http://www.mori7.com/ 2000年2月2週号 通算第651号 mori7@mori7.com

言葉の森新聞

文責 中根克明(森川林)

  2月11日(金)は休み宿題

 2月11日(金)は休みです。金曜の生徒の2.2週の課題は自宅での宿題となります。ほかの日に教室に来るか、教室に電話をして、先生の説明を聞いてから書くこともできます。

  努力する目標をはっきりと

 作文の評価というものは、全体的な印象で左右されがちです。しかし、作文を書く側にとっては、印象のような主観的なもので評価されているのでは、努力のしがいがありません。そのために、言葉の森では、表現項目や字数の目標を決めています。

 家庭で作文の書き方を指導する場合は、字数の目標というものがいちばん教えやすいと思います。「山のたより」には、子供のそれまでの字数が表示されています。どの子も題名課題や自由課題のときは長く書けて、感想文課題のときは短くしか書けないという共通の傾向があります。しかし、それまでの字数の流れを見ると、子供によって作文の字数はほぼ一定していることがわかります。

 その字数の流れを見て、「いつもこのぐらい書けているから今日は最低でも○○字まで書いて、できれば○○字まで書いてみようね」とアドバイスをします。アドバイスをするときに大事なことは、アドバイスをしっぱなしにしないということです。「○○字まで書こう」と言っておきながら、結果としてそこまで書けなかったときにそれを認めてしまうと、その後のアドバイスに権威がなくなります。「○○字まで書こう」と言った場合は、何がなんでもその字数までは書かせるようにすることが大切です。極端な場合は、大人が半分以上手助けをしてでもいいから決めたことを実行させるということが必要になってきます。

 言葉が権威を持つと、勉強以外の生活面もすべてスムーズに進みます。アドバイスをする場合は、子供の実力をよく見て、慎重に言葉を選ばなければなりません。子供の実力をよく見るためには、「山のたより」などに表示されている過去のデータを参考にすることが必要になります。

 字数のアドバイスが軌道に乗ってきたら、ほかの表現項目の指導も同じようにできます。「今日は必ず『たとえ』を使って書こうね」とか「『書き出しのくふう』をしてから書こうね」というアドバイスすれば、作文を書いたあとも、そのアドバイスに合わせてほめたり注意したりすることができます。注意のしすぎは一般によくないことですが、事前にアドバイスを受けたことに関しては注意されてもあまり苦にならないものです。

 しかし、そのかわり、アドバイスをする際は、その子が努力すればできる範囲というものを見きわめるというアドバイスする側の配慮が必要になってきます。

  来週2.3週のヒント(中学生以上のヒントは次の週に掲載します)

小1年 2.3週 すごくきれいね!(感)

 内容:かあさんジカとさんぽしていた子ジカのトトは、りょうしに会いました。かあさんはトトににげるようにいいますが、トトはにげずにりょうしにたちむかおうとします。そのしせいを見たりょうしは、わらって持っていたてっぽうをさげました。かあさんとトトがにげたあと、りょうしはてっぽうを空にむけてうちました。

 解説:つよいものにもにげないでたちむかうゆうきをトトはもっていました。みなさんも、こわいけどゆうきをだしたことがあるでしょう。むずかしいべんきょうでも、ゆうきを出してたちむかうなどというのもにたはなしになりそうです。お母さんやお父さんににた話をきいてみるのもいいでしょう。また、これまでの読んだ本のなかからにた話をさがすこともできるでしょう。

 感想文はにた話を見つけるところがいちばんむずかしいところです。長く書けなくてもかまいませんから、どういうにた話があるか思い出してみましょう。

小2年 2.3週 先生は(感)

 内容:べんとうをわすれたぼく(代田君)は、となりの席の源ちゃんに、まずしくて弁当が持ってこられないのだと誤解されてしまいます。源ちゃんの話を聞いた先生は同情して自分のお弁当を分けてくれました。お弁当を食べているうちに、ぼくは自分がかわいそうな子に思えてきて、先生に本当のことを言うことができなくなります。翌日、先生は「よくもだましたな」とぼくをげんこつでなぐりましたが、ぼくはなぐられてかえって気持ちがすっきりしました。

 解説:長文集の2.2週と2.3週は続いています。2.2週の長文と合わせて読むと内容がよくわかります。似た話は、「わすれものをしたこと」「やさしい先生のこと」「うそをつくつもりでないのにうそになってしまったこと」「失敗をして学校をやすみたくなったこと」「先生におこられたこと」などが書けると思います。

 うそをつくつもりでないのに結果的にうそをつくことになってしまうという話はときどきあります。うそとは少しちがいますが、電車のなかでおじいさんやおばあさんに席をゆずってあげようとするときなども、「言おうかなあ、どうしようかなあ」と思っているとだんだん言い出しにくくなって、仕方がないから寝たふりをしてしまうということがあります。代田君もすぐに「先生、ぼくはただ弁当をわすれただけなんです」と言えばよかったのですが、言い出しかねているうちにだんだん本当のことが言えなくなってしまったのでしょう。

小3年 2.3週 そのころ、パストゥールは(感)

 捨てようとしていた古いコレラ菌をためしにニワトリに注射してみたら、コレラという病気にかからなくなったという話です。ここから、パストゥールは、その後何百万人もの命を救うことになる予防接種という新しい医学の方法を発見したのです。

 みなさんが小さいころにしたことのあるBCGは、毒性を弱めた結核菌です。以前、結核はこわい病気でしたが、この注射をするようになってから、結核にかかる人はほとんどいなくなりました。

 捨てようとしていたものが役立ったという話で、何か似た話がありそうです。失敗だと思っていたものが成功に結びついたという話も、どこかで聞いたことがあるでしょう。

 弱いもので抵抗力をつけておけば、強いものにぶつかっても大丈夫、というところで考えると、ふだんから薄着をしていれば風邪にもひきにくくなるというような例が考えられます。昔の忍者は、毎日少しずつ毒を飲んで、毒に強い身体に鍛えていたそうです。実は、みなさんのお父さんも、毎日タバコやお酒を少しずつ飲んで、昔の忍者のように毒に強い身体に鍛えているのですよ。(うそうそ)

小4年 2.3週 力もハエと同じ二枚翅(ばね)の(感)

 内容:蚊の雌は卵を生むために動物の血を吸う。蚊にさされたあとがかゆいのは、血液をかたまらせない物質が人の体に入るからだ。蚊の羽音は仲間に自分の場所をしらせる音だ。

 似た話:季節が違うので、書きにくいかもしれません。夏山でやぶの中などに入ると、蚊の大群におそわれることがあります。人間が来るのをずっと待っていたのでしょう。家の中で蚊を見つけて、たたこうとしてもなかなかうまくたたけません。人のおでこにとまった蚊を思いっきりたたいたら、蚊だけにげたということもあると思います。ドライアイスで蚊を集めるなどという実験は、夏になってやってみたらおもしろそうですね。

 蚊は人間から見れば害虫ですが、蚊から人間を見ればおいしい餌にうつるのでしょう。本当はお互いに仲よく共存できればいいのですが……。しかし、あのかゆいのはやっぱりがまんできませんね。

小5年 2.3週 島に住む動物と大陸(感)

 島では、ゾウは小さくなりネズミは大きくなるという法則があるそうです。日本も島国ですから、日本に住んでいる野生の動物は、ウサギやサルやタヌキが中心で、せいぜい大きくてもシカやクマどまりです。これがアフリカのような大きな大陸になると、ゾウとかキリンとかカバとかサイとかゴリラが住めるようになってきます。日本の山にゾウやキリンが住んでいたら、せまくて大変でしょうね。身近なところではあまり経験はないかもしれませんが、大きな集団になると、ピンからキリまでいろいろな人が出てきます。スポーツなどをしている人は、大きな大会に参加するとすごい選手がいたので驚いたという経験があるかもしれませんね。

 ことわざは、「16、井の中の蛙、大海を知らず」など。井戸の中にいると、小さなカエルでも自分がいちばんえらくて大きい生き物のように思ってしまうのかもしれません。

小6年 2.3週 ヨーロッパにおけるリンゴの(感)

 内容:ヨーロッパのリンゴは大衆的な果物だが日本では高級化の道を進んできた。リンゴの袋かけは当初シンクイムシの被害防止が目的だったが、農薬などで別の駆除方法ができた今でもリンゴの色づけのために用いられているところがある。味よりも見た目を優先する日本人の美意識には軌道修正が必要だ。

 解説:似た話は、果物屋さんなどでの豪華なリンゴや果物の話。本屋さんや文房具やさんなどでの買い物での過剰な包装紙なども似た話として考えられます。「中身と見た目」の話はお母さんなどと相談するといい話が見つかりそうです。

 感想は、外見よりも中身が大事だということで考えていくといいでしょう。しかし、日本人の過剰な美意識には相手に対する思いやりや気遣いがあるとも考えられます。

 ことわざは、「71、過ぎたるは……(外見にこだわりすぎると)」「114、花よりだんご(見た目よりも実質)」「112、能ある鷹は……」「127、馬子にも……」など。

  光る表現 2000年2月2週号

瞳子さん(あとふ/小2)の作文より(ミルクティ先生/1.3週)

 わたしは、この長文を読んだあと、わたしの先生とはぜんぜんちがうな、と思いました。わたしの先生なら、「うしろにたってなさいっ! まいかいまいかい同じ子じゃないのっ! どうすればいいかわかったら先生のところにきなさい!」といいます。しつこくいいません。(略)長文の先生は、テレビのインタビューの人みたいにしつこいです。<評>瞳子ちゃんの先生のはくりょくある声が聞えてくるみたい。(^^; 長文の先生のしつこいようすをべつの言葉でたとえたのも、おもしろくてじょうずだね。

すずらんさん(あふよ/小2)の作文より(ミルクティ先生/1.3週)

 うそをつくと頭がガンガンして、いわなければよかったな! と思います。やっぱり小さいうそでもついたらいけないんだな! 昔からうそつきはどろぼうのはじまりって言うもんね!<評>「うそつきはどろぼうのはじまり」という、ことわざをつかって、思ったことをしっかり書けたね。(^o^)v

勇治さん(あまみ/小2)の作文より(スピカ先生/1.3週)

 しゅくだいをまいにちやることをしゅうかんにしたほうが1ばんいいとぼくは思います。それにねるときにカバンをよーくみとけばしゅくだいをわすれなくできるとおもいます。 評:しゅくだいをわすれて、ウソをついてしまった主人公にたいするかんそうとして、自分の考えを書くことができたね。いいアイデアだと思います。

芽恵照さん(そて/小3)の作文より(スズラン先生/1.3週)

 すごく小さい生き物なのに、いっぱい集まると、すごくいりょくが高くなるんだなぁと思いました。評:目には見えないような小さなものの働きのすごさを感じましたね。

キティさん(とあ/小3)の作文より(みち先生/1.2週)

 そっと拾ってみると、かたくて、やわらかそうでした。でも、さわるのもいやだから落っことすと、きゅうに、ピクピク、ピクピクとかすかにふるえているように思えます。(中略)「わっ。」といってにげました。(中略)げんかんの所でねっこみたいなものがせのびしたりしておもしろくてたまらなかったので、つまんでみました。そしたら、なにかを言っているみたいに、くるくる動いていました。ふきだしそうになったけど、もう帰る時間だから帰りました。でも、ねっこみたいなものはいったいなんだったのでしょう。評:こんな寒い中でも、じっとして生きているものをみつけたのですね。それはかすかな動きを見つけたところが大変すばらしい。

友理絵さん(ああて/小4)の作文より(とこのん先生/1.3週)

 (おともだちのお家にお泊りして)わたしは、なかなかねむれずにみんながねてからもういっさつの本を(お友達のお母さまに)よんでもらいました。そして、よくねむることができました。 評:お友達のお家に泊って、なんだか興奮して眠れない・・・そんなとき、私もありました。おともだちのおかあさまが優しくして下さって、安心して眠ることができたのですね。とてもすてきな思い出です。

早織さん(あこて/小4)の作文より(みち先生/1.2週)

 でも、わたしはむしがきらいです。評:自分の意見をはっきりいいきったいさぎよさが気持ちいい文です。

慶彦さん(あふこ/小4)の作文より(ミルクティ先生/1.3週)

 ぼくは、この長文を読んで、アメリカシロヒトリが八百から千個のたまごを産んでも四、五匹しか成虫にならないなんてビックリしました。(略)また都市にこのガが大発生したらどうなるでしょう。<評>書き出しで一番びっくりしたことを書いてしっかり中心を決めることができたね。結びの文章も読む人の想像力を刺激する感じで、すてきだね。

マーボーさん(あみそ/小4)の作文より(きょうこ先生/1.3週)

  「アメリカシロヒトリは、卵の多さのわりには大人が少ないことでは、害虫ではないけど、まるで亀みたいです。なぜかというと、やはり鳥達に食べられているという点では共通しているからです。」 ガであるアメリカシロヒトリを亀にたとえちゃうなんてびっくり!! 仁敬くんの頭に浮かんだとてもすてきな表現でした。

ベフラッタさん(すゆ/小4)の作文より(ふじのみや先生/1.3週)

 (あさごはんには)おみそしるとごはんを食べます。時間がとまっているみたいに いつまでも食べれません。 ☆ねむ〜い、ねむ〜い魔法にかかって、悠ちゃんの体の時計が動かないのですね。

 

 

直茂さん(ねさ/小4)の作文より(ももんが先生/1.3週)

 ぼくは、学校で、木を見上げたとき、ケムシが、いっぱいついているのを見ると、つい体がぶるぶると、ふるえてしまいます。評:「つい体がぶるぶると、ふるえる」というのがいいですね。とってもきらいなのが、よ〜く伝わってきます。

スライムさん(あめひ/小6)の作文より(ミルクティ先生/1.3週)

 『朝ごはん』でも、テレビで見ていても家族でごはんを食べる子供がへっている。だから、もっと家族でふれあう時間が必要だと思う。私はできるかぎりこれからも、お父さんや弟といっしょに朝ごはんを食べていきたい。(略)人間にとって食事の時間はふれあいの時間である。ただでさえ一日のほとんどが学校にいるのだから、朝ごはんなどの時間はとても重要である。<評>朝ごはんというテーマで、自分の話だけでなく、最近の子供たちの状況や人間にとって〜という大きな視点からの意見が書けたね。

エガさん(てせ/小6)の作文より(とこのん先生/1.3週)

 人間の大人とは、絶対ある、という先入観があるからいままでなかったことに驚く。 評:「常識」でくくられるような毎日の出来事に慣れきってしまって創造力や柔軟性がどんどん低下してゆく、ということを、「先入観」という言葉を上手く使いながら分析しています。

魔法使いさん(あちほ/中1)の作文より(スズラン先生/1.3週)

 「一人の敵も作らない者は、一人の友も持たない」という。すべてを周りにあわさなくてもいいけれど、団体行動は大切だ。今、私達は学校でそれを学んでいる。評:社会生活のルールで、なにが大切であるかということを学ぶことの重要性を考えていますね。

幸子さん(あさも/中2)の作文より(スピカ先生/1.3週)

 かの有名なぴかそなんかも、今までの絵の世界をくつがえすようななんか私には理解できないようなどうやらすばらしいらしい絵を描いた。芸術なんかは真似したって良いものはできない。(略)確かに真似をする事も真似をしない事も大切だが、大事な事はその時その時にふさわしい行動をとる事ができるか、である。マナーの必要なときはマニュアル(?)どおりにある程度動き、個性が大切なときは個性を爆発させればよいのである。 評:ユーモアのある表現で、反対意見への理解を書いたね。「総合化の主題」もうまい!

香奈子さん(いし/高2)の作文より(ミルクティ先生/1.2週)

 近くの川を見て欲しい。かなり前からではあるが自然破壊、汚染は数々の問題になってきた。川を見てみれば、そこにはあたりまえのように都会生活を思わせるゴミが浮いている。もはや川は川でなく、ゴミの生活場所となっている…。とても醜い姿だ。風景に“心”があると考えるのならば風景=人と考えられはしないだろうか。人は人の気持ちを考え、行動すべきである。ならば自分の利益又は損得のためだけに動いていて良いのだろうか。自分のために風景を乱していて良いのだろうか。資本主義的営利関心のつくりだす物を一概に「すばらしい」とは言えない。<評>書き出しの意見の前に、「川」という具体的なイメージを書いているところがいいですね。