【4】学は立志より要なるは莫し。而して立志も亦之れを強うるに非らず。只だ本心の好む所に従うのみ。
【5】立志の功は、恥を知るを以て要と為す。
性分の本然を尽くし、職分の当然を努む。此くの如きのみ。
【6】君子とは有徳の称なり。其の徳有れば、則ち其の位有り。徳の高下を視て、位の崇卑を為す。∵【7】叔世に及んで其の徳無くして、其の位に居る者有れば、則ち君子も亦遂に専ら在位に就いて之を称する者有り。今の君子、盍ぞ虚名を冒すの恥たるを知らざる。
【8】人は須らく自ら省察すべし。「天何の故にか我が身を生出し、我れをして果して何の用にか供せしむる。我れ既に天の物なれば、必ず天の役あり。天の役共せずんば、天の咎必ず至らむ」。省察して此に到れば則ち我が身の苟くも生く可からざるを知らむ。
【9】権は能く物を軽重すれども、而も自ら其の軽重を定むること能わず。度は能く物を長短すれども、而も自ら其の長短を度ること能わず。心は則ち能く物を是非して、而も又自ら其の是非を知る。是れ至霊たる所以なるか。∵
(言志四録 佐藤一斎)