このように、いらないけどいる物というのは、心をなごませたり、場の雰囲気の一部に溶け込んだりして活躍したりする一方で、価値感の違いでいらないと感じる物もあるということがわかった。 （88字）

　

噴水は、飲めない水である。浴びることの出来ない水である。しかも、その水はただそこを循環しているだけであるから、何の役にも立たないものなのだ。そして、それがいい。噴水に、電気仕掛けの細工をしたり、照明で色をつけたりするのもよくない。見ているものを楽しませようとする工夫であろうが、あれも、噴水の真に噴水たるものを見えにくくさせる。噴水は、ただ水を噴き上げていればいいのである。

　この話を読んで私は、家で必要ないけど、置いてある物を探してみた。探そうと思えばいくらでもある。ぬいぐるみ、観葉植物、オブジェ、写真、水槽など、エトセトラ、エトセトラ…。数え上げればきりがない。私はその中で今回は、オブジェについて考えてみようと思う。
私のスペースだけでも数えられないほどのオブジェがある。主にカプセルトイやゲームやらスタンプラリーやらの景品だ。実際は全くもって必要ないが、見ているだけでいやされるので手放すことは難しい。
　他にもそういう物がないか探してみた。私が気になったのは、街路樹のイルミネーション（ライトアップ）だ。イルミネーションは街灯のように、周りを照らし出すわけでもないので、はっきり言うと、いらないと思う。むしろ街路樹で寝るような小鳥は、まるで寝床に超‼強力な蛍光灯を置かれたように、まぶしいだろう。チカチカ光るタイプもあるので、よけい寝られず鳥にとってはいい迷惑なのかもしれない。しかし、ロマンチストな人や、夜中にイチャイチャするカップルなどにとっての場の雰囲気には、とても大切な役割を果たしているのかもしれない。このように、いらないけどいる物というのは、心をなごませたり、場の雰囲気の一部に溶け込んだりして活躍したりする一方で、価値感の違いでいらないと感じる物もあるということがわかった。
　もし身の回りにオブジェなどの飾りなどがなくて、必要な物しかなかったとしたら確かにやることに集中できて、すぐに片づけられるだろう。しかし、それだけだ。全てやることが終わった後、ヒマができてボーっとする。そしてだんだんと何かしたくなってストレスがたまってる。そして、仕事ができなくなってしまうかもしれない。このように、オブジェなどの物は心にゆとりをくれる大切な物なのかもしれない。
　池内了さんの「考えてみれば不思議なこと」という本によれば、文化というのは、人間のヒマから生まれているそうだ。ボンヤリしたり、想像したりする時間こそ、人間が人間らしく生きる最も大切な時間なのだという。無用の用という言葉があるように、人間にとって、ヒマでできる噴水やらオブジェなどの、実用的ではないようなものは心を豊かにする文化である。その文化によって現代の人間は心にゆとりをもった生活ができているのではないかと思う。