【7】股引の破れをつづり笠の緒つけかへて、三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかゝりて、住める方は人に譲り、杉風が別墅に移るに、
草の戸も住みかはる代ぞ雛の家
表八句を庵の柱にかけおく。【8】弥生も末の七日、あけぼのの空朧々として、月は有明にて光をさまれるものから、不二の峯幽にみえて、上野谷中の花の梢又いつかはと心細し。睦まじきかぎりは宵よりつどひて、舟にのりて送る。【9】千住といふ所にて舟をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻の巷に離別の涙をそゝぐ。
行く春や鳥啼き魚の目は泪
これを矢立の初めとして、行く道なほ進まず。人々は途中に立ち並びて、後影の見ゆるまではと見送るなるべし。