【4】 兵法の道、二天一流と号し数年鍛錬の事、初而書物に顕さんと思ひ、時に寛永二十年十月上旬の比、九州肥後の地岩戸山に上り天を拝し観音を礼し仏前にむかひ、生国播磨の武士新免武蔵守藤原の玄信、年つもって六十。
【5】 我若年のむかしより兵法の道に心をかけ、十三歳にして初而勝負をす。其のあひて、新当流有馬喜兵衛といふ兵法者に打勝ち、十六歳にして但馬国秋山といふ強力の兵法者に打勝つ。【6】廿一歳にして都へ上り、天下の兵法者に会ひ数度の勝負をけつすといへども勝利を得ざるといふ事なし。其後国々所々に至り、諸流の兵法者に行合ひ六十余度迄勝負すといへども、一度も其利をうしなはず。其程歳十三より廿八、九までの事也。