劣等感だけでなく優越感から来る見下す気持ちにも拍車をかけ、それが更に劣等感を煽り、生徒達の精神に悪影響を及ぼしている事は紛れも無い事実だ。 （69字）

　

　現代において、経済的豊かさは誰しもが求めるものだ。しかし、経済的な豊かさを求め過ぎては、心が荒んでしまう。現代における心の豊かさが蔑ろにされている現状は非常に危険な状態である。
　経済的な豊かさを過度に求める様になった原因として、過度な資本主義が挙げられる。資本主義は、近代から現代にかけて多くの人の生活の基盤となっている。世界中の多くの国がこの資本主義に則ったシステムで成り立っている。この経済的な豊かさ欲しさに人は盲目的に働き、心の存在を忘れていると思われる。欧米の研究では、資本主義であるアメリカには鬱を発症する人が世界的に見ても非常に多いと分かっている。これは資本主義の中で働き尽くし心の豊かさがなくなってしまった人達が多いと言う事を示唆しているのではなかろうか。「モモ」の時間泥棒は、この問題を擬人化する事で分かりやすく、心の豊かさの危機を知らせている。
　心の豊かさが蔑ろにされる原因として、評価がつきまとう社会性が挙げられる。評価というのは資本主義社会の中で大きな役割を持つ。職場だけでなく、教育現場にも評価はつきものだ。教育現場における評価は、多くの生徒達に劣等感を与える。常に周囲と比較され、自分は底辺だと知らしめられる事で、自分の存在意義を疑う様になる。劣等感だけでなく優越感から来る見下す気持ちにも拍車をかけ、それが更に劣等感を煽り、生徒達の精神に悪影響を及ぼしている事は紛れも無い事実だ。評価に対する執着は、資本主義によってもたらされたものであり、それが希望ある若者の心に傷をつけている事実から目を逸らしてはならない。
　人間は心があって成り立っている。これ以上、心が荒む人を増加させない為にも、今一度心の重要性とそれと向き合う時間を作るべきだ。現代社会の経済的な豊かさを求めるが故に、多くの人が心の豊かさを蔑ろにされている現状は極めて問題である。