言葉の森新聞2005年10月3週号 通算第907号
文責 中根克明(森川林)

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■■皆勤賞について
 皆勤賞は、直近5ヶ月で集計しています。9月1週の試験の場合は、4.1週〜8.4週が集計範囲でした。
 この5ヶ月20週の中で、20週全部出席の金賞の人が184人もいました。人数の割合で、10%金賞、10〜20%銀賞、20〜80%銅賞としていますが、全出席の人はもちろん金賞です。そのため、銀賞は該当なし、3〜19週の出席者が銅賞になりました。
 この5ヶ月の中には、ゴールデンウィークもあり、夏休みもありました。それにも関わらず皆勤賞になった184人の人、そして、わずか1日か2日休んだだけで惜しくも銅賞になった何百人もの人は、それぞれとてもよくがんばったと思います。


■■作文文化を作る(1)
 最近、作文や小論文に対する関心が高まっているようです。その原因は、三つ考えられます。
 第一は、少子化に伴い学校教育に余裕が出てきたためです。特に、入試の面で、これまでのような多数の受験生を短時間で採点評価する必要性が薄れ、より少数の受験生をより長期間で採点評価することが可能になってきました。その具体的な例は、推薦入試やアドミッション・オフィス入試に見られます。また、公立中高一貫校でも、作文試験を課す入試スタイルが増えているようです。
 第二は、この入試スタイルの変化によって、塾や学校でも作文指導を取り入れるようになったことです。ここでも生徒数の減少によって、個別対応の面が強い作文指導にも対応することができるようになってきました。また、作文指導が国語力の向上に役立つという情報が広がったことも、作文の関心を高めることにプラスになっています。
 第三は、インターネットやEメールの普及によって、ビジネスの現場で文章を書く機会が増えてきたことです。企業の入社試験で、志願者がエントリーシートに文章を書く機会が増えてきたことなども、作文力に対する関心が高まっている要因になっています。

 このような状況の中で、私たちの行っている作文指導・評価も、現在の社会のニーズに呼応したものだと考えている人も多いと思います。現に、問い合わせの中には、受験生やその親からのものも多く、私たち自身も、受験に対応できることを一つのうたい文句にしています。しかし、私たちが二十数年前から作文の指導と評価に取り組んできたのは、このような目先のニーズを考えたからではありません。1970年代に東京都港区の貸会場で大学生対象の作文教室を最初に始めたとき受講生は4、5人でした。その後、神奈川県鎌倉市のカルチャーセンターで最初に小中学生対象の作文教室を始めたときの受講生は小学生2人だけでした。このころの指導の理念は、「個性・知性・感性を育てる作文」又は「創造性・思考力・感受性を育てる作文」でした。その理念は、それから二十数年たった今でも変わっていません。

 しかし、最初のころは、この理念だけが空回りしていました。それは、指導自体が軌道に乗っていなかったからです。作文教育に関する本は何十冊も読んで研究をしていましたが、実際には、学年相応のレベルよりもかなり高いことを子供たちに要求していたようです。現在、教室で小学6年生が勉強しているぐらいの内容を、小学4年生の子供たちに教えていました。また、大学受験生レベルの内容を中学生の子供たちに教えていました。感想文の資料として中高生3、4人にデカルトの「方法序説」を読ませたときは、全員がそのまま寝てしまったこともあります。このような消化不良の指導を続けながら、試行錯誤の中でだんだんと学年相応の指導が実感としてつかめるようになってきました。また、私自身指導が未熟であったために、授業中に騒ぐ子もよくいました。作文の勉強は、他の勉強と異なり、私語が交わされると勉強が著しく阻害されます。そのため、二度注意されたらゲンコツ又は退場というルールを決めて実行していました。もちろん、その厳しさが理由で辞めるという子はいませんでしたが、今になってみると、それほど厳しくしなくてもよかったと思います。

 自分の子が小学1年生から作文教室を始め、その後ときどきさぼりながらも高校3年生まで勉強を続ける中で、次第に仮説が立証され、指導に現実的な確信が持てるようになってきました。いちばんの大きな確信は、作文の実力は週1回の勉強でつくのではなく、毎日の長文音読と読書でつくというものです。
 指導が軌道に乗るにつれて、もう一度作文指導の理念の現実を結び付けておく必要性を感じるようになりました。そうでないと、作文指導というものが単に受験に役立つとか、国語の成績に結び付くなどというレベルで受け取られてしまうからです。もちろん、作文の勉強が受験の文章力や国語の読解力・表現力の育成に役立つことは言うまでもありません。しかし、それは、あくまでも表面的な目標であって、その先にある作文学習の本質を考えなければ、指導もまた表面的な技術指導で終わってしまうからです。


