文明と素朴(そぼく)な生活の対比を深く考えられていて、とても印象的でした。構成もしっかりしていて読み応えのある文章です。

<<え2015/578pみ>>

●総評
 「物質文明と素朴(そぼく)な生活」をテーマに、人間が本当に必要とするものは何かを問いかける内容がよく伝わってきました。中学二年生としては高い抽象(ちゅうしょう)的思考が求められるテーマに果敢(かかん)に取り組み、文学的な引用や寓話、名言を使って深みのある主張を展開できています。特に最後のまとめでは、考えの総合化が明確に示されており、レベルの高い意見文です。

●段落ごとの講評
第1段落:長文の要約と主題
 良寛(りょうかん)兼好(けんこう)法師の生き方を例に、人が必要とするものは実は少ないことを示し、物質文明の無駄(むだ)を主題として導入できています。引用も効果的で、読者の関心を引く構成です。

第2段落:意見A・便利な暮らしの価値
 都会的な利便性の価値を情報伝達の速度や実例を交えて説得的に描い(えがい)ています。具体例(SNSや交通情報など)もわかりやすく、読者が納得しやすい内容になっています。

第3段落:意見B・素朴(そぼく)な生活の良さ
 寓話「虚飾(きょしょく)彩ら(いろどら)れたカラス」を使い、余計な装飾(そうしょく)がかえって本質を損なうことを印象深く伝えています。対比構造が鮮やか(あざやか)です。

第4段落:総合化と主張のまとめ
 便利な生活も素朴(そぼく)な暮らしも否定せず、個人にとっての幸福が何かを問い直す結びがすばらしいです。名言の引用も効果的で、文章全体をしめくくるにふさわしい深みがあります。

●特に優れていた点(指導項目(こうもく)即し(そくし)て)
意見の総合化ができている

名言や寓話の引用による深い考察

比喩(ひゆ)や対比表現の巧み(たくみ)

問題提起とまとめの一貫(いっかん)

●考えを深めるための質問
 あなた自身は、便利さと素朴(そぼく)さ、どちらの暮らしにより心の充実(じゅうじつ)を感じますか?
 


■思考語彙 30種 38個 (種類率79%) 103点
 しかし, 確か,。しかし,。だからこそ,。例えば,あると,それによって,それらによって,たちにとって,た場合,だろう,とれば,と思う,なければ,なるから,に思える,を考える,乞食により,使えば,化によって,変わらざる,居るべき,我々にとって,文明によって,生きるため,発明によって,着けざる,読めば,起これば,SNSにより,

■知識語彙 69種 96個 (種類率72%) 85点
一部,不便,不安,不幸,乞食,交代,人物,人生,人間,仲間,何事,余計,作家,便利,兼好,効率,単純,告知,嘲笑,場所,変更,大事,大阪,孔雀,寓話,幸福,必要,快適,情報,提供,文明,時代,最新,最短,本来,東京,極限,機械,江戸,法師,活動,渋滞,災害,現在,環境,生活,生物,発明,相手,範囲,素朴,経験,羽根,自分,自然,良寛,草庵,虚飾,途中,速報,道路,都会,開催,電球,飛脚,高速,魅了,魅力,黒衣,

■表現語彙 128種 200個 (種類率64%) 86点
 確か,うえ,こと,さ,さっき,それ,それら,たち,た場合,とき,ところ,どちら,ほか,まま,もと,もの,よう,ら,イギリス,イソップ,イベント,ウィリアム,カラス,シェークスピア,シンプル,ストーリー,チラシ,テレビ,メッセージ,一つ,一部,不便,不安,不幸,世の中,中,乞食,交代,人,人々,人物,人生,人間,仲間,何事,余計,作家,便利,元,先,入ろう,兼好,別,劇,効率,化,単純,告知,嘲笑,場所,変更,夜,大事,大阪,孔雀,寓話,幸せ,幸福,強,彼,心,必要,快適,急,情報,我々,提供,文明,日,時代,暮らし,最新,最短,本来,東京,極限,機械,江戸,法師,活動,渋滞,災害,現在,環境,生きるため,生活,生物,発明,相手,範囲,素朴,経験,羽,羽根,考え方,自ら,自分,自然,良寛,草庵,虚飾,衣,詩,話,身,途中,速報,道路,都会,開催,間,電球,飛脚,食,高速,魅了,魅力,黒衣,

■経験語彙 47種 66個 (種類率71%) 89点
うかがえる,がる,しる,つける,できる,とる,と思う,に思える,むしる,られる,れる,を考える,住む,使う,出かける,叫ぶ,営む,変わる,失う,居る,届く,彩る,感じる,慣れ親しむ,抜け出す,持たす,望む,求める,流れる,満ち足りる,生きる,着ける,瞬く,知らす,知る,結ぶ,置く,見下す,読む,起こる,追い返す,送る,進む,適す,配れる,限る,集まる,

■総合点 93点

■均衡点 3点
 

倖せな地
   中2 あおらえ(aorae)  2025年5月2日

  われわれの、物資文明社会の中にいる者達の生活は無駄なものに占められている。人間は生きていくうえでわずかなもので事足りるということを、地球上の、まだ昔ながらの素朴な生活を営んでいるところへ旅をすればよくわかる。われわれが生活の必需品のごとく思いなしている様々な文明の利器の一部は生きるためにほとんど必要としない。良寛や兼好法師らといった人物は素朴な生活を送った。良寛をとれば、草庵に住み、食は乞食により、衣は来ている黒衣一つという極限の単純さに生きた。しかし、彼の詩を読めば、心がいかにゆったりと満ち足りていたかがうかがえる。人が生きるために必要なものを考えるとき、人は自分たちが文明によって余計なものをいかに持たされているかを知らされる。

 だが、都会に慣れ親しんだ我々にとって、何事にも効率化を叫ぶ人たちにとって、便利で快適な生活ほど望んでいるものはないように思える。電球の発明によって、夜も変わらず充分明るい中で活動できるようになった。江戸時代に飛脚たちは途中で交代しながら東京・大阪間を最短2日強ほどで結んだという。だが、現在提供されているIMSを使えば、瞬く間に相手にメッセージが届く。人は情報を求めたがる。情報がないと不安になるからだ。そしてそれは現在、SNSやテレビなどで最新の情報を知ることができる。例えば、テレビでは自然災害が起こればすぐに速報が流れるうえ、高速道路で渋滞が起これば渋滞情報として流れてくる。それによって出かけ先を変更した経験も多々ある。また、SNSにより急なイベントの開催が告知された場合、SNSがなければ集まる人はそう多くないだろう。チラシを配れる範囲は限られている。

 しかし、シンプルな暮らしを営んでいる人たちもいる。それは幸せであると思っている人も多いだろう。機械化が進んでいない、そういった暮らしも良い。機械化によって失われるものもある。イソップ寓話には、「虚飾で彩られたカラス」という話がある。この話は、コクマルガラスが自らの黒い羽根が醜いと思い、孔雀の羽をつけてほかのカラスを嘲笑する。さらに孔雀の仲間に入ろうとするが、孔雀たちはコクマルガラスの羽をむしり、追い返す。さっきまで見下されていたもとの仲間も彼を相手にすることはなかった、というストーリーだ。余計なものは身に着けず、元のままが良いということである。人の暮らしも、余計なものが多い。それらによって失われたものもあるのかもしらない。

 確かに、便利で快適な生活は良いし、シンプルな暮らしにもまた別の良さがある。だからこそ、人々は快適だと思っている暮らしを抜け出して、キャンプというわざわざ不便なところへ身を置きに行くのだろう。その素朴でシンプルな、生物の本来居るべき場所である自然に魅了されるのだろう。「世の中には幸福も不幸もない。ただ、考え方でどうにでもなるのだ」とイギリスの劇作家、ウィリアム・シェークスピアは言った。便利で快適な生活も、シンプルな、人間本来の暮らしにもどちらにも魅力はある。だからこそ、最も大事なことは、自分が倖せであると、自分の人生は倖せだったと感じられるその自らに適した環境に身を置くことに限る。