KotobanomoriNo.727

言葉の森新聞

2001年9月2週号

文責 中根克明(森川林)

  プログラミング言語を学ぶ意義

 かつて、剣と馬で戦った時代から鉄砲隊による戦いへと、戦争の戦略が大きく変化した時代がありました。鉄砲隊の戦略を立てる人は、自身が鉄砲を撃つ必要はないとしても、鉄砲の撃ち方を知っておく必要がありました。

 コンピュータとインターネットは、これからの時代の鉄砲です。すると、戦略を立てる立場に立つ人にとっては、そのコンピュータとインターネットでどういうことができるのかという技術的なことをある程度知っておく必要があります。

 しかし、不幸なことに、技術進歩のスピードが速すぎるので、現在の学校教育は、小中高はおろか大学でさえも、現代の情勢に必要な技術的教育を十分に用意することができていません。

 将来、学校教育がIT教育をカバーするようになるはずですが、それには時間がかかります。それまでの間、若い人々は独学でこの分野の勉強をしていく必要があります。

 もちろん、教育の普及と並行して、鉄砲の撃ち方自体も改良されていきます。火薬をつめて、火をつけて、弾をこめて、という面倒な作業なしに、いきなり取り出してバンという便利な(物騒な^_^;)鉄砲も開発されていきます。

 コンピュータとインターネットの分野でも、プログラミング言語までさかのぼらずに、マウスで引っ張ってぐいというプログラミングの仕方も開発されていきます。将来は、マウス自体もなくなり、手で積み木を積み重ねるようなかたちでプログラミングができるようになるでしょう。現在、研究されているのはGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)ならぬTUI(タンジブル・ユーザー・インターフェース)なのだそうです。

 だれでもがバカチョンカメラを持つように鉄砲やプログラミング技術を持つことができるようになれば、それを前提にしてまた新しい戦略が必要になります。機関銃の使える時代に「いやあ、やっぱり鉄砲は火縄を使う方が味がある」と言っていては時代に取り残されます。同じように、TUIの時代に、「やはり、プログラミング言語を基礎から勉強しなきゃ」と言っていては逆に取り残される可能性があります。プログラミングの世界では、「車輪をもう一度発明する必要はない」ということがよく言われます。便利な道具ができれば、便利な道具の使い方を学べばいいのです。

 情勢を見極めながら、古いものを脱ぎ捨てる勇気と、新しいものを取り入れる向上心がとりわけ必要になっているのが、現代という時代なのだと思います。

  読書指導と組み合わせた作文指導を

 現代の日本では、小学校低中学年までの読書環境は質量ともに充実しています。小学校3・4年生までであれば、わざわざ図書館まで行かなくても、近くの書店で良書がすぐに手に入ります。ときどき、小学校中学年で「どういう本がいいでしょう」という質問を受けますが、小学校低中学年のうちは書店に行って手軽な本を選べばよいのですから、選択に迷う必要はありません。

 しかし、小学校高学年になると、読書環境は急速に貧困になってしまいます。ちょうどこの時期に中学受験が重なることも影響して、高学年で読書習慣を維持できる子は次第に少なくなります。中学・高校では、夏休みの宿題で読書感想文の課題を出すだけで、読書指導などはほぼ全くありません。中学・高校時代に読書習慣を持たない生徒は、そのまま本を読まない大学生になっていきます。

 学校での読書指導がない中で、中学生や高校生で本を読みつづける子の多くは、小学校の延長で物語中心の本を読むことになります。読書という趣味の分野は、もともとどういう本をどう読んでもかまわないものですが、読書の幅が物語的なものに狭く限定され、それ以外の人文科学、社会科学、自然科学のより広い分野に進まないというのは、やはり教育の側で、読書のアドバイスを用意できていないことが大きな原因になっています。

 作文の勉強との関連で言うと、読書力のある子は、小学校低中学年では、なめらかでリズミカルな表現ができます。小学校高学年や中学生では、意見や感想に深みが出てきます。高校生では、体験実例以外の社会実例を読書から幅広く引用できます。学年が上がるほど、よい文章を書こうと思えば、単なる表現の技術だけでなく、読書のバックボーンが必要になってくるのです。

 「小論文教室 内田保男著 増進会出版社」は、高校生向けの小論文参考書として優れた内容のものですが、その巻末に「推薦図書一覧表」が掲載されています。発行年数の古いものが多く、最近の本はあまり入っていません。また中には既に絶版になっているものもあります。しかし、ここに載っているような本や「言葉の森の高校生向け推薦図書一覧表」が、高校生・大学生の必読書と考えておくとよいと思います。

 これらの一部を下記に転載します。ここに載っている著書や著者を見て、その本を読んだことがあるか、または同じ著者の別の本を読んだことがあるというものが多ければ、その人は高校生としてレベルの高い読書をしていると言っていいと思います。読書は好きだが、これらの一覧表にあるような本はほとんど知らないという人は、読書の幅をもっと広げていく必要があります。

 日本では、読書は国語の勉強と思われているために、国語の先生が指導する場合がほとんどです。そのために、読書指導は、文学的なものに偏る傾向があります。本当は、数学や社会や理科の先生も含めて、更に言えば先生という職業ではない人も含めての読書指導が行なわれる必要があります。

 

「小論文教室」の推薦図書一覧表から一部を抜粋

言葉の森の高校生大学生向け推薦図書一覧表

福翁自伝

福沢諭吉

勉強は技術

矢矧晴一郎

JMA

自己の探求

中村元

知的好奇心

波多野・稲垣

中公新書

旅人

湯川秀樹

高校生になったら

田代三良

岩波ジュニア新書

我が精神の遍歴

亀井勝一郎

方法序説

デカルト

岩波文庫

人間の詩と真実

霜山徳爾

教育入門

堀尾輝久

岩波新書

哲学以前の哲学

松浪信三郎

青春論

亀井勝一郎

角川文庫

甘えの構造

土居健郎

黄金の言葉

亀井勝一郎

大和人生文庫

モラトリアム人間の時代

小此木啓吾

勉縮のすすめ

松山幸雄

朝日文庫

タテ社会の人間学

中根千枝

人間であること

時実利彦

岩波新書

雑種文化

加藤周一

武器としてのことば

鈴木孝夫

新潮選書

風土

和辻哲郎

日本語の論理

外山滋比古

中公文庫

論集日本文化

梅棹忠夫・多田道太郎

文学入門

桑原武夫

岩波新書

日本の思想

丸山真男

二つの顔の日本人

鳥羽欽一郎

中公新書

文明の生態史観

梅棹忠夫

見える学力、見えない学力

岸本裕史

大月国民文庫

情報化社会

林雄二郎

世界の歩み(下巻)

林健太郎

岩波新書

「耕す」文化の時代

木村尚三郎

エミール(上)

ルソー

岩波文庫

ことばと国家

田中克彦

君たちと現代

宮田光雄

岩波ジュニア新書

ことばと文化

鈴木孝夫

甘えの構造

土居健郎

弘文堂

述語集

中村雄二郎

近代の神話

木村尚三郎

中公新書

文章読本

丸谷才一

タテ社会の人間関係

中根千枝

講談社現代新書

文章作法

桑原武夫

和魂和才のすすめ

木村尚三郎

角川文庫

近代の神話

木村尚三郎

日本の思想

丸山真男

岩波新書

歴史とは何か

E・H・カー

文明の生態史観

梅棹忠夫

中公文庫

技術と人間

星野芳郎

テクノヘゲモニー

薬師寺泰三

中公新書

科学技術は人間をどう変えるか

石井威望

ソロモンの指環

ローレンツ

早川書房

世界経済をどう見るか

宮崎義一

技術と人間

星野芳郎

中公新書

学校・学歴・人生

森嶋通夫

科学技術は人間をどう変えるか

石井威望

新潮選書

わが体験的教育論

中野孝次

弁証法はどういう科学か

三浦つとむ

講談社現代新書

学問と人間形成の間

福田歓一

医者と患者と病院と

砂原茂一

岩波新書

人間の権利

村井実

人間の研究

船井幸雄

PHP

理科系の作文技術

木下是雄

知的生産の技術

梅棹忠夫

岩波新書

科学者の社会的責任についての覚え書

唐木順三

水と緑と土

富山和子

中公新書

人間にとって科学とは何か

湯川秀樹・梅棹忠夫

生物の世界

今西錦司

講談社文庫

時間の科学

村上陽一郎

先端技術のゆくえ

坂本賢三

岩波新書

私の自然観

今西錦司

いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか

シュタイナー

イザラ書房

生物の世界

今西錦司

人間にとって科学とは何か

湯川・梅棹

中公新書

水と緑と土

富山和子

大学で何を学ぶか

隅谷三喜男

岩波ジュニア新書

人間であること

時実利彦

哲学の改造

デューイ

岩波文庫

こころの旅

神谷美恵子

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

ウェーバー

岩波文庫

生命と自由

渡辺慧

学問のすすめ

福沢諭吉

岩波文庫

   

職業としての学問

マックス・ウェーバー

岩波文庫

   

ドイツ・イデオロギー

マルクス・エンゲルス

岩波文庫

   

社会契約論

ルソー

中公文庫

   

生命の発見

野澤重雄

PHP研究所

   

生命(いのち)の暗号

村上和雄

サンマーク出版

   

人間この未知なるもの

アレキシス・カレル

三笠書房

   

フランクリン自伝

フランクリン

岩波文庫

   

日本経済の迷路を解く大予言

星野芳郎

青春出版社

   

生きがいの創造

飯田史彦

青春出版社

 

  光る表現(小1−社) 2001年9月2週号

●真水さん(いすく/小2)の作文より(ももんが先生/8.3週)

 食べおわると、わたしは、いいことを思いつきました。おさらあらいをして、お母さんをびっくりさせようと思いました。りくにいっしょにするかどうか、きいてみると、りくが「うん、するー。」と、言ったので、わたしが、おさらをあらって、すすいで、りくが、ふきんでふいて、たなになおすというふうにかかりをきめました。わたしとりくは、お母さんが帰ってきたらどんなにびっくりするか、楽しみにしながら、いっしょうけんめいあらいました。おかあさんが、しんぱいして、でん話をしてきましたが、そのことは、ないしょにしておきました。【評:「心の中で思ったこと」をとても上手にまぜながら、るすばん中のできごとが書けています。弟さんと二人で、大活やくでしたね(^o^) !】

●香里さん(いたれ/小2)の作文より(ももんが先生/8.4週)

 つぎに、わなげをしました。わたしは、五こあるうち四こはいりました。かっちゃんは、一こはいりました。さいごに、わなげの人が「うまかったからゼリーあげる。」と言ってオレンジゼリーをくれました。わたしは「ありがとう。」と言って、つぎにすいかわりにいきました。【評:かずをつかって、くわしいせつめいができました。かぎかっこのつかいかたも、とてもじょうず!(^o^)。】

●泰児さん(いおと/小3)の作文より(ミルクティ先生/8.4週)

 ダイナマイトの一番悪い使い方は、せんそうに使うことです。せんそうをやりたがっている人間は、ダイナマイトを使って人をころします。ダイナマイトが地球になかったら、せんそうの時ダイナマイトがあった時よりも人があまり死ななかったと思います。そのわけは、てっぽうを一回うった時よりも、ダイナマイトを一個使ったほうがてっぽうよりもいっぱい人が死ぬからです。ダイナマイトをせんそうに使うような悪い人は、心を入れかえてほしいです。アルフレッドは、もしダイナマイトがせんそうに使われることを知っていたら、ダイナマイトを作らなかったと思います。ぼくは、ダイナマイトがなかったほうが、よかったと思います。そのわけは、人がいっぱい死ななかったからです。<評>ダイナマイトの悪いところについて、自分の考えをしっかり書けたね。その理由も、ていねいにせつめいしてあって、わかりやすかったよ。最後に、アルフレッドの気持ちについて考えたことで、感想文らしくなりましたね!

●春まきくんさん(いせね/小3)の作文より(メグ先生/8.3週)

 ぼくは、この話をよんで、いちばんおどろいたことは、ニトログリセリンはこわいということです。いつばくはつするかわからないし、いくらいのちがあってもたりません。【評】本当だね。いのちは、ひとつしかないから、できればニトログリセリンには近づきたくないよね。

●アッキーさん(いそか/小3)の作文より(ももんが先生/8.3週)

 わたしは、その中でも、一番すきなのは「えびカツレツ」です。なぜかというと、えびが五本ぐらい入っていて、そのえびがぶりぶりしているからです。【評:ぶりぶりという表現がとてもいいですね。うーん、おいしそう〜(^o^)!】

●マーヤさん(いちこ/小3)の作文より(さかな先生/8.3週)

 わたしが、小さい時から、大切にしている物は、ハート形で、上に、ガッキをもったてんしがのっています。そのてんしは、花でつくったかんむりをかぶり、オレンジっぽい、きれいなきれが、かかっています。かわいいバイオリンをひいていて、すわっています。足もとに、ばらの花がさいています。はねはほそくて、こわれやすいといったかんじです。★評:天使のついたすてきな入れ物の様子、目に浮かぶようですね。

●みいきんさん(いきゆ/小4)の作文より(ももんが先生/8.3週)

 「ブイイィィィン。」「キキィーッ。」【評:作文の書き出しです。到着した車の音を、とてもユニークに表現していますね。】

●稜さん(いしお/小4)の作文より(スズラン先生/8.2週)

 (ジュラシックパークで)いよいよ出発です。小船は動きだしました。最初の方は恐竜のもけいだったけれど、うす暗い建物に入ってから、なぜかきんちょうしてきました。:評:これから何が始まるのかなと、ドキドキしてきたことが伝わりますね。

