言葉の森新聞2003年9月2週号
文責 中根克明(森川林)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇創造性を育てる作文・読解・国語◇◆◇◆◇
                              
    毎週担当の先生から電話の指導がある続けやすい通信講座
    自宅で無料体験学習を受けられます
    お申し込みはこちらからどうぞ
    https://www.mori7.com/

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■■短文集のページができました
http://www.mori7.com/mine/tannbunn.php
 インターネットエクスプローラ5.5(IE5.5)以上で見ると、印刷物と同じ縦書きで表示されます。IE5.5未満やネットスケープの場合は、横書きで表示されます。


■■「どんな子だって勉強できる子になれる!」から(3)
 向山さんは、算数の勉強法についてわかりやすく書いています。
 その要点は、(1)教科書の問題を全部できるようにする、(2)ミニ三角定規などを使ってていねいに書く、(3)間違えたところを消しゴムで消さずに残しておく、などです。このほかにもいろいろなヒントが具体例が絵でわかりやすく説明されているので、小学生の子供さんをお持ちの方はぜひ一読されるとよいと思います。うちはもう手後れですが。(笑)
 また、向山さんは、算数のよくない教え方として、練習をせずに説明をし過ぎる教え方を挙げています。
 これは、算数に限らずほか教科についても当てはまることのように思います。子供に実力をつけさせるためには、説明をくわしくするよりも、まず実際の練習を何度もさせるということが大事です。
 水泳の練習などを考えればわかるはずですが、泳ぎ方の説明をどれだけくわしく話しても泳げるようにはなりません。しかし、子供は泳げないときほど説明を聞きたがります。また教える側も、説明をしていると熱心に教えているような気がして安心しがちです。ところが実際には、説明は極力短くして、あとは実際に繰り返しの練習をさせた方が早く実力がつくのです。
 よく「どうしたら子供が本を読むようになりますか」という質問をお母さんから受けます。答えは、「まず何しろ毎日○ページ以上と決めて読ませてください」です。「言うことを聞かないんです」という場合は、「お母さんが言うことを聞かせられなければ、ほかの人が言うことを聞かせることはできません」と答えるようにしています。毎日○ページ以上と決めて読んでいれば、読む力がついて読書好きになります。強制して嫌いになっては困るとか、本は強制して読むものではないとかいう理屈にとらわれて、子供が読書好きになるうまい方法の説明を求めていれば、その間に子供はどんどん読書から遠ざかっていきます。説明よりもまず実行ということが読書にも勉強にも大切です。
(つづく)


■■受験(その7)
 今の大学入試は、受験科目さえ合格点になれば合格できますが、それは逆に言えば、受験科目にない科目では本人の学力がどの程度かはわからないということです。大学入試が英語と国語と日本史だけで合格できたとしても、社会に出れば数学や化学の素養も必要になってきます。もっと広く言えば、大学入試までは勉強さえできればよかったとしても、社会に出れば勉強以外の幅広い教養も必要になってきます。
 と考えると、子育ての目標も、将来社会に出てどういう人間になるかということを考えたものにしていく必要があります。
 今の親の世代は、いい学校に入るところまでが目標で、その先にどういう人生を送るかという目標まで持っていなかった人がほとんどです。経済が右肩上がりに上昇していく成長期には、ある意味でそれでも充分でした。勤めている会社は順調に拡大し、それに応じて年功序列で次第に給与も地位も上がり、定年後は安定した年金生活が保証されているという社会では、いい学校に入ればトコロテン式にいい会社に就職でき、トコロテン式にいい老後まで送れるという設計図が成り立ちました。
 しかし、今は違います。デフレ基調の社会では、会社に入ること自体が一苦労です。会社の選び方によってはいつ倒産するかもわかりません。企業は土地や正社員など重荷になるものは極力削減しようと考えていますから、再就職も年齢に応じて困難になります。
 更に、労働力は常に供給過剰の状態で推移しますから、失業をしたくなければ低賃金に甘んじなければならないというジレンマに置かれます。その原因は一つには、国境が限りなく低くなった世界では、中国などの低賃金がそのまま日本の労働市場に反映するからです。もう一つの原因は、コンピュータ技術の発達によって、機械によって置き換えられる仕事が次々と広がっているからです。
(印刷物の言葉の森新聞はここまでです。続きはウェブをごらんください)
http://www.mori7.com/mori/m20030902.html

 程度の差はあれ、みんながそれぞれに勝ち組だった高成長経済の社会から、勝ち組と負け組が二極分化していく低成長社会に今突入しようとしているのです。この原因は、自動車産業をはじめとする大衆の消費を牽引する強力な産業が、社会の中で飽和状態に向かいつつあるからですから、この低成長の傾向は次世代のリーディング産業が登場するまで長期間にわたって続く可能性があります。この時代に、みんなと同じ道を歩くことは、みんなと同じ負け組に入るということを意味します。しかし、社会全体の経済力は向上していますから、昔のように赤貧洗うがごとくという負け組ではありません。普通の負け組です。
 このような時代を生きるときの参考になるのは、やはり同じような安定成長が長期間にわたって続いた江戸時代です。今日の大企業の社員にあたるのが当時の武士階級です。武家政権の成長期には武士になることが名誉でもあり安定した収入を保証されることでもありました。しかし、安定期に入ると、限られた役職の中で出世することは次第に困難になり、下層武士階級は副業がなければ生活が成り立たないような境遇に置かれるようになりました。この時代に経済力をつけてきたのが、新興の町人階級です。また、個人的な芸術の才能を生かして、それらの町人階級や上層の武士階級の需要に応えるような層も出てきました。
 これからの時代も同じです。単に大会社に入るだけでは、負け組に入ることと変わりません。会社の中で常にリストラの圧力にさらさながら限られたポストを目指す競争をしなければなりません。なぜなら、現代の社会ではほとんどの企業は既に供給過剰の能力を持っているからです。販売が拡大しない以上、会社の業績を上げる方法は内部の効率化しかありません。
 このときに頼りになるのは、個人のタレントです。ほかの人で代替できない能力や技術を持っている人は、大会社に入ろうが入るまいが豊かな生活を送ることができます。代替できる能力しか持っていない人は、それがどんなに優れた能力であれ過酷なリストラ競争に巻き込まれざるを得ません。
 そして、この代替できる能力の典型的なものが、若さと受験勉強で評価された能力です。勉強はしっかりできなければなりません。また若さは可能性に満ちています。しかし、勉強ができて若くて希望にあふれていればいいというのではないというのがこれからの時代の特徴なのです。
(つづく)


----------------------------------------------------

■MagMagからのメールマガジンの登録と削除は下記のページで
(▼ダイジェスト版 マガジンID:0000000226)
https://tinyurl.com/ybkrlw5b
(▼完全版 マガジンID:0000132951)
https://tinyurl.com/yakxr3w3
■これまでの言葉の森新聞は下記のページで
https://www.mori7.com/mori/
■ホームページ
https://www.mori7.com/
■メール
mori@mori7.com
【事務局用】 ユーザー: パス: