言葉の森新聞2011年4月1週号 通算第1170号
文責 中根克明(森川林)

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■■4月1日(金)から新学期
 4月1日から新学期が始まります。教材の説明は、課題フォルダの表紙の裏側に書いてあります。
 また、勉強の仕方の説明は、「学習の手引」に載っています。
http://www.mori7.com/mori/gate.php


■■1月〜3月の賞状を同封
 3月1週の進級試験で、字数が規定以上、構成・題材・表現・主題の4項目のうち3項目が◎で1項目が○以上、の人には認定証を同封しています。字数賞・作文賞・皆勤賞は、金賞10クラウン、銀賞5クラウン、銅賞1クラウン、賞外0クラウンです。認定証は10クラウンです。
 金賞は点数の上位10%、銀賞は10〜20%、銅賞は20〜80%。それ以外は賞外です。
 それぞれの賞で点数がなかった人や、3月1週に在籍していなかった人には、賞状は入っていません。
 なお、3ヶ月の学期の途中から入会された方は、日数の関係で賞状の点数が低くなっております。次の学期からは、正しく表示されるようになりますのでご了承ください。


■■言葉の森3.4週臨時号(海外の生徒向け)がウェブで見られます

 先に、国内の生徒については、郵送で「言葉の森の勉強がうまく進まないとお困りの保護者の方へ 発想を変えれば楽しく勉強できる」という12ページの冊子をお送りしました。
 海外の生徒には、この冊子の郵送を行いませんでしたので、ウェブでごらんいただけるように、言葉の森新聞3.4週臨時号として掲載しました。
http://www.mori7.com/mori/20110304.1.html
 この冊子の内容に関するご質問などがございましたら、要望受付のサイトからお送りください。
http://www.mori7.com/mori/youbou.php


■■東日本大震災のお見舞い

 このたびの震災に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
 次の地域にお住まいの方の3月分の受講料はご返金させていただきます。(青森県八戸市、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県浦安市)
 なお、震災からの復興のために、言葉の森から日本赤十字社に50万円の寄付をさせていただきました。



■■【重要】東日本大震災の被災地への教材発送について

 新学期の教材は、3月16日ごろから発送していますが、東日本大震災のために地域によっては配達ができずに戻ってきているものがあります。
 28日から、一部の地域について再発送しますが、まだ再発送できない地域については、下記のようにお取り扱いさせていただきます。
教材はすべてウェブで見られます(ただしマックは縦書き表示ができません)
 「峰の地図(課題フォルダ)」( http://www.mori7.com/mine/ )のページに行き、●ユーザー名、●パスワード、●生徒コード(ユーザー名と同じ)の3ヶ所だけ入力し、●スタートが1になっていることを確かめたうえ、表示ボタンを押してください。お送りしている教材と同じもの(全50−100ページ)が表示されます。(パソコンのメモリが不足していると、表示に時間がかかる場合があります)
http://www.mori7.com/mine/index.php
印刷する場合は、余白のサイズと文字のサイズを次のように調整してください
(1)言葉の森のホームページ( http://www.mori7.com/ )を開き、ブラウザの「表示」→「文字のサイズ」を「最小」にします。
 そのあと、「峰の地図」も同様に、ブラウザの「表示」→「文字のサイズ」を「最小」にします。
 インターネットエクスプローラは、Shift_JISのページ(「峰の地図」など)の文字サイズだけを最小に設定してもそのサイズが印刷に反映されず、UTF-8のページ(「言葉の森の表紙」など)の文字サイズを最小にして初めてそのサイズが反映されるためです。
(2)ブラウザの「ファイル」→「ページ設定」で、次のように設定します
・A4縦で、「背景の色とイメージを印刷する」にチェック
・余白は、上下左右ともすべて7mm
・ヘッダーとフッターは、すべて「−空ー」
(3)ブラウザの「ファイル」→「印刷プレビュー」で、印刷画面を表示させます。
・全部印刷するとページ数が多くなるので、必要なページだけを印刷しておくとよいと思います。
※ウェブでの教材の見方がわかりにくいときは、ご遠慮なく事務局までお電話でお聞きください。
必要な週の課題と長文、暗唱長文はファクスで受け取ることもできます
 教材が届かないため、教材をファクスでごらんになりたいという場合は、お電話で事務局までご連絡ください(平日9:00ー20:00)。
 当面の授業に必要な週の課題と長文、暗唱長文などをファクスでお送りします。
青森県、秋田県、山形県は、3月28日から発送
 青森県、秋田県、山形県は、28日から発送しますが、到着までに普段よりも日数がかかることがあるそうです。
 もし授業の前日までに届かない場合は、ウェブでの表示や、ファクスでの受信などで対応してください。
岩手県、宮城県、福島県は、まだ発送できず
 岩手県、宮城県、福島県は、まだ発送できません。
 ウェブでの表示や、ファクスでの受信などで対応してください。
 再発送ができるようになりましたら、ホームページでお知らせします。
電話が普通の場合は携帯に
 電話が通じない場合は、携帯電話におかけします。(震災に関する場合、携帯料金などは発生しません)

被災地の一日も早い復興を心よりお祈りいたします。


■■日本が目指す新しい産業。その前提としての国語力

 製造業は、今急速に新興国に追い上げられています。中国の工業国家としての台頭に伴って、日本がこれまで掲げていた製造業による経済発展の方針は、大きく軌道修正を迫られています。
 しかし、日本の新産業は、観光業や小売業などのサービス産業ではありません。サービス業は、思いやりに富んだ日本人の持ち味を生かせる分野ですが、そこには創造性がありません。サービス業は、他人に尽くすだけの産業です。日本がいったんサービス産業中心の国家になれば、観光産業に依存する国が衰退していくように、そこから抜け出ることはできなくなります。
 製造業を高度化することによって、日本の製造業を守るという考えもありますが、高度化できる製造業の雇用創出力は限られています。1億2千万人の日本人の雇用を高度な製造業だけでまかなうことは難しいでしょう。
 もし日本が、海外との貿易を行わず、鎖国的な経済でやっていけるのであれば、国内でお金を回す仕組みを作るだけで経済は豊かになります。しかし、国際経済を否定することは現代ではできませんから、世界にも通用する価値を持ち、多くの国民を雇用できる新しい産業を創造していく必要があります。
 それが創造産業です。企業でも個人でもかまいませんが、何か新しいことを発案し、その創造によって日本社会に貢献することが期待される知識や技術を発掘し、その知識や技術を国が買い上げ、すべての日本人が自由に利用できるようにするのです。その買い上げの金額は、もちろん半端なものではありません。オリンピックで金メダルを取ると、それだけで一生安泰に暮らしていけるという国がありますが、それぐらいの金額を保証します。これが、日本の新しい産業です。その創造産業には、農業も、製造業も、サービス業も含まれます。大事なのは、物品やサービスの対価によって成り立つ産業ではなく、創造の対価によって成り立つ産業だということです。
 しかし、この産業が、日本の国民的産業として成り立つためには、大多数の日本人が創造的にならなければなりません。その創造性の根底にあるものは、日本語の理解力と表現力です。今の日本の社会で、学力の底辺にいる子供たちは、何よりも国語力が不足しています。それらの子供たちが自立して、社会全体の創造に参加できるためには、全教科を満遍なく教える教育をやめて、国語の読解力だけに焦点を絞った教育を行っていく必要があります。国語の読解力の低下した子供たちが、もしこのまま成長して社会人になれば、そのときに日本の国が支払うコストは膨大なものになります。そのコストを先取りするためにも、子供たちの国語読解教育に最重点を置いていく必要があります。その方法は、少人数制で本を読ませる教育です。
 ところが、読解力だけが必要な水準に達しても、そこから自動的に創造性が生まれるわけではありません。理解とは静的なものですから、そこから創造という動的なものにジャンプするためにはもうひとつのステップが必要です。それが、特定の知識や技術の習熟です。基礎教養として、多くのことを理解しているだけでは不十分で、それに加えて、その人でなければできないような特定分野の習熟が必要になるのです。知識や技術には、時間をかけることによって、その知識や技術が自分の手足のように自由に使えるようになるという面があります。この時間的な要素が、身体や感情や言語という不完全なものを持つ人間の優れた特質です。例えば、ある作業を繰り返していると指にタコができるということがあります。このタコが、身体の持つ時間性です。知識にも、似たような面があります。単に知識を知っているだけでは、百科事典をそろえていることと変わりません。タコができるぐらいに知っていることによって、そこから新しい創造の可能性が生まれてきます。
 これまでの教育は、記憶力の再現を中心とした教育でした。しかし、その教育は大きな曲がり角に来ています。先日、大学入試で、携帯電話とインターネットを利用したカンニングがありましたが、こういう形のカンニングは、今後防ぐことができなくなります。調べてわかることや、人に聞いてわかるようなことがいくらできても、それは価値あることではないというふうに、評価の根本を変えなければならないのです。では、何が価値あることかといえば、それは創造です。その創造のための教育としてこれから必要になるものが発表の教育です。つまり、文章でも、音楽でも、絵画でも、工作でも、又はさまざまな学問分野でも、自分の作ったものを表現することが教育の中心になります。知識や技術の土台は、その発表のための前提として必要なのであって、知識や技術自体に価値があるのではありません。
 全国民が、幅広く満遍なくさまざまな知識、技術を身につけるとともに、その人の個性に応じたある特定の分野に習熟し、その習熟をもとに個性的な創造を行うという発表の教育がこれから必要になってきます。そして、理解力の中心が国語的な読解力であったように、発表の教育の中心は国語的な作文力になるのです。


■■創造産業の広がり方(日本の新しい産業 その5)

 「日本の新しい産業」ということで、言葉の森のホームページに「その1」から「その8」までを載せています。
 ただし、「その1」から「その4」までは、新しい産業の前提としての、創造性の本質や日本の国防について書いているので、作文の勉強にはあまり関係ありません。そこで、言葉の森新聞では「その5」以降を掲載します。
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 国防の話を長く書いてしまいましたが、これは何をするについても大きな前提となるものだからです。私たちのささやかな日常生活における個人の夢の追求も、すべて国家が安定しているからできることです。国防は、あらゆることに優先して対処していかなければならないのです。
 しかし、国防だけでは不十分です。これまでの多くの論者の日本論を見ると、日本を守らなければならないという点では共通していますが、守ったあとに何を育てるのかという内容が不在でした。日本を守れば、日本はそれから自然によくなるだろうと考えているかのような日本論がほとんどだったのです。
 ここからいちばん重要なことになりますが、日本にとって大事なことのもうひとつは、新しい産業を育てることです。その新しい産業が、創造産業です。
 創造とは、人間の持つ身体と言語の不完全性によって成り立つものです。不完全なものがより完全なものをめざそうとする過程で新しい創造が生まれます。ですから、創造産業の中心になるものは、さまざまな身体文化、言語文化の創造です。
 しかし、この身体性を、技術や方法という機械的なものに向けてしまえば、それはこれまでの産業がそうであったように、人間の労働力をできるだけ省略して利益を上げるという方向に進みます。そのような産業では、人間は単なる消費者になり、生産者つまり創造者であり続けることはできません。身体性は、あくまでも個人の身体に依拠して発展させていく必要があります。それでこそ、創造産業は、新たな無数の雇用を創出することができるのです。
 ここから具体的な話に入ります。身体ということでまず考えられるのがスポーツです。今、世界には、サッカーやバスケットボールや野球などさまざまなスポーツがあります。オリンピックには、毎回新しい種目が追加されます。このスポーツを、新しい産業として個人が自分の身体性を生かしながら創造していくことが考えられます。
 例えば、鎌倉で毎年おこなわれている流鏑馬(やぶさめ)。流鏑馬に参加する人の中には、馬に乗って走りながら矢を射るということが人並み以上に得意だという人がいるはずです。その人が中心になり、流鏑馬の技を極限まで発展させて、流鏑馬を全国的なスポーツ種目に育て上げるのです。すると、まず流鏑馬教習所のような学校が各地にできます。そして、その流鏑馬の広がりに対応して馬の飼育と弓矢の改良が新たに始まります。また、流鏑馬を行うための流鏑馬場が、ちょうどゴルフ場が作られるように新たに作られ、そこに見物に来る人たちに向けた新しい商品や新しい店が作られます。家庭で流鏑馬の練習をしたいという人向けに、ゲームのソフトとハードも開発されるかもしれません。こういう一連の流れが、身体の持つ創造性で、これが創造産業の中身です。
 ひとつの創造産業は、新たな創造産業の機会を次々と生み出します。流鏑馬の例で言えば、馬の飼育に長けた人は、馬の飼育を極限まで追求し、さまざまに優れた馬を生み出すでしょう。白文鳥は、日本人が開発した文鳥で、英語ではジャパニーズ・ライス・バードと呼ばれています。江戸時代には、この文鳥のようにさまざまな鳥が改良され、鳴き方のきれいな鳥(ウグイスやウズラなど)、姿形の美しい鳥(尾の長いニワトリなど)、力の強い鳥(シャモなど)などが次々と作られました。同様に、馬の飼育がひとつの技として継承されていけば、色のきれいな馬、姿形のよい馬、声のよい馬、速い馬、優しい馬、ペットになるような小馬など、さまざまな種類の馬が開発されていくでしょう。すると、この馬の飼育自体がひとつの産業になっていくのです。
 このように考えると、創造産業の種は際限なく思いつきます。それらがすべて、個々人の興味、関心、趣味、特技に根ざして作られていくのですから、1億人いれば1億通りの創造産業が可能で、そのいずれもが働くことが楽しくてたまらない天職ともいえるものになります。
 そして、創造産業のレベルが次第に上がるにつれて、創造産業はそこに従事しようとする人に長期間の身体的訓練を要求するようになります。再び流鏑馬の例で言えば、小学校から流鏑馬教室に通う子供たちも育っていくということです。もちろん子供の可能性は無限ですから、流鏑馬意外にさまざまな習い事をするでしょう。それらの習い事の中から次第に自分に向いているものが長く続くようになり、それが自身の将来の創造産業を作り出すことにつながっていくのです。
 このように、創造産業は、その創造のレベルを支えるために、新たな向上産業というようなものを生み出します。創造と向上の中で、人間が幸福に生きることができ、それが同時に社会への貢献に結びつきます。こう考えると、ここにまさしく人間の生きる目的である、幸福、向上、創造、貢献が、ひとつの産業活動として成り立っているのを見ることができます。
 創造産業は、日本独自の輸出産業にもなります。ひとつは、創造産業に従事する人を育てるための道場のようなところに、海外から研修を希望する人が留学してくることです。日本という国全体が、ひとつの巨大なカルチャーセンターのようなものになり、世界中の向上心のある人がそこに学びに来るのです。もうひとつは、創造産業の道場を海外に作り上げることです。それは、日本発の創造文化を世界に広げる機会になるでしょう。(つづく)


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