってきて、子供と公園でキャッチボールをするというような光景はほとんどありません。それどころか、単身赴任で月に数回しか家族がそろわないとか、それほどでなくても、日曜日は平日の仕事でくたびれて寝てばかりというようなお父さんもかなりいます。

 ゆとりのない日本の社会の背景にあるものは何かということを考えてみましょう。

 高3年 11.1週 ●言語記号を(感想文)

 内容:言語は、人間の住む環境世界のとらえ方を感覚を超えたものへと拡大した。力が物質となり、物質が遺伝子を持った生物を生み出し、その生物の中から言語が生まれたというのは、宇宙の進化の大きな三つの段階である。言語を、宇宙における人間の地位を位置づけるためのものとして見ることができる。

 解説:これまで、環境問題などが論じられるときは、生き物に優劣はなく、人間だけが特別な生物ではないのだから、ほかの生物との調和を保って生きて行くことが大事だ、というような意見がよく出されてきました。今回の長文は、その考えと正反対で、人間という生物の特殊性を進化の頂点として見ていこうとするものです。こういう考えは、まだ少数派ですから、著者の述べ方もあまり歯切れがよくありません。しかし、それだけ勇気のある創造的な意見だと言えるかもしれません。

 宇宙の進化の頂点として言語を持った生物=人間が登場したと考えると、人間は、宇宙全体から見ると期待のホームランバッターがちょうどバッターボックスに立ったところだと見なすことができます。これまで期待されていたわりには、戦争を起こしたり、核兵器を作ったり、環境を破壊したりと、ドジなことばかりしてきましたが、最後に逆転ホームランを打てるのはやはり人間しかいません。

 大自然は完成されたもののように見ることもできますが、よく考えると、ライオンは嫌がるシマウマを無理矢理つかまえて食べています。そのライオンも年をとれば獲物を捕らえることができず、やがてハイエナの餌食になってしまいます。あらゆる生き物が幸福に暮らせる世界を完成された世界と考えると、今の自然界はまだ不完全なところがたくさんあります。ここで、言語=科学を持った生物である人間が新しい解決策をもたらすことが、ライオンからもシマウマからもハイエナからも期待されているのだと考えることができます。

 人類は、核エネルギーを手にし、遺伝子を操作する力を身につけました。やがて新しい生物を作ったり、新しい物質を作ったり、新しい星を作ったりすることができるようになるでしょう。単なる物質から生命が生まれ、生命から言語が生まれ、その言語がみずから物質をコントロールするようになるのです。何か、漫画の「火の鳥」全巻をいっぺんに読んだような壮大な話ですね。

 話があまり大きくなると、小論文の焦点が定まりにくくなりますから、言語を持った知的生物である人間の役割ということで、社会的な問題として考えていくといいでしょう。

 学生社会人 11.1週 ●仮にいま、平均的な(感想文)

 内容:マンションを建てるだけで周辺に数多くの業種の仕事が発生する。住宅産業は、あらゆる産業の中で特別にすそ野が広い。また、住宅が広くなると、買いたいものが次々と出てくる。住宅が大きくなるかどうかは、中期的に見て、日本経済が立ち直るかどうかを決定するもっとも大きなカギである。

 解説:地域振興券は、景気を浮揚させる効果があまりなかったようです。しかし、いまの日本のようにひととおり道路も橋も建物もできてしまった社会では、公共事業が景気に波及する効果も少ないようです。自動車産業は、戦後の日本を引っ張ってきた産業でしたが、自家用車が普及してしまった現代では、もう大きな成長は望めません。パソコンやゲーム機は、せいぜい数万円なので、これも経済に波及する効果はあまり期待できません。しかし、住宅については、日本の住宅はウサギ小屋と言われるぐらいですから、今多くの人がそれぞれ不満を持っています。

 住宅を広くすることが経済にもたらす効果と、住宅を広くするのに際して考えられる問題点を論じ、今後の対策を考えてみましょう。

  光る表現(中1〜中3) 1999年10月4週号

TERUさん(ふり/中1)の作文より(かつみ先生/10.2週)

 「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざがあるが、今の現代人に最もぴったりなことわざではないだろうか。 評:最もぴったりな、という表現がよかったよ。そして何より、いいことわざをもってきた

アッポさん(うえ/中3)の作文より(ふじのみや先生/10.1週)

 「二兎を追うものは一兎も得ず。」ということわざがあるように、何もかもをしようとして、どれも中途半ぱにするよりも、一つをじっくりすることが大切である。人間なのだから、すべてを完璧にすることは不可能である。自分を犠牲にしてまで用事を片付ける必要はない。人は皆、自分を大切にしていれば良いのだ。 評:大きくうなずいてしまいました。肝に銘じておきたい表現です。

太公望さん(うの/中3)の作文より(スズラン先生/10.1週)

 人間は、追い込まれると普段考えられないようなことを起こす。無理というのは、自分をわざと? 追い込み覚醒して、いろいろなことができるようになるのではないかと思う。評:無理をしてもやらなければならないことが起きたときは、「やるしかない」と思う覚悟も要りそうですね。

 

ユウアイさん(ねも/高2)の作文より(かつみ先生/10.2週)

 もっと社会の矛盾に対して戦っていかなければならない。 評:本当にそうだよね。言いなりになっている時代でなくなっている。おかしいことは、おかしい、声をあげる勇気と、実践する勇気が必要だね。その嬉しい悔しいがあるからスポーツは面白いのだ。 評:嬉しい悔しいという表現がいいね。

T.Oさん(いう/高3)の作文より(森川林先生/10.1週)

 (書き出しの部分)もう暗くなって帰宅途中の会社員や学生の姿もまばらになった頃、その中に紛れて軽目のかばんを背負った小学生の集団がわっと駅前通りに現れる。まだ幼さが残り今まさに遊び盛りのように見える子供たちは、流行のゲームの話題に夢中になったり、その日のテストの出来について言い交わしている。……(結びの部分)夜遅くに塾から飛び出してきた子供達も、志望校合格だけを最終目標にせず更に先を見つめてもらいたいものである。評:書き出しと結びの対応がいいね。