【7】 千手観音とて手が千御入り候はゝ゛、弓を取る手に心が止らば、九百九十九の手は皆用に立ち申す間敷。一所に心を止めぬにより、手が皆用に立つなり。
【8】 観音とて身一つに千の手が何しに有可候。不動智が開け候へば、身に手が千有りても、皆用に立つと云ふ事を、人に示さんが為めに、作りたる容にて候。
仮令一本の木に向ふて、其内の赤き葉一つを見て居れば、残りの葉は見えぬなり。【9】葉ひとつに目をかけずして、一本の木に何心もなく打ち向ひ候へば、数多の葉残らず目に見え候、葉一つに心をとられ候はゝ゛、残りの葉は見えず。一つに心を止めねば、百千の葉みな見え申し候。
是を得心したる人は、即ち千手千眼の観音にて候。
(不動智神妙録 沢庵)