●しょうたさん(あたの/小5)の作文より(きょうこ先生/8.3週)

 「次は忍者怪怪亭に行きました。そこは、家でなぜか斜めで中に入ると、気持ちえ悪くなりました。すごく気持ち悪くなってきて、歩きにくくて、早く出たくなりました。外が見えまた。やっと出たと思ったら、この家の庭で庭まで斜めで気持ち悪かったです。次も外が見えて、そこは、本当の外でした。良かったです。」最後にやっと「本当の!」外に出れてよかったね♪ 捷太くんのホッとしている顔が浮かんできそうでした☆ いつもなら当たり前の平らな世界が、とっても貴重に感じられた瞬間だったかもしれないね。

●りんごさん(いしも/小5)の作文より(ふじのみや先生/8.1週)

 他にも、直接ケガをしなくても、人からケガの話を聞くといたくなったりする。(間接ケガ?)それはその体験をしたときのいたさと 話の内容のいたさが結びついたいたさなのかな?  評:間接ケガ…おもしろい表現の仕方ですね。特に親しい人のケガの話を聞いたとき、こんな経験がありそうです。

 

●おこじょさん(あめお/小6)の作文より(メグ先生/8.3週)

 もっと国会にも笑顔を増やした方がいい。これこそ本当の「笑う門には福きたる」だと思う。笑っていればいいことが浮かび、それが日本を助けるとも思うし、雰囲気で、国会の議論の中継を観ていて、政治好きになる人もいると思う。【評】笑いとは、想像以上大きな力を持っているものですよね。

●たかやんさん(いくの/小6)の作文より(スズラン先生/8.2週)

 題名「本は読まなきゃ始まらない」:評:う〜ん、なかなか説得力がある題名ですね。

●バンビさん(いそせ/小6)の作文より(こあら先生/8.3週)

 ひとつのことでもユーモアのある言い方とユーモアのない言い方とではずいぶん相手の受け取り方が違ってくると思います。暗いようなことを話す時でもユーモアがある話し方だと少しは明るい話に近づくと思います。【評】暗く考えても、現実は変化しないのだから、どうせなら明るく考えたほうがいいですね。

●たごさくさん(あによ/中1)の作文より(ミルクティ先生/8.3週)

 確かに、友達なぞいなくてもマイペースでつき進むという人がいても結構である。しかし、人生にはたくさんの友人がいたほうが楽しいし、「良い友人を得たければ、まず自分が良い友人でなければならない」という名言もある。マイペースでつき進むのではなく、たまにはより道をしてもいいのではないだろうか。<評>友達ができない理由について書いたあとのまとめの部分。名言を引用して自分の意見をより印象づけていますね。

●美絵さん(いさほ/中1)の作文より(かつみ先生/8.3週)

 臆病者は、私でもある。  評:私でもある、という表現が、ぐっときたよ。

●たば星人さん(あころ/中2)の作文より(けいこ先生/8.3週)

 「トランプ(が)生きているのは、実際にプレーに使われているときである。」という名言がある。目のことも同じで、心の目が生きているのはつかっているときだけなのである。誰にでも心の目はあると思う。しかしそれを使うか使わないかでその、心の目が生きているか死んでいるかが分かれるのだと思う。 評:「見える」ということで、本来持っているはずの「心の目」の働きが鈍るのかもしれないね。 

●舞さん(あおき/高3)の作文より(こあら先生/8.4週)

 我々は沈黙を嫌う傾向がある。だからこそ友達と一緒のときには何か話題を探し、沈黙にならないようにするのではないだろうか。そして、その沈黙への嫌悪は私生活にも及んだ。一人でいるときの沈黙も嫌だと感じ始めたのである。【評】一人で考える時間はとても有意義だと思いますが…舞ちゃんはどう思いますか?

●ノッポさん(いえは/高3)の作文より(森川林先生/8.3週)

 これから私たちが解決しなくてはならないのは、知識を中心とする学問を否定するのではなく知識の活用方法を学ぶ事である。◆評:こういう書き方は名言になるね。一度、こういう自分なりの考え方を作り出せると、これをいろいろな場面で応用できるようになるよ。

●○○○○さん(あう/社)の作文より(森川林先生/8.2週)

 人生トータルで見れば「プラスマイナス・ゼロ」になると言う話を聞いたことがある。だとするならば、私自身の人生においても大きな壁が立ちはだかる日がいつか来るのかもしれない。 では、その時どのような態度で理不尽な運命を受け入れれば良いのだろうか。◆評:長文の課題を自分の問題に結びつけて論じたところがいい。このように、常に自分ならどうするかと考えていく姿勢は大事だね。

 

 

 

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