■■まるごと好きになろう(うるっち/かん先生)
 みなさん、こんにちは。先日、なつかしい本に出会いました。それは「まるごと好きです」という本。中学のときにこの本を読んで感想文を書き、何かの賞をいただいたことがあったのです。幼いころから何度も転校を繰り返し、友達づくりがすっかり上手になってしまった著者の、人付き合いのコツのような、いわば生きるヒントが書かれた本です。もう一度読みたくなり、つい手に取ってしまいました。

 進級試験の週に「私の長所短所」という課題が出た人もいましたね。みなさんは自分の長所と短所について即座に答えることができますか? けっこう難しいでしょう。短所ばかりが目について長所はさっぱりわからないという人も多いものです。だれにでも長所があれば短所もあります。長所、短所どちらもその人の個性を形作る大切な要素なのです。たとえば、一番仲良しな、大好きな友達のことを思い浮かべてみましょう。あなたはなぜその友達が好きなのでしょう? 長所ばかりで短所なんて一つもないから? そんなはずはないですよね。きっとその子の短所もひっくるめて、その子がまるごと好きなんだと思いますよ。

 前述の「まるごと好きです」の著者である工藤さんも、友達づくりのコツはまず長所をみつけて相手を好きになることだと述べています。友達に限った話ではなく、自分自身との付き合いにも当てはまりませんか? 自分の短所を減らそうと意気込む前に、自分の良いところを伸ばしてみましょう。短所をも「私ってこういうところがあるけど意外といけるじゃん」と思えるようになったら素晴らしいなと私は思います。もちろん、もっと素敵な自分になろうと努力をすることは決して悪いことではありません。でも、自分を肯定的にとらえることができたら心にもゆとりができます。どんな境遇に出くわしても立ち向かっていける力になると思うのです。

 みなさんはこれから成長していくにつれ、どんどん広い世界に出て行きます。ときには気に入らない人に出くわすこともあるでしょう。嫌な思いをすることもあるでしょう。そんなときに「まるごと好きになる」という生きるヒントを思い出してもらえたら嬉しいです。
           <<え2004/230jみ>>


■■考えるために「書く」(うさぎ/きら先生)
 国語と作文の先達である大村はま先生の言葉につぎのようなものがあります。

 「書く」ということは、ふしぎな力を持っています。書いていますと、「書く」ということが、ふしぎに、心を一点に集めます。また一つの考えが、文字になって目に見えるものになりますと、その考えのいのちがはたらきだして、また次の考えが引き出されてきます。
               <<え6261み>>
 みなさんも、同じような体験をしたことはないでしょうか。自分の心のなかを目に見えるようにするために書くというのです。私も何か文章をつくるときには、とりあえず思いつくことを文に書き起こして、ながめまわしていく方法をとっています。
 夏休みには課題で感想文や作文が出されている人がたくさんいました。みんな「どのように書けばいいのかヒントをください」と質問します。いきなり構想や組み立ての相談をされるのです。でも、同じテーマでも文章はひとそれぞれ違うものになるはずです。一般論ではお返事が出来ず、ちょっと困ってしまいました。
 まずは自分の心のなかにあるものを言葉にしてながめてみましょう。わかっていることも、わからなくてこまっていることも書くのです。いいなあと思うことも、反対したいことも、まるで友達とにぎやかにおしゃべりしている時のような勢いで書いてみるのです。まとまりなんて考えなくていいのです。
 そうしてその中で、わたしがいちばん言いたい事伝えたい事はどれなんだろうと選んでみればよいのです。大きな疑問があることがわかったら、本を読んでこたえをさがすのです。ここまで出来ていれば、あとは大きな組み立てが決るのを待つばかりです。消しゴムはつかわないで、それらの材料を削ったりくっつけたりしていくのがいいと思います。そのために、便利なのがパソコンです。手書きで作業する時、消して書き直すというのは最もめんどうで書く気力を失わせます。パソコンでのコピー、ペーストは正確で手軽に考えを組み立てていってくれます。

 じつは今この文章もその方法で出来上がりつつあります。考えがまとまらない時や、うまい文章が出てこない時、組み立てが見えない時は、大胆につぎはぎのまま、つじつまのあわないままで置いておきます。次の日、それを見ると、まるで先生になったような気分ですらすらといい文章に直していくことができるはずです。自分で自分の文章を添削していくわけです。

 考えてから書くのが基本ではありますが、書いて考えること、考えるために書くこともぜひ試してみてください。自分のすてきな発想に出会えて、新鮮な驚きが体験できますよ。
                             <<え85み>>
                                きら     


■■「時期」と「時機」の使い分け(こう/ふつ先生)
 「時」は「とき」のことです。では組み合わされた「機」「期」はどうでしょう。
 「機」は訓読みが「はた」です。つまり、布を織る仕掛けであり、「織機」というのが本来の用い方です。それが広く「複雑な仕掛け」という意味になり、機械の名称に使われるようになりました(工作機、印刷機)。それが転じて、「動き出す力を複雑なかみ合わせに与える」ということから「きざし、きっかけ」などの意味になり、「好機、転機、危機、機会」などの「機」に使われるようになりました。「時機」の「機」もこの意味で、「特別な物事を行うのに特によいきっかけとなるトキ」という意味で用いられます。
(例) 時機を見る 時機に投じて 時機到来 時機をうしなう
これらを見ても、「時機」が「特によいトキ」を表していることがわかります。
 「期」は、「期間、期限、周期」などと用い、「年や月の一巡り」のことです。「期」が一区切りの月日や取り決めた月日の意味で「学期、任期、定期」などと用いられるのはこのためです。
(例) 時期が早い 入学の時期 時期尚早 
これらはいずれも単に「トキ」の意味で用いられています。(ただし、コロの意味のトキであって、前後に幅がある)
 このことから、「時期」のうち特別なものを「時機」とする用い方が一般的になっています。
  (参考資料「言葉に対する問答集11」)
 漢字や熟語にはそれぞれ意味があります。宿題だからと漢字練習をするのではなく、おもしろい意味や使い方を発見するつもりで覚えるといいですね。
<<えa/2610み>>


■■目黒のさんま(はるな/みき先生)
 先生が住んでいる駅前通りには、早くも「目黒さんま祭り」の看板や、のぼりがしつらえてあり、こんな風情からも、秋の訪れが、身近に感じられるようになりました。
年々、このイベントも大きくなり、岩手県宮古漁港直送の新鮮炭焼きさんまと、徳島県神山町直送のスダチが、参加者にふるまわれます。
 お殿様に仮想した人も現れ、臨時に設けられた寄席の席で、落語や、ショーが催されて、商店街は、空前の人出となります。最近は、テレビの取材も、活発になってきました。(#^.^#)

 このイベントのきっかけはもちろん「さんまは目黒にかぎる!」のオチでおなじみの古典落語『目黒のさんま』です。

ある大名(一説では、松平出羽守ともいわれています?)が中目黒に野駆けに出た昼どき、百姓家から焼くサンマのにおいをかいで欲しくなり百姓に分けて貰い(もらい)ました。「こんなうまい魚は初めてじゃ うまいうまい」と言って数匹食べました。
 その後、城で食べるがもうひとつよくない。ある日、親戚の大名に呼ばれて、「何かお好みの料理は?」と尋ねられ、即座に「サンマが・・・」と注文する。
 その大名の料理人は最上のサンマを仕入れたが余りに油が強いので、蒸して すっかり脂肪を抜いて出しました。例の殿様食べてみたがうまくない。
「これはなんじゃ」
「はい、ご注文のサンマで御座います」
「どこで取り寄せた」
「はい 日本橋魚河岸に御座います」
「どおりで・・・・それではいかん!サンマは目黒にかぎる」
・ ・・・・・というのが、お話の内容です。
 さんまは、脂が乗っていて、ジュウジュウ焼くからこそ、美味しいのですよね。落語のように、脂を抜いて調理したさんまなんて、『インクのない万年筆」と同じで、少しもおいしくありません。近年、このさんまや、いわし、さばなどに含まれる脂が、成人病予防や、健康維持に欠かせないものとして、注目されています。

毎年の事ながら、目黒駅前は、いっとき、さんまを焼く煙でもうもうとして、香ばしいにおいでいっぱい包まれます。
祭りの後は、サーッと、観光客は引いてしまい、宴が果てると、なにやら、物悲しいような気分です。
         <<えa/2948み>>
もうすぐ秋本番。
食いしん坊の先生は、さんまのけむりや、匂いから、秋の訪れを実感しました。^_^;
さて、みみずく学級の皆さんは、どんな身近な現象の中から、秋を見つけるのでしょうか?

   <<え1016み>>


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