振替(ふりかえ)を受けて取り組んでくれました。2000字を超える(こえる)大作ですね! 大変読み応えがありました。

【総評】
 この作文は、臓器移植という医療(いりょう)の進歩をきっかけに、「技術の発展と人間の責任」について深く考察した非常に質の高い意見文です。文章全体を通して論理の展開が明確で、具体例も豊富に取り入れられており、読み手にしっかりと問題提起をしてくれる構成になっています。「百円ショップ」と「ワクチン」や「産業革命」といった現代から歴史までを取り上げながら、社会的・倫理(りんり)的な視点のバランスもとれており、非常に高度な内容を自分の言葉でしっかりと語れています。
 特に、自作名言的な逆説的表現や、ことばの選び方に力強さがあり、高校生としての思考の深まりと表現力が感じられました。

【第一段落】(導入・当為(とうい)の主題)
 「記憶(きおく)する心臓」の読書体験をもとに、「技術の進歩を再考すべきだ」という主題を明確に立てられており、とても良い導入です。「神の領域」「パンドラの箱」といった比喩(ひゆ)も印象的で、主張の哲学(てつがく)的な深さを強めています。読書の感想から意見への展開も自然でスムーズでした。

【第二段落】(方法一:メリットの裏にある問題点に気づくこと)
 ここでは、百円ショップやワクチンの話を通して、「手に入りやすさ=安全ではない」という例を説得力をもって説明できていました。特に「百円の安さに囚われる(とらわれる)」といった表現は、読者にとっても身近な例で非常に効果的です。コロナワクチンの記述も、「リスクに目を向ける大切さ」を考えさせる良い論点提示となっていました。具体例と主張のバランスが見事です。

【第三段落】(方法二:人間の欲を制御(せいぎょ)すること)
 産業革命の歴史的実例を用いた点は、非常に良い選択(せんたく)でした。知識としての理解だけでなく、「資本家の欲が社会に及ぼし(およぼし)影響(えいきょう)」と結びつけることで、論点が深まりました。また、「極一部の人の欲に振り回さ(ふりまわさ)れる社会」という表現も、自作名言的な含蓄(がんちく)のある一文になっており、読み手に強い印象を与え(あたえ)ます。人間の「欲」に対して一方的に否定せず、向上心としての側面にもふれている点にバランスの良さが感じられました。

【第四段落】(反対意見への理解と再主張)
 「技術の進歩に毎度再考していては進歩が止まる」という反対意見にもふれつつ、「技術の進歩というのは、人間の欲を叶えるためにあるのではなく(だれ)もが平等にいきるための一助となるもの」という自作名言的な結びが、全体の締めくくり(しめくくり)としてとても効果的です。平等のための技術、という倫理(りんり)的視点にも触れ(ふれ)られており、内容としての深みと社会性がしっかりと感じられます。
 ことわざは加工して使うと効果的です。「石橋をたたいても簡単には渡ら(わたら)ないという心構えで……」

【この作文で特に優れていた点】

主題の立て方が深く、現代社会への問題提起として成立していた

身近な例(百円ショップ)から歴史実例(産業革命)まで幅広い(はばひろい)具体例が使われていた

「極一部の人の欲に振り回さ(ふりまわさ)れる社会」など自作名言的な表現が力強かった

反対意見への理解と再主張ができており、説得力ある結びができていた

【考えを深めるための質問】
 技術の進歩が人の幸せをつくるためにあるとするなら、どんなときに「再考」が必要で、どんなときには「思い切った前進」が必要だと思いますか? そのちがいを自分の言葉で考えてみましょう。

【時間】120分

<<え2015/597pみ>>
 


■思考語彙 30種 31個 (種類率97%) 103点
n確か,、第,。しかし,。もちろん,あるから,あるため,いきるため,いくべき,いると,いるらしい,かなえるため,からこそ,が可能,きくと,しよう,すると,せざる,そのため,たから,だろう,と思う,に思える,よると,を考える,マットにより,叶えるため,向上心により,得よう,機械によって,防ぐため,

■知識語彙 74種 106個 (種類率70%) 89点
一助,一部,万能,世紀,主義,予期,事態,人数,人間,他社,便利,具体,内容,再考,利潤,利益,制御,制限,労働,危険,反面,同士,向上心,問題,大気,大量,奮闘,完成,工場,平等,後遺症,必要,我儘,技術,拡大,排水,方法,末期,本当,検索,機会,機械,機関,毎度,水質,汚染,汚濁,沢山,激化,物事,環境,生活,生産,産業,病気,石橋,社会,競争,競走,結果,自由,蒸気,衣服,貧富,販売,賃金,資本,通常,連想,進歩,長時間,開発,革命,騒音,

■表現語彙 142種 220個 (種類率65%) 92点
n確か,あるため,いきるため,おかげ,お腹,かなえるため,がち,が可能,こと,これ,そのため,それ,たち,ところ,どうし,どこ,ほか,もの,よう,イギリス,イメージ,ショップ,ジェームズ,タブー,トーマス,ヒット,マット,メリット,ワクチン,一,一助,一部,万能,世紀,主義,九,予期,事態,二,五,人,人数,人間,他社,何,例,便利,個々,八,具体,内容,円,再考,利潤,利益,制御,制限,労働,十,危険,反面,叶えるため,同士,向上心,問題,大気,大量,奮闘,子ども,完成,家,工場,差,平等,年,後遺症,心構え,必要,性,我儘,手,手織り,技術,拡大,排水,方法,日,末期,本当,検索,様々,機会,機械,機関,欲,毎度,気持ち,水質,汚染,汚濁,沢山,激化,為,物事,環境,生活,生産,産業,病気,百,的,目,石橋,社会,私,種,競争,競走,結果,考え,者,自由,蒸気,衣服,誰,負,貧富,販売,買い物,賃金,資本,足らず,通常,連想,進歩,達,長時間,開発,間,防ぐため,革命,騒音,

■経験語彙 50種 63個 (種類率79%) 94点
ああなる,いきる,うまれる,おきる,おくれる,おこなう,おこる,おもえる,かかる,かなえる,きく,くれる,さておく,しまう,すすむ,たたく,つかう,つくる,と思う,に思える,むける,もたらす,よる,れる,を考える,与える,信じる,働かす,叶える,向ける,強いる,得る,打つ,持つ,振り回す,残る,渡る,潜む,生まれる,生み出す,目指す,示す,空く,織る,芽生える,走れる,避ける,防ぐ,限る,食べる,

■総合点 99点

■均衡点 5点
 

再考する
   高1 あおそふ(aosohu)  2025年4月2日

 「記憶する心臓」という本を読んだとき、臓器移植という華々しい医学の進歩に感銘を受ける気持ちから臓器移植に対する懸念の気持ちが芽生えた。この本の著者であるクレア・シヴィア自身、脳死心臓移植をしたひとで移植の前後に表れた変化についてつづってある。彼女に起こった前後の変化は主に、移植により性格が変わったり、ドナー自身の思い出が夢に出てきたりしたことだ。この話を信じるか信じないかは別として問題なのは私が、なぜ懸念を抱いたのかということだ。それは以下のとおりである。脳死心臓移植には必ず人の死を必要とするからである。人間は、技術の進歩によって人の生死という神の領域に関与してしまったのだ。または、パンドラの箱を開けてしまったようにも捉えることが出来る。我々は、技術の進歩に対して再考すべきだ。

そのための第一の方法として、メリットに隠れてしまっている問題点に目をつけることだ。

誰もが一度は行ったことがあるだろう百円ショップで買い物したときに失敗をしたことはないだろうか。そう、100円という安さに囚われてしまい衝動買いしてしまったものの、機能性が欠けていたりしてすぐに壊れてしまうことだ。最近は三百円ショップや390円ショップとかいてサンキューショップとよぶお店もふえ、百円ショップよりも機能がよく耐久性があったりする。しかし、安さには理由がありこれもまたすぐ壊れてしまいやすい。大きな社会現象となった新型コロナの流行においても百円ショップと同じようなことが起こったと私自身は受け止めている。未知のウイルスが流行するということは、それに対抗する薬が存在しないため新しく薬をつくる必要がでてくる。すぐにワクチンの開発に各国の医療センターがとりかかったもののそんな簡単に出来るわけもなく完成までに長い時間を要した。ついに、アメリカの大学教授がmRNAワクチンの開発に成功した。誰もが、首を長くして待っていたワクチンをいち早く接種しようと病院にいった。当時を振り返ってみると日本人の大多数の人がmRNAワクチンの危険性に目を向けていなかったように思える。通常ではワクチン開発に十年から十五年もかかるところこのワクチンは一年足らずで完成している。その為、mRNAのワクチンによる後遺症が残るということが実際におきているらしい。本当なら具体的に人数を示したいものの、タブーな内容であるため検索がヒットしなかった。それはさておき、ワクチンはある種の病気にかかるのを防ぐためのものであり、とても万能である。その反面、危険性が潜んでいる。私は、決して百円ショップで買い物をするな、ワクチンを打つなといいたいのではない。メリットに潜んでいる問題手に目をむけて物事を考えて欲しいのだ。

また、第二の方法は人間の欲を制御することだ。

ああなったらいいな、こうなったらいいのになぁ、と思わなかった日が一日もないという人に私はであったことがない。人間というのは欲があるからこそ技術が進歩して便利な生活がおくれるようになったとおもえる。欲ときくと、どこか我儘というような負のイメージが連想してしまいがちだが必ずそうとは限らない。お腹が空いたから何か食べたいという気持ちが芽生えるのも欲である、もっと速く走れるようになりたいというのも欲である。欲というのは、向上心をもたらしてくれると思っている。もちろん、欲からうまれた向上心により、予期せぬ事態がおこることもある。その一例が十八世紀から十九世紀末期の間にイギリスでおきた産業革命だ。トーマス・ニューコメンやジェームズ・マットにより蒸気をつかった様々な機会がつくられた。この蒸気機関のおかげで、これまで手織りで織っていた衣服を、機械によってつくられ大量生産が可能になった。また、資本主義という考えも生まれ、資本家たちが労働者に賃金を与え、利益拡大を目指して他社どうしが競走し自由に生産、販売をおこなった。この資本家同士の競争が激化すると、より安く、大量生産をしようという考えが芽生え、労働者に低賃金、長時間労働を強いた。また、子ども達も労働者として働かされた。資本主義社会は、資本家と労働者との貧富の差を生み出したばかりではなく、環境の問題もおこった。具体的によると、工場による騒音や、排水による水質汚濁、そのほかにも大気汚染などだ。資本家たちが、沢山の利潤を得ようという欲をかなえるために奮闘したものの、結果として様々な問題がおこってしまった。誰しもが欲は持っているものの、極一部の人の欲に振り回されてしまう社会というのは避けなくてはならない。そのためにも、個々の人間がある程度の欲を制限する必要がある。

確かに、技術の進歩に毎度、再考していると人間の進歩は一向にすすまないだろう。しかし、技術の進歩というのは、人間の欲を叶えるためにあるのではなく誰もが平等にいきるための一助となるものだ。そう信じて、石橋をたたいて渡るような心構えで、あらゆる物事を再考していくべきだ。