【1】 武士は萬事に心を付け、少しにてもおくれになる事を嫌ふべきなり。就中物言ひに不吟味なれば、「我は億秒なり、その時は迯げ申すべし、おそろしき、痛い。」などといふことあり。ざれにも、たはぶれにも、寢言にも、たは言にも、いふまじき詞なり。心ある者の聞いては、心の奥おしはかるものなり。兼ねて吟味して置くべき事なり。
【2】 一分の武篇を掟と我が心に極め置き、疑ひなき様に覺悟すれば、自然に時一番に選び出さるゝ事必定也。これは折節の仕方物言にて顯るゝもの也。別けて一言が大事なり。我が心を披露するものにてはなし。兼てにて人が知るものなり。
【3】 奉公の心懸けをする時分、内にても外にても膝を崩したる事なし。物をいはず。言はで叶はざる事は、十言も一言で濟ます様にと心がけしなり。山崎藏人などかくの如きなり。