【7】ありま山ゐなの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな
大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ずあまの橋立(六〇)
【8】いにしへの奈良の都の八重桜今日九重ににほひぬるかな
夜をこめてとりのそらねははかるともよに逢坂の関は許さじ
今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな
【9】朝ぼらけ宇治の川霧絶え絶えにあらはれわたる瀬々の網代木
恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋にくちなむ名こそ惜しけれ
